コミュニティが安定した次へ行くためには

先日、箕輪編集室というオンサロンのコミュニティデザインチームで、「 コミュニティ・オブ・プラクティスの読書会をしました!

僕が担当した内容は、コミュニティが安定し始めると、様々な問題が発生するよ!そのためにはこんなことをするべきだと思うよ!といった内容だったので、発表内容をそのまま公開します。

7章 実践コミュニティのマイナス面

知識を溜め込み、技術革新を阻み、人を専門知識のとらわれの身にする。
実践コミュニティを美化したり、問題を解決するだけで問題を生み出す事はないなどと考えない事が肝要である。

1 単体のコミュニティ:起こり得る不調
1.1 コミュニティがうまく機能していない場合
基本原則のいくつかに反している
対極的な要素間の緊張関係のバランスの喪失

領域がメンバーの情熱を掻き立てる事がない
信頼しあえるほど強く結びついていない
実践に進歩が見られない

1.2 メンバーの人間的弱さの反映
コミュニティのいくつかの側面が、うまく機能しすぎている場合が多い。
親密なコミュニティでは、暗黙の仮定の多くが疑われない、異議を唱えようとする人がいないということがある。
コミュニティの不調は、コミュニティの長所の極端な表れである事が多い
領域に関する共通の見解や信頼、コミュニティとしての一体感、永続的な関係、定着した実践→歴史や業績のとらわれの身にしてしまう

不調を見抜く能力を身につけるために
 不調とその対策と、不調に最も直接的な影響を被る構成要素
1. 領域
2. コミュニティ
3. 実践
と関連づけて考えることが一番である。

領域:所有者意識の罠
帝国主義
コミュニティは領域を発展させる責任を担うようになると、どのように領域に取り組むべきで、どの問題が重要か、誰が決定権を持つか、組織が領域をどう扱うか、といった権限を持つ。
 →領域の焦点が、メンバーが強い情熱を持っている分野にある場合の思い込みが発生する
思い込み例
 メンバーが自分たちの領域は、他のコミュニティの領域よりも重要である。
 領域に関する自分たちの意見が主流になるべきなどと思い込むことがある。
 新しい争点が生まれれば(eビジネスなど)コミュニティが主導権をめぐって争うこともある。

帝国主義的なコミュニティは、異なる考え方や外部の専門家や新しい方法論を受け入れることができない。帝国主義的なコミュニティは、異なる考え方や外部の専門家や新しい方法論を受け入れることができない。
 →自分たちの見解こそが正しいという、強い思い込みがあるため

このようなコミュニティに対するアプローチ
 自分たちの領域を超えた現実の問題の中で他の見解に触れさせ、複数の手法を組み合わせなければ解決できない問題に直面させる必要がある。

領域にまつわる不調の対処法
コミュニティや組織が、領域とビジネスニーズとをはっきり関連付けていない場合、または組織のニーズが重視されすぎて、メンバーの考え方や関心が省みられない場合が多い。領域の不調は、コミュニティが環境の中でどのように自己を規定するかという問題に関わっているために、往々にして組織やその他の関係者にも影響を及ぼす。
 →こうした関係に気を配る
 領域の正当性や戦略的価値を立証する
 ビジネス上の課題とのつながりをはっきりさせる
 メンバーを鼓舞するような課題を与えてコミュニティが価値を提供する方法を見つける
など

コミュニティ:過ぎたるは及ばざるが如し(派閥問題)
コミュニティには人間であるメンバーの強みや弱み、それに複雑な相互関係といったものが全て現れるのである。
メンバー間の強い結びつきは時に排他的で参入障壁となる。また、メンバーに思いもかけない行動をけしかける。コミュニティは用心しなければ中毒性の高い馴れ合いを生み出すのである。

派閥
メンバー同士の関係が強くなり、その他の関心事よりも優先されるほどになると、実践コミュニティは、派閥と化す。派閥的な子コミュニティは、意図的に、または緊密な結びつきの意図せざる結果として、排他的になる。

派閥的なコミュニティは停滞する事例がある。緊密な友好関係や社交的な雰囲気を求める心が過ぎると、メンバーが批評し合うのをやめてしまったり、領域に対する理解を深める意欲を失ってしまうことがある。

そうなるとコミュニティは、メンバー同士が互いを挑戦から守ろうとし、盲目的で自己防衛過剰な結束になってしまう。派閥的なコミュニティに必要なのは、新しい血、つまり内輪の関係の「藪」にそれほどとらわれることなく、コミュニティに地平線を再び切り開くことのできる人である。

 平等主義
 依存
 階層化
 繋がりのなさ
 ローカリズム

派閥的なコミュニティに必要なのは新しい血である
内輪の関係の「藪」にそれほど囚われる事なく、コミュニティの地平線を再び切り開く事のできる人。

実践 コンピタンスの負債
共有された実践は、資源であると同時に負債でもある。実践があるお陰で認識や意思伝達が効率的になるが、代償が伴う。なにが起きているかわからない。
→実践者が、自分のパラダイムに適合しないものから目をそらしてしまう。

文書化至上主義
文書化は、実践に必要ではあるが、洞察やアイデアや手順を保存、記録し、その情報をレポジトリーに保存し、アクセスする事自体が目的となってはいけない。
本当に役に立つように、十分なふるい分けや体系化をしなくてはいけない。
情報のガラクタ置き場としないためには、
 コミュニティの目的
 真に有用と考えられる文書の特定
 その管理のための任務規定
を明確に規定する必要がある。

負債の種類
 既視感
メンバーが直面した問題を議論するだけで、記録しないと、似たような問題が生じた場合に、既視感が発生する。その既視感はメンバーに参加への無関心を生む。
 独断
思い込みが発生し、確率された規範や方法に執着するようになる。バリエーションを無くし、部外者への立ち入りを専門的な共通言語で遮る。
 凡庸
実践を構築するということは、学習やイノベーションにまつわる活動に絶えず関わって「刃を研ぐ」ことである。
ただ、二流に甘んじ、最先端以下で満足する緩慢さが発生する。高度な知識を持ったメンバーに立ち向かえるほどの知識を持ったメンバーが存在しない場合が特に危険である。
その際は、ベンチマーキングが有効。

実践に関わる問題は、やがてメンバーの関心を失わせ、コミュニティを機能不全にしてしまう。
つまり、メンバーを実践の構築に関わらせる事が必要である。
 積極的に参加できるだけの時間をメンバーに与える
 メンバーが共同でアイデアを検討する作業
 「もの」を制作する作業とのバランス
 知識を生み出すための刺激的なプロジェクト
 競争相手を含む他のコミュニティの実践のベンチマーキング
 最先端の問題を抱えるチームの手助けをするようメンバーに促す
 貢献が組織内での名声や昇進につながる
ようにして、参加に報いる対策が必要
こうした不調の多くは致命的ではない。どんなコミュニティからもその影響は免れない。
コミュニティのマイナス面に取り組むという事は、問題を認識し、処理する方法を学び、行動が必要なときには、リーダーシップを発揮する必要がある。

コミュニティを絶えず新しい挑戦で刺激し、外で起きている問題に対して責任を担わせ、新しい世代のメンバーがもたらす新鮮なアイデアやテーマを進んで受け入れさせなくてはならない。

2. コミュニティの集合:起こりうる不調
コミュニティが効果を発揮するためには、他のコミュニティともうまく連携しなくてはならない。
実践コミュニティは領域に集中的に取り組んで専門知識を深めるため、必然的に境界を作ってしまう。
これは、コミュニティが焦点を持ち、親密な関係を培い、能力を共有している当然の帰結である。
コミュニティの3つの要素はどれも境界を作る可能性がある。領域が異なれば、興味も、見解も、価値認識も、そして何に刺激を感じるかといったことも異なる。
境界は、組織の知識をケアする上で、二つの難題を引き起こす。
 知識は実践に粘着しているため、組織で移転させる事が難しい
 知識は組織の内部にとどめておくことが難しい。

粘着性
コミュニティは専門用語や専門的な方式、独自の環境を生み出すことを通して、効果的に知識を維持・向上させている。このことは実践者の学習や発明を容易にするが、同時に部外者に対する境界を必然的に作り出してしまう。
実践の境界を超えることは容易では無い。
この境界を超える問題は、異なるコミュニティから来た人々は、異なる前提を持っているために、似たような用語を使っていても、話が噛み合わないことが多く、それぞれが属する実践コミュニティの間に存在する様々な境界から生じる問題である。

境界を超えて、知識を移動させることは難しい。コミュニケーション上の問題と、実践者と社内のビジネスリーダーとの結びつきの弱さが要因となっている。

漏洩性
実践の境界は、組織の境界と同じではない。組織の内部でチームやコミュニティを結びつけているマルチメンバーシップは、組織の外にまで及ぶ。
このマルチメンバーシップのおかげで意思疎通が効率的になる結果、実践の内部で知識をスムーズの動かせるようになる。
だが同時に、知識が組織の境界を簡単に超えて流れ出るようになる。
知識が外部に簡単に漏れ出てしまうのは、組織の境界を超える実践が、情報やアイデアを効果的に、洞察に満ちたチャンネルになるためである。

境界のマネジメント
知識は「粘着的」で「漏洩的」である。
漏洩のリスクを回避することは不可能だと受け入れて、対処しなければならない。
境界に細心の注意を払い、境界が生み出す問題を回避しつつ、提供する機会を利用する事が最善の対策である。

境界を超える
メンバーは実践にとらわれずに交流を広げることで、自分の持っている前提を新鮮な目で見直す。その結果、境界を超えることによって深い学習が促される可能性がある。
革新的に新しい洞察や展開は、コミュニティの相互間の境界で生じることが多い。

境界を超える必要性を重視しなければならない。複雑な問題を解決するためには、1つの実践や組織にとらわれてはいけない。

組織は、非公開にしておくべき情報の遮断方法について講じる必要があるが、コミュニケーションと相互学習を可能にするだけの情報は開示しなくてはならない。
健全なコミュニティであれば、何を共有か非共有であるかメンバーで判断することができる。

実践コミュニティの境界線は機会をもたらす。だからこそ、コミュニティの中心部と境界線に注意を払う必要がある。

境界での活動について
 複数の領域が交わる共同事業
 複数のコミュニティに属している特性を生かした仲介人による交流
 実践と実践の間での解釈のズレを修正する境界物(パウンダリー・オブジェクト)

境界を超えるためには、
 コミュニティの中で信頼関係を築く
 境界での持続的な相互交流

コミュニティの内部で深い専門知識を生み出しつつ、境界では絶えず知識を再生していくことが、実践コミュニティが真の知識資産となる時である。

3. 組織:起こり得る不調
実践コミュニティは、一般的には組織という文脈の中で発展していく。
不調が起こって人々の注意から最も生産的な活動から逸れてしまったり、境界のせいで組織が分裂する際に、実践コミュニティが原因で学習が阻まれてしまう。

組織が直面する持続的な不調
3.1.1 不合理な駆け引き
内紛などで知識共有が妨げられるとき、その渦中に実践コミュニティは巻き込まれる。
コミュニティは、組織内の緊張を映す内部抗争の中で、派閥主義の餌食になりやすい。
3.1.2 具体的な成果への短期的集中
コミュニティが説得力のあるビジョンを持っていなければ、コミュニティは技術や文書化といった公式の評価に含めやすい成果に重点的に取り組むことに余儀なくされる。
その結果として、「文書化主義」や「凡庸」などは、組織からの圧力に対する反応なのである。
3.1.3 反学習文化
学習や熟考や知識の共有を拒むような組織文化。実戦コミュニティの存在そのものが疑われる。

組織上層部や外部を巻き込んで、問題に対処し、優先順位を定め、組織体系を見直す必要がある。

3.2 組織が実践コミュニティを重点的に扱うことで、特的の問題が増幅されること:硬直性や複雑な構造
 理論の「つぎはぎ」から発生する新しい問題
 変化に感度が鈍化する場合

コミュニティの力学は両方向から働くために、実戦コミュニティは、硬直性に対する改善処置にもなる。
コミュニティ全体が変革のプロセスを経験する際、それぞれのメンバーも劇的な変化を遂げやすくなる。
メンバーはコミュニティに深くのめり込むことも、手を引くこともある。コミュニティ自体の能力、特質、置かれた環境によってそれは変化する。

複雑性のマネジメント
実戦コミュニティは、焦点を絞った知識領域を担うコミュニティをいくつも持つことで、組織が複雑な要求に適応する能力を高めることができる。
組織が、微妙なトレンドを察知し、より早く情報を吸収できるようになる。

しかし
複雑性は、組織の意思決定に対して作用する。
権力の集中度が低ければ、必然的に多様性を生み出し、事業の方向の決定に、より多くの利害関係者が関与することになる。

組織の幹部、運営が注視しなければならないポイント
 コミュニティの自発性が、組織の複雑性を増すこと
 組織がどの程度、複雑さに対応できる能力を持っているか
 その能力を開発できるか

*複雑性全てを組織に持ち込む必要性はない。組織が自壊する恐れがある。

結論
 本章で説明した不調に、確実な防御策はない。
コミュニティの繁栄のためには、発展に注意を払い、微調整する。そのために、コミュニティ開発にまつわる課題に取り組み、効果的な知識体系の完成を促し、知識体系としての説得力あるビジョンを浸透させなくてはならない。
1. 現状に常に異議を唱え、領域では何が可能であるかを理解する
2. それに関心を持っている人々を結びつける
3. コミュニティの境界を外部に向けて開いておくために境界でのリーダーシップ
4. 協力的で意欲をそそる環境をコミュニティに提供するための組織のリーダーシップ
 コミュニティの抱えるリスクを認識しておけば、組織と、組織に必要な知識を世話するコミュニティと、コミュニティのメンバーとの間の関係を、一層有意義なものにすることができるはずだ。

第8章 価値創造の評価と管理

1. ナレッジシステム
学習とイノベーションを促すために、コミュニティを組織に浸透させ、組織と融合させ、影響を持たせるためには、コミュニティを評価および管理する必要がある

実践コミュニティは知識資源を世話することで価値が創造される。

知識資源は、一般的に評価・管理することが難しいとされている中で、価値を生み出す「ナレッジ・システム」であれば、評価し管理することが可能だ。

ナレッジ・システムについて
ITの分野では、単なる情報やデータではなく、何らかの対象についての体系立った知識や、目的の解決に直接役立つような知見、実践的なノウハウや経験則といった暗黙値を言語化・可視化したもの、といったニュアンスで用いられることが多い。企業が業務に必要な知識・知恵を情報システムに集積し、組織全体で共有・活用できるような仕組みのことをナレッジマネジメントという。http://e-words.jp/w/ナレッジ.html

評価活動とは、知識を生み出す活動とそれが適用する活動の間の因果関係を追跡し、記録することである。

価値創造を評価する
コミュニティが組織での存在感や影響力を高め、自らの発展を評価し、導こうとする時には、価値を示す指標が役に立つ。

評価方法:体系的な事例証拠
 ナレッジ・システムを全体的にくまなく吟味する。
実践コミュニティの活動に始まり、知識資源がビジネス・プロセスに適用されるまでを追跡。
顧客や関係者に価値を提供する上で、コミュニティの活動がどのように役立ったか

価値は物語として伝える
 ナレッジ・システムを考察するためには、物語(ストーリーテリング)が良い。
 コミュニティの活動、知識資源、業績成果の間のつながり→暗黙の背景を適切に組み入れることを可能とするのは、物語だけである。

物語の主要な要素
 イノベーションを起こし、スキルを学び、問題を解決するための、当初の知識開発活動
 この活動で生み出された知識資源、例えば新しい洞察や手法、関係など
 この資源がどのように適用された結果、価値が生み出されたか
*物語の指標として、コミュニティが解決した問題について、問題をコミュニティがなかった場合を仮定として、説明することは良いポイントとなる。

体系的な収集について
実践コミュニティの評価のためには、事例証拠を体系的に収集しなければならない。
 

ボトムアップの体系的収集
まずコミュニティで行われている、あらゆる活動を特定するところから始まる。
活動を、各プロセスを通じて徹底的に追跡して、それらがどのような効果をもたらすかを理解し、活動がもたらす価値の全貌を知る。

トップダウンの体系的収集
事業戦略やビジネス・プロセスのレベルから始める。つまり、会社が競争に勝つためにどのような知識を必要とするかを割り出し、それから会社がこの知識を構築、共有、適用する上で、コミュニティがどのように手を貸しているかを問う。

コミュニティの価値を示す証拠は、個々の事例に基づくものでなくてはならない。
→因果関係、考慮すべき文脈上の要素の説明のために、物語が必要。
*単独の物語は全ての活動、起こりえる結果を代表していない可能性がある。

評価プロセス手順
1. 誰のために、なんのために収集するか
評価の目的と、評価範囲を前提の段階で定めなければならない。

2. 何をどのように(インタビュー計画案)
コミュニティの活動と、企業にもたらされた価値との関係を示すために必要な。因果関係(物語)や関連統計の種類と量を見極める。
どんな定量的データを収集すべきかetc参加率、投稿数

3. どのようにして評価への関心を呼び起こすか
有用な知識を抽出するには、因果関係を示す物語が不可欠。
物語を伝えられる実践者の協力を得ることが重要である。
コミュニティの価値を記録するコーディネーターに協力することは、実践を維持・向上するための活動の一環である。

4. いつ、どこで
誰が、どれくらいの頻度で、どんな手法を利用して(インタビュー、調査)データを収集、どのような手段で保存、配布するか、定める必要がある。
プロセスを標準化できれば、評価に対するコミットメントを強化して、その取り組みに協力する敷居を下げることが可能だ。

5. データをどのようにして合わせ、全体像を作るか
データは、最終的にはコミュニティの行う推進活動の総価値が分かるような形に統合されなければならない。
→コミュニティは、推進活動に投資しているため
知識の活動がダイナミックで状況依存的である。
実践コミュニティが、正確な指標を提供できる唯一の場となっている。
生み出された指標は、コミュニティの活動の優先順位をつけ、メンバーの評価、コミュニティの正当性を強化する。

2. ナレッジシステムを管理する
 知識を生み出し、適用する様々な価値創造のプロセスを互いに関連づけること。
 コミュニティは知識領域ごとに編成されており、それぞれの領域に関連する知識資源の管理に対して直接責任を負っている。
 そのようなコミュニテイは、組織が知識資源の管理にまつわる基本的問題に取り組む上で、中心的存在となる。

 チームやビジネスをサポートするような知識が効果的に生み出され、適用されているか
 知識開発における優先事項は、事業戦略と整合性が取れているか
 チームやビジネスユニットは、知識資源を最大限活用しているか、知識を捉えて統合する機会を、あらゆるユニットで十分実現しているか

これらは組織内のあらゆるユニットが答えなくてはならない問題である。
また、コミュニティは、ベスト・プラクティスがビジネスユニットの境界を超えて浸透する速度を加速させる中心的な力となる。

知識資源の価値を管理する方法を計画するのに当たって、組織運営を、経営陣に限らない様々な担い手が、担う職務の集まりとして捉えることが必要である。
内外の意思決定責任のバランスを、率直で誠実な話し合いを通して決定する必要がある。もちろん、その管理責任のバランスは変化することが必然である。

目標を設定する
1. コミュニティ
組織がコミュニティそのものに直接投資を行い、コミュニティは価値を創造する知識を生み出す責務を担う。

2. 知識資源
組織はコミュニティが特定の知識資産を生み出すために行っている推進活動やプロジェクトに投資し、組織のリーダーが責任を持って、これらの活動が所定の成果を挙げるように図る。

3. 事業価値
コミュニティは価値創造に関する目標を与えられ、目標を達成するために、役立つ資源を生み出したり、業務ユニットと結びついたりする責務を自ら負う。

課題
どの観点から、どんな目標を設定するか
(コミュニティの活動、知識資源、業績、あるはこの組み合わせ)

目標をどのように設定するか(更新頻度)

“誰が“どんな情報や話し合いに基づいて目標を設定するか決めること

業績を管理する
コミュニティの業績を評価する、目標と実績のギャップの管理、こう背の認定などを誰が担うかということ。

どのような報奨制度が効果的かは、組織や集団の文化規定に左右される。
コミュニティへの貢献を人事考課に取り入れることは、コミュニティの重要性を再認識し、組織の全般的な状況の中でコミュニティを大事にする1つの方法である。

資金提供
学習やイノベーションに時間を捧げられるのは、資金提供があってこそである。
また、組織がコミュニティに資金提供すれば、知識推進活動に対するコミットメントを明言したことになる。

1. 個人の参加
メンバーがコミュニティに参加するための時間的費用と旅費が含まれている。

2. プロジェクトの運営資金
特別な資金提供を受けるプロジェクトには、大きな名誉が伴う。
組織はコミュニティが指揮する特定のプロジェクトを通じて、コミュニテイの資金を部分的または全面的に提供する場合がある。

3. コミュニティへの包括的な資金提供
コミュニティの規模や活動水準にもよるが、組織は一般的にコーディネーターの時間の20~100%分の資金を提供し、コーディネーターがコミュニティとその実践の開発に専心できるようにしている。

公式で資金が潤沢で専任スタッフを抱えるコミュニティと、自然発生的で専用資金の提供を受けていないコミュニティとを区別している。資金提供を受けるコミュニティは、知識がもたらす成果やサービスに対する責任が伴う一方、提供を受けていないコミュニティは、どんな価値を提供するかについてはそれほど細かい詮索を受けない。

結論
コミュニティは広く浸透し、影響力を増し、組織資源を支配するようになった今、コミュニティを評価管理することが重要である。
コミュニティの評価管理方法は、コミュニティを核とする知識推進活動の初期段階では、場当たり的なものであっても、時間軸で、投資が増えるにつれ、厳密さを増していく。

またコミュニティを評価することを通じて、上層部のスポンサーの支援を強化し、チームやビジネスユニットやメンバーの目から見たコミュニティの正当性を高めることが可能だと多くの企業等が気づき始めている。

信頼できる評価システムがあれば、経営陣とコミュニティ・リーダーは組織運営上の責任をどのように分かち合うかについて、事実に基づいて取り決めることができる。

コミュニティを従来の方法で評価し、管理することはできない。

問題は、そもそもコミュニティを評価・管理すべきかどうかではなく、どのようにして評価・管理すべきかということなのである。
コミュニティを「育成する」上で我々が強調する点は、ここである。コミュニティが潜在能力を実現させるためには、内外からの配慮が必要である。
コミュニティを管理すると同時に、自発的に管理させない限り、コミュニティは本来獲得できるはずの能力や正当性、影響力を得ることはない。
要は、「管理」という概念そのものを再構築して、非公式と公式両方の現象を含めなければならない。
コミュニティを意図的かつ体系的に発展させることは必須である。

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