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洋裁教室を始めようと思う

“服にまつわる環境負荷を減らす”
という大きな目的を持った
小さな洋裁教室を始めようと思う

私の母は公民館で手編みを教える人だった。現在は週2回のデイサービスを楽しみにしている。そこでもやはり、自由時間に手編みを教えているらしい。

幼い頃、母の部屋に入ると、作りかけの服、毛糸の見本帳、ボディ、編み図などがあったのを記憶している。そんな環境で育ったから、私も自然と服作りが好きになった。

服は平面の布を立体的に構成したものだ。人の体は複雑な曲面をした立体で、服はそれを覆うために、曲線的な各パーツの布を縫い合わせてできている。さらにボタンやファスナー、芯といった副資材なども加わって、多くの部材から成り立っている。

だから服は、素材ごとに分けるのが難しい。リサイクルが進まない理由のひとつである。
長く大切に着ることが、服にとっても、環境にとっても良いと思う。

夏祭りへ行くと言う娘のために、久しぶりに母の納戸へ入った。
プラスチックケース五箱、段ボール三箱をかき分け、七棹の箪笥の中から目星をつけて、ようやく浴衣を見つけた。
七棹もの箪笥は、父や親戚や子どもの頃の私たち姉妹が使っていたものだ。もちろん中には服が詰まっている。

「納戸ば片付けなんね」
母に、この状況を”どうにかしよう” という気がないわけではない。しかしいざ片付けようとすると、なかなか進まない。
ものがない時代を生き抜いてきた母は「手放す」ことが苦手だ。「捨てる」という言葉にも敏感である。

着なくなった服が適切に手放されていたらよかったのに、と思う。
また誰かに纏われて、一緒にどこかへ出かけたり、写真に収まったりしていたかもしれない。

我が家だけの話ではない。
環境省の調べでは、私たちは一年間に18枚の服を買い、12枚の服を手放し、一年間に一度も袖を通すことのない服が25枚あるそうだ。手放す服の7割近くは燃やすゴミとして捨てられている。
ただでさえ服は、原料調達から服になるまでの製造工程において、環境に多大なる負荷を与えているというのに。

さて、洋裁教室である。
ここは、服を作りたいという人のお手伝いをするところ。でも単に好きな服を作るのではない。

手持ち服を把握したうえで、
「長く大切に着られる服」を考えましょう

手放した方がよい服があれば、
適切な手放し方を一緒に探しましょう

と、語りかける。
そんな気骨ある洋裁教室を始めようと思う。

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