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スピノザとは誰か? センター試験で学ぶ教養

國分功一郎『スピノザ――読む人の肖像』(岩波新書)が話題になっています。

いきなり挑戦しても挫折が目に見えています。まずは高等学校の範囲でスピノザについてどう教わるのかを確認して,基礎知識を得ておこうというのが今回の記事の目的です。

以下,スピノザに言及している部分を,大学入試センター試験「倫理」の過去問から引用します。

スピノザは,自然の諸事物の中に万物を貫く必然的な法則を見いだす理性的認識が,神と自然の同一性を「永遠の相のもとに」把握することを可能にすると考えた。(2020年・本試験)
世界のあらゆる事象は,唯一にして無限の実体としての神のあらわれであり,神の絶対的必然性のもとにあるとして,そのことを「神即自然」という言葉で表現した。(2017年・追試験)
次の文章は,スピノザが自由について述べたものである。その内容の説明として最も適当なものを,下の①~④のうちから一つ選べ。(2015年・追試験)

 私は,自己の本性の必然性のみによって存在し行動する事物を自由であると言い,これに反して,他の事物から一定の仕方で存在し行動するように決定される事物を強制されていると言います。......被造物についてみてみましょう。被造物はすべて或る一定の仕方で存在し行動するように外的諸原因から決定されています。例えば,石は自己を突き動かす外部の原因から一定の運動量を受け取り,外部の原因の衝動がやんでから後も,必然的に運動を継続します。......ここに石について言えることは,(人間を含む)すべての個別的な事物について言えます。......すべての人は自由をもつことを誇りますけれども,この自由は単に,人々が自分の欲求は意識しているが自分をそれへ決定する諸原因は知らない,という点にのみあるのです。
(『往復書簡集』より)

② 人間は,他の被造物と同じように自己を突き動かす原因を知らないのに,自分は自由だと思い込んでいる。これに対し,真の自由とは,他から決定されるのではなく,自己の本性によって行動することである。
スピノザは,「神即自然」,すなわち神は無限で永遠の唯一の実体であり,自然そのものであるとして,すべての事物を,神を表現するものとして「永遠の相のもとに」見ることの重要性を主張した。(2014年・追試験)
17世紀後半のオランダで,キリスト教やユダヤ教の正統派の立場から異端とみなされたスピノザの思想の説明として正しいものを,次の①~④のうちから一つ選べ。(2011年・本試験)

④ 自然は無限で唯一の実体である神のあらわれであり,人間の最高の喜びは,神によって必然的に定められたものである事物を,永遠の相のもとに認識することにある。
スピノザは,「永遠の相のもとに」という言葉を用いて,宇宙のあらゆることが神の意志によって神のうちに必然的に生起していることを直観的に認識すべきであると説いた。(2009年・追試験)

「神即自然」と「永遠の相のもとに」がキーワードであることはわかりました。しかし,正直なところこれだけの知識で『スピノザ』に挑むのはちょっと無謀な気がします。

だったら他に何か「予習」できることはないでしょうか。次回は別のアプローチでスピノザに関する予備知識を身に付けようと思います。

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大手予備校英語科講師であり『世界が広がる英文読解』や『英文法基礎10題ドリル』などの著者でもある田中…

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