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プリンタの不具合で生まれる謎生物が可愛すぎてキュン死する癒やし系日常ペット漫画と思ったら、不穏な謎が散りばめられた近未来SFだった『プリンタニア・ニッポン』

【レビュアー/本村もも】

こんにちは。今日ご紹介するのは近未来SFペット漫画、『プリンタニア・ニッポン』です。動物好き、SF好きの方は必見!という不思議な漫画です。

プリンタの不具合から生まれた謎生物「プリンタニア・ニッポン」

前述の通り、プリンタニア・ニッポンは近未来のお話です。

生体プリンタという、生き物を作ることができるプリンタが合法的に世の中に出回っており、プリンタでペットを生み出す世界。主人公の佐藤は、憧れの芝犬を飼うべく生体プリンタを購入しましたが、出力されたのは、見たことのない白くてもっちもちの謎の生き物

じつは佐藤の購入した生体プリンタは、この謎生物が作られてしまう不具合があったのです。しかし、製造会社のニューチノー社は「かわいいから問題ないと思った」という理由で、問題を放置。この不具合で生み出されたこの生物は、新種として「プリンタニア・ニッポン」という名前で登録されます。

憧れの芝犬ライフから一変、謎生物を飼うことになってしまう佐藤ですが、彼は順応性がとても高いので、あまり気にすることなくこのもちもちに「すあま」と名付けて飼い始めます。

1枚目

『プリンタニア・ニッポン』(迷子/イーストプレス)1巻より引用

癒し系日常ペット漫画に、そっとちりばめられた近未来の不穏な謎

すべすべで真っ白、もっちもちで、短い手足に素朴な顔。すあまの可愛さは爆発的。徐々に佐藤に懐いていくすあまと、すあま中心の生活になっていく佐藤。

二人の日常を見ているだけでも本当にたのしい漫画なのですが、本作のもう一つの魅力は、本作がSF漫画でもある、ということなのです。

「コンサル」と呼ばれるAIが一人につき一台(?)ついており、生活の全てをお母さんのようにサポートしてくれる。コンサルはただ生活を便利にするだけではなく、面倒を見ている人間が幸せになれるように、愛情たっぷりに、色々と気を揉んでくれます。

そして「プリンタニア・ニッポン」の随所に出てくる「評価」という言葉。じつは、この世界の人間は生まれた時から、日常的に”誰か”からの「評価」を受け、その「評価」によって選べる仕事や、生活水準が決められているのです。ペットを飼うことも、一定の「評価」を受けていなければ許されません。

「開拓」と呼ばれる僻地での危険な仕事はなんのために?

登場人物たちの家族は一体どこに? 

・・そもそも誰が何のために人間を評価するのか?

本作にはそうした不穏な謎が、そっと散りばめられています。この謎が、山椒のようなピリッとしたスパイスを与え、物語の面白さに厚みを出しています。

2枚目

『プリンタニア・ニッポン』(迷子/イーストプレス)1巻より引用

8月19日に2巻の発売を控える『プリンタニア・ニッポン』。ぜひぜひもちもちの愛しすぎるすあまとマイペースな佐藤の、すこし不思議な世界に触れてみてください。