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黒猫と金貸し 01

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2019年5月の記事一覧

case01-02: 出会

case01-02: 出会

2日後の金曜日、JR大井町駅での待ち合わせとなった。

大井町というところは不思議な街だ。
東側には昔ながらの昭和のにおいのする繁華街が広がり、西側には洒落た店が点々と存在している。過去と現実が交差しているような街である。

昭和も終わる頃に生まれているのにも関わらず、こういった古めかしい景色に懐かしさや居心地の良さを感じるのは、映画やドラマのせいなのだろうか?

そんなことを考えながら、小

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case01-03: 彷徨

case01-03: 彷徨

大井町にデニーズがあるだなんて…
やるじゃないか、大井町。

「では、そのデニーズに行きましょう」

自然に先導を促す。平静は装えたはずだ。俺は甘いものには目がなく、デニーズとロイヤルホストはチェーンの中ではパフェに関しては群を抜いていると考えている。さっさと終わらせて今季の季節のパフェを食べたいのだ。

「トーアさんはおいくつなんですか?」
「ずっとこうやってお金貸すお仕事なんですか

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case01-04: 懸念

case01-04: 懸念

「わーひろーい!」

後ろの素っ頓狂な声を無視して薄暗いカラオケボックスのドアを開ける。手早く光量をMAXにし、流行りの曲のBGMをOFFにする。

恐らく6人程度で使う想定なのだろう。少し古めかしい室内は2人で使うには多少寂しさを感じるほどゆったりとした広さをもっていた。対面形式で座るように目線で促した後、中央のテーブルにノートパソコンを置き電源をつける。

明るい静かなカラオケボックスに、ち

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case01-05: 過去

case01-05: 過去

最初から感じる妙な明るさ、そして具体的に貸付を始めてからも手慣れた質疑の様子。違和感を感じるには充分だった。

「あんた、こういう貸し借りの経験があんの?」
「あれ?言ってませんでした?実はあるんです」

聞いた覚えはない。まぁいい。

「なんでそいつに借りないの」
こういった得体のしれない相手に借りるとなった場合、ハードルは一番最初なのだ。見ず知らずの人間に会うということだけでストレスは大

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