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褐色の蛇

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20XX年、世界的な安楽死制度の議論は日本にもおよび、国民投票の結果をもってついに日本でも「安楽死制度」が法制化された。 制度が確立して12年後、安楽死制度の運用の要である「国家… もっと読む
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社会的処方はゴールではない

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ほぼ毎朝6:30に15分くらい考えるラジオ。 内容は、緩和ケア・暮らしの保健室・社会的処方・コ…

12エピローグ(2)

「亜桜ちゃん、ちょっといいかしら」  廊下で後ろから呼び止められ、水原が片手をあげながら…

12エピローグ(1)

 この日も病室は静寂だった。  ベッドに横たわる患者がいる。家族もいる。看護師がいる。そ…

11対決、そして4人の思い(6)

 自宅に戻った亜桜は、かつて自分が過ごした子供部屋に入ると、探し物を始めた。そして、勉強…

11対決、そして4人の思い(5)

「運野先生は、運野先生でしたねえ」  灰色がかった拘置所を仰ぎ見ながら、赤垣がしみじみと…

11対決、そして4人の思い(4)

 亜桜は心にずしりと重りを乗せられたような感覚をおぼえてうつむく。 ――私が、ヒトを観察…

11対決、そして4人の思い(3)

「ンン~……。まさか望月先生たちが面会に来るとはね。もう会うことはないと思っていたのに」 「まあ、きっと裁判の席でも会うことはありますよ……。それはさておき、今日は運野先生にお伺いしたいことがあって来たんです」 「聞きたいこと~? 何かしら。まあ、まず座りましょうか」  3人が、アクリル板を隔てて同時に腰かける。 「あの夜に、朔人と何があったのか、もう一度聞かせていただきたくて」  亜桜の言葉に、運野の眉がピクリと上がる。 「サクト……って、金沢さんの話? それだったら、あの

11対決、そして4人の思い(2)

 翌朝、玄関のチャイムが鳴った。  亜桜がドアを開けると、そこには赤垣が少し不機嫌そうな…

11対決、そして4人の思い(1)

 1か月後、運野は逮捕された。  最低診療期間をクリアしていない医師が制度下安楽死を施行…

10夢であったら(4)

「えっ、何これ。どういうこと」  亜桜は混乱した。なぜ、夜のうちに安楽死が施行されている…

10夢であったら(3)

「金沢さん、取り乱してしまい申し訳ございません。では改めて、制度下安楽死を進めます」  …

10夢であったら(2)

「今日、五十嵐先生の診察でOKが出たから、あとは国から薬が届き次第いつでも安楽死することが…

10夢であったら(1)

 亜桜が緩和ケア病棟に復活させたバーは好評だった。  1週間に1度、20時までという限定では…

09カウンター(5)

 木村の制度下安楽死は滞りなく施行された。  刑事の郡司に連れられて、運野がへらへら笑いながら面談室に入っていく。郡司の嫌味を1とすると運野はそれに10の嫌味をもって返す、と聞いていた。明らかに対決を楽しんでいる運野に対し、暗く沈んだ郡司の表情を見ていると、若干だが気の毒になった。  そこを、家族への挨拶を終えた五十嵐が、病棟の廊下をトボトボと歩いてきた。亜桜は五十嵐の前に出るとぺこりとお辞儀をした。 「ああ、望月先生。今日は少し長く居すぎたよ。ちょっとご家族が心配な方でね。