小学校の国語科の授業 古文編④ 随筆としての『枕草子』

『竹取物語』とともに小学校の古文の指導で必須となる教材は『枕草子』です。『枕草子』は物語ではありませんので『竹取物語』のような指導はできません。では、どのように指導していったらよいのでしょうか。

『枕草子』は随筆です。私は以前『国語科重要用語辞典』(2007 東京法令出版)で随筆を内容により三分類(①記録・考察的 ②思索・哲学・小論的 ③文学・抒情的)し、『枕草子』のような②については以下のように定義しました。

 文学的な表現を用いながら論理的構造に則って述べられたもの

このマガジンでは『枕草子』を「思索・哲学・小論的」な内容を持つ随筆であり、それは論理的構造(日常生活における論証の構造)を用いて表現されたものであるとして考えていきます。特にこの内容の随筆は身近な日常生活を表現の対象としますので、「はじめ・なか・おわり(まとめ・むすび)」の構成を用いた表現が多く用いられていることになります。
*マガジン「論理的思考・表現の在り方(構造編)」を参照してください

『枕草子』を上記のように考えれば、当然その読みには今までの説明文の指導が活用できることになります。小学校5年生の教科書(光村5年)には『枕草子』の冒頭「春はあけぼの」が掲載されています。それは以下のように分析できることになります。

 春  「はじめ」春の夜明けごろの風情
    「なか」①だんだん白みがかる山際
    「なか」②そこに雲がたなびいているさま
    「まとめ」春は夜明けごろがよい
 夏  「はじめ」夏の夜の風情
    「なか」①月夜に蛍が飛び交う
    「なか」②雨の夜のさま
    「まとめ」夏は夜がよい
 秋  「はじめ」秋の夕暮れの風情
    「なか」①夕日に染まる山に帰るカラス
    「なか」②日が沈んでからの風の音や虫のささやき
    「まとめ」秋は夕暮れ時がよい
 冬  「はじめ」冬の早朝の風情
    「なか」①雪や霜の真っ白なさま
    「なか」②寒さに火を熾すさま
    「まとめ」冬は早朝がよい

このように四季ごとの「はじめ・なか・まとめ」の構成が連なった表現が「春はあけぼの」ということになります。児童たちは、ここまでは今までの説明文の学びを生かして容易にとらえることができることでしょう。

ここから先が古文の指導の目的である「親しむ」ためのものとなります。


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