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だから、もう眠らせてほしい

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僕はある夏、安楽死を願った二人の若い患者と過ごし、そして別れた。 ひとりはスイスに行く手続きを進めながら、それが叶わないなら緩和ケア病棟で薬を使って眠りたいと望んだ30代の女性… もっと読む
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#生と死無常その錯綜

【賞金あり】夏の感想文:『だから、もう眠らせてほしい』2つのテーマを追って

 2020年1月からnoteで連載を続けていた『だから、もう眠らせてほしい』が、7/14に書籍版とし…

【20万PV達成】本になります。

 1月から連載を続けてきた、『だから、もう眠らせてほしい~安楽死と緩和ケアを巡る、私たち…

エピローグ(Kushiro-side)

(エピローグ:Kawasaki-sideから続く) 釧路の海に 海の向こうには死者の国がある、という…

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エピローグ(Kawasaki-side)

 吉田ユカは、鎮静を始めて1週間後に亡くなった。  実は、鎮静薬の投与を始めた後、ユカは…

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10-2:10日間の涙(後編)

(前編から続く) ラインを引く カンファレンスが終わってすぐ、担当する看護師と一緒に、吉…

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10-1:10日間の涙(前編)

 日曜日の朝、自宅マンションでYくんは亡くなった。  奥さんが、朝に様子を見に行った時、…

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9:少し先の未来がつむぐもの

 Yくんの具合が少しずつ悪くなっていったとき、吉田ユカもまた、体調を崩してきていた。  元々のユカと約束した外来日はもう少し先だったのだが、電話で予約を取り直したらしい。朝、外来予約一覧で彼女の名前を見つけ、「ついに来たかな」と僕は思った。  外来に現れたユカは、以前に会ったときよりさらにいっそう痩せていた。長く歩くことは難しく、外来のベッドで横になって診察を待っていた。 「先生、もう限界になりました」  と、ベッドサイドに来た僕に彼女は言った。 「前回の外来から、できる限

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8:もし未来がわかったなら

 Yくんは、キャンプから無事に帰ってきた。  キャンプから2週間後、外来に現れたYくんは…

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7:いのちではなく、希望を守りたい

 前回の外来から1か月半。これまで時々流れてきていた、Yくんのツイッターの更新頻度が減っ…

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6-2:安楽死の議論はやめたほうがいい ~宮下洋一に会う (後編)

(前編から続く) 流れ作業化する安楽死  僕は、吉田ユカがスイスに受け入れを断られた件に…

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6-1:安楽死の議論はやめたほうがいい ~宮下洋一に会う (前編)

 幡野広志に会った後、僕にはもう一人どうしても会っておきたい人がいた。  それが、高願寺…

5-3:安楽死に対峙する、緩和ケアへの信頼と不信~幡野広志と会う(後編)

(中編から続く) 耐え難い苦痛とは何か 「先ほど話したAさんのケースの時に、医療者が悩ん…

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5-2:安楽死に対峙する、緩和ケアへの信頼と不信~幡野広志と会う(中編)

(前編から続く) 幡野広志と吉田ユカ 「吉田ユカさんとは、お会いになったんですよね」  ど…

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5-1:安楽死に対峙する、緩和ケアへの信頼と不信~幡野広志と会う(前編)

「幡野さんの病状は最近どうなのですか?」  今日もある人から尋ねられた。 「幡野さんはいまどうしていますか?」と聞かれることもある。知っているはずがない。だから僕は、彼の担当医じゃないんだっつーの……。と思いながらスマホのカレンダーを繰ると、最後に会ったのは2か月前。そしてさらにその2か月前にも会っている。そして今月はもう3回も会う予定が入っている。  なんだ、たしかに外来の患者さんと同じくらいのペースで会ってるんじゃないか、と独りごちて、笑った。 「まあ、元気なんじゃな