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個人に必要なスキルの範囲が少しだけ変わってきていて、それは長期的にわりと大きい影響があるかも知れない

コロナ禍で、企業人やアーティストなどあらゆる分野に共通して重要度があがったと思うスキルはいくつかあるけど、
・少し広い意味での「ITリテラシー」
・少し広い意味での「つながるチカラ」
は割と典型的と思う。

ITリテラシーについて言えば、今まではたとえば「エクセルやネット検索を効果的に使える」とかで良かったのだけど、今回、「自宅のPCの通信が遅いのをなんとかする」「Webカメラの映りが悪いのをなんとかする」といったところも必要になってしまった。そもそも何をする必要があるかを判断しないといけなくて、ひょっとすればネット契約を変更する必要があるかも知れないし、Wi-Fiのリピーターを設置する必要があるかも知れないし、適切なカメラを購入して設置場所やライティングや、場合によっては通信速度に応じて解像度を調整するのも自分でやらないといけないわけで、どちらかといえば、テキストを読むだけでなくやってみないと身につかない分野だ。たとえば企業幹部で「ITに強い」と言われていた人でも、この辺の作業はすべて部下がやっていたので困った、という人は多いかも知れない。僕自身は幸か不幸か、なんでも自分でやらないといけないような立場だったことが多かったので、少し助かったけど(ていうかそれが仕事のようなものだ)。

これについては、いろいろな分野の人たちの中でも、この数か月で、それ以前と比較して急速にプロフェッショナルなレベルに達した人と、あまり変わっているようには見えない人がいて、これはたぶん、その人たちの今後に大きく影響してくるんじゃないかという気がする。僕の好きなジャズピアノの分野でも、チックコリアや小曽根真といった人たちは、元々オンライン配信の環境が整っていたのかも知れないけれど、コロナ禍で従来の評判をさらに大幅にアップされたように思う。さらに言えば、むしろ、この環境ならではの新たな世界を拓いた人たちもたくさんいるわけで、たとえばZoom演劇で彗星のごとくあらわれた劇団ノーミーツなどは、その旗揚げ公演「門外不出モラトリアム」に至る一連の経緯をみていて、企画だけでなく技術的にも、その巧みなオンライン利用方法に驚愕した。

「つながるチカラ」というのは、もう少し抽象的な話だ。これまで、仕事であれば、たとえば会議や講演会のあとでちょっとご挨拶をしたり、ベンチャーであればスタートアップコミュニティのミートアップがあったり、企業人であればなんとなく会食があったりしたし、プライベートであれば誰かが適当に友人をあつめて飲み会を企画してくれたり自分で企画してみたりということで、つながりが増えることも多かったけど、オンラインではその部分が、だいぶ減ってしまう。オンライン飲み会が盛んになって、親しかった友人とさらに親しく交流するという意味ではすごく効果が大きかったと思うし、僕もだいぶ活用しているけれど、そこで新しい友人をつくるというのは、リアルな場よりはむずかしいだろう。

要するに、「つながりのできる場を効果的に活用する」だけではなく、自力で新しい「つながりのできる場」をつくりだすチカラも問われるようになってしまった。これまた、用途に応じたオンラインツール(ビデオ、メッセンジャー、さまざまなSNS)の巧みな使いわけと、リアルな場とはちょっと違ったオンラインでニュアンスまで含めたやりとりするコミュニケーション力が必要で、やってみないとわからない部分が大きい。少なくとも、今ほどそれを「やってみる」機会が多い時期もなかなかないわけで、ここでどれだけ経験をしているかは、コロナ禍がおさまったあとも、長期的に大きな影響をしてくるだろうと思う。

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