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安楽死を求める人に本当に必要なのは安楽死ではないかもしれないというハナシ

(2018/7/18:幡野広志さん、宮下洋一さんとのトークイベント内容追記)
(2019/1/2:看護roo!掲載、幡野広志さんとの対談記事について追記)

つい先日、「積極的安楽死に反対の緩和ケア医が、安楽死の議論を始めようとするワケ」という記事をBuzzFeedさんで書きました。
日本でも安楽死は認められるべき!という意見から、私は安楽死はいかがなものかと思う、といったものまで、たくさんの反応を頂き嬉しい限りです。

ただ、ここでの反応を見ていて感じたこと。
それは「安楽死を求める方に対するベストな解決って、安楽死ができるようにすることなんだろうか」という疑問が生じたわけです。
今回のnoteでは、それを掘り下げて考えてみたいと思います。

目次
・安楽死と鎮静死
・『美味しんぼ』からひもとく:鎮静死は安楽死の代替になりえない
・落語の世界であつかわれる「死」
・戯曲『株式会社 必死〜金なし、コネなし、寿命なし〜』とは?
・ろうそくを燃やすように生きること
・(追記)7/16「安らかで楽な死」トークイベントで語られたこと

まず、BuzzFeedの記事について。
テーマがいくつか盛り込まれていたので、人によっては読みにくかったかもしれません。
ここに込めたメッセージを要約すると

・安楽死を求める方が少なからずいて、それは緩和ケアでは解決できない
・緩和ケアが十分に行き届いていない現状で安楽死が認められるのは危険
・安楽死が認められることで、安心して生きていけるという心理がある
・自分の生死は自ら決めるという未来に向け安楽死を含めた議論をしよう
・安楽死の代わりに鎮静をしたことが正しいことだったのかという問い

という感じになります。

ここで重要なことは、一番最後にあげたテーマ、
「安楽死をしたい、という方に対し(現状では日本で安楽死はできないから)鎮静死を勧める」というのは正しい方向性なんだろうか?という疑問です。
そして、それをつきつめていくとタイトルにもある「安楽死を求める声があるから安楽死ができるようにする」は正しい方向性なんだろうか?ということに行きつきます。

『美味しんぼ』からひもとく:鎮静死は安楽死の代替になりえない

その疑問の答えを探すために、ここでちょっとマンガ『美味しんぼ』の中から11巻「魚の醍醐味」のお話を取り上げてみます。
なんで突然『美味しんぼ』?と思われるかもしれませんが、まあお付き合いください。

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