パンくず4

むくろ人形の不思議な話4【パンくず女】

『パンくず女』

怖い話とラベリングするほどではないけど、どうにも不可思議な話をまとめるシリーズです。

2020年1月16日にした話。

昔、我が一家が住んでいたとあるマンションでの出来事です。

親父はそのマンションの理事長もやってて、それ故に遭遇した話です。

ある日の朝、マンションの管理人のおじさんが「ちょっと相談なんですけど…」とウチに訪ねてきたことがありました。

管理人さん「あのー、7階の、屋上に続く最後の階段の踊り場にですね、なんか、パンくずみたいのが落ちてるんですよ」

親父「はあ、パンくず。掃除したんですか?」

管理人さん「ええ、でも、その…パンくずがですね、掃除しても掃除してもね、毎朝あるんですよ」

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話を聞くと、朝、管理人さんがマンションに来て階段をチェックすると、必ずそのパンくずが落ちてるそうで、掃除しても翌朝にはまた落ちているんだそうです。

うちのマンション、夜には正面玄関に鍵かけちゃうし、屋上の扉も夜には自動でロックがかかるんですよ。

親父「明るいうちに誰か入り込んでたらやだね」

で、実際に管理人さんと屋上に続く階段の踊り場に行ってみたら、確かに登り切る直前のところに、パンくずが落ちてる。

親父「浮浪者でも入ってんのかねぇ」

管理人さん「でもそれらしき人が昼間に入ってくるのなんか見たことないですけどねぇ…」

確かに、夜は入れないから朝のうちに忍び込んで屋上に隠れるしかないんです。

でも、屋上には割と住民たちが洗濯物干しに行くので、そこで鉢合わせてないのも解せない。

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管理人さん「じゃあマンションの住人ですかね…?」

親父「部屋があるのにわざわざ階段の踊り場で毎晩パン食うやついるかね…」


で、親父、管理人さんと共に、数日間注意してみることにしたそうなんです。

でも、それらしき人物は何日経っても見当たらない。にもかかわらず毎日変わらずパンくずはバラ撒かれている。

あと、そのパンくずがちょっとずつ大きくなっていたそうなんです。

親父「なんか、前よりちょっと…」

管理人さん「…違いますね。誰なんだ全く…」


それからさらに数日経っても人影は見つからず、パンくずはどんどん大きくなって、あるときはパンの耳が無造作にちぎられてばら撒かれてる状態になっていたそうです。

親父「これ…食べカスじゃないよなぁ」

管理人さん「え?」

親父「ちぎって捨ててるでしょこれ」

管理人さん「確かに…」

なんかもう割と異常事態になってきたので、親父、管理人さんが帰ったあとの夜中に、階段を抜き打ちで見回りしてみることにしたんだそう。


しんと静まり返った夜中。25時くらい。

親父、そっと上がって、屋上へ続く7階へ…。

で、階段を折り返して目線を上げた時、屋上に続く階段の先から、女性の素足の先端が出てたんだそうです。

親父、瞬間息グッと詰まるような感覚になったと同時に、なぜか、「これ追い詰めて飛び降りでもされたら叶わんな」って思ったんだそうです。

親父「ちょっとあなた、階段汚さないでくださいね。今回は見逃すから」

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親父、マンションの住人と睨んでいたから、角が立たないようにそう伝えたら、女はタタタタッ! って上へ逃げていったんだそうです。

親父「(え、上、屋上しかないのに?)」

でも、音がしないんだそうです。ガチャっと屋上開ける音も、足音も。

曲がった階段の先で、女、微動だにしてないんです。

そのことに不気味を感じて、親父そっと引き返し、屋上から続く7階の廊下で控えて、女が諦めて降りてくるのを確かめようとしたそうです。

ゆうに5~6分は経ったそうですが、なかなか降りてこない。

夜中の25時過ぎに屋上から降りてこないなんて事あるのかなぁ…。

子どもでもないよなぁ…大人の足だったし…。

なんてことを考えてたら、フッと降りてくる気配がしたそう。

親父「え、足音…」

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してなかったんだそうです、足音が。

親父「え、どういう…」

って思っていたら、それは起こったそうです。

あっという間の出来事だったそうで、そこだけ記憶が朧げなんだそうですが、その、スーッと階段から廊下に女が、足は動かしていたそうですが、滑るように音もなく飛び出してきたんだそうです。

「うわ、やっぱいた」

そう思って注意しようとしたものの、足音の違和感に気付いて、親父声かけるの一瞬ためらったそうです。

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するとなんと、女は飛び出してきた速度そのまま、廊下奥の重い非常階段の扉を、音もなく、風圧でスッと開くように20cmほど開けて、そこから居なくなったそうです。

この話を聞いた時、親父は「ありえないんだよ。ドアノブガチャッと音立てないと開かないし、開ける時重いから、一度立ち止まるか、あの速度で行くなら体当たりでもしてドーンと音立てて飛び出さない限り、あんなすんなり開かないんだよ」って言っていました。

それ以来、パンくずは落ちなくなったそうです。

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親父があの時

「今この人追い詰めて屋上から飛ばれでもしたら叶わんな」って、階段を最後まで上がらなかったの、

なんとなくですけど、

とんでもない英断だった気がします。

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おわり

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