JEEP/長渕剛 オマージュショート-1
「はぁ…」
深くついたため息が、狭い部屋にはね返されて
すぐに自分に返ってきた。
ふと時計を見ると3時を過ぎている。
出来そうで出来ない、
あと一歩で振り出しに戻る、
そんなドミノと双六を足したような事を、
何日もひたすら繰り返している。
数える程もないハンガーから赤いジャンパーを掴むと、
1つしか選択肢のないブーツに足が向かった。
行き先はいつも決めない。
ただ、気づけばいつも同じ角を曲がっている。
誰もいない1人の部屋から逃げ出し、
また人や街を遠ざけてただただ車を走らせる。
ボードを抱えた眠そうな若者と力強く昇る太陽が、
時間を知らせてくれた。
いつもの様に吹く風に促されながら、
自分の歌を流す。数時間前まで自分を苦しめていたモノに耳を傾ける。
悪くないのかもしれない。
そう思わせてくれるのが自然の力なのだろうか。
分からないまま、またただ景色が流れる。
「ふー」
思わず吐き出した息は、
どこまでも続く青に流されるように消えていった。
JEEP/1990
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