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創業ロゴに勝てるのか? デザイナー人生をかけて助産師の会社のロゴのリニューアルをしました。

創業2年、ロゴをリニューアルしたい。

こんな依頼があった。創業時に作ったロゴをもう一度イチからじっくり作り直したい……という話は割とよくある。創業時には初期費用はサービスを中心に投資したく、デザインに費用をかけられないんですよね。時間もかけられないことが多い。成長とともにデザインが必要になってくることがわかってくる。

しかし、さすがに2年は相当早いなと思った。


創業から大切にしていたロゴに勝たなければならない。


デザイナーとしてはかなりの重圧だ。任天堂を退社してから6年、だんだん重圧の大きな仕事が増えてきた。何者でもない無名のデザイナーから少しは成長していると前向きに受け取りたい。


依頼主は、株式会社With Midwifeの代表である岸畑聖月さん。With Midwifeは、助産師さんの会社なんです。命に携わるお仕事。そういう意味でもプレッシャーを感じました。

創業2年ということは、これから会社として勝負の時だ。しかもWith Midwifeには社内にブランドディレクターの方がいるのに「ロゴのリニューアルは前田さんに」と依頼してくれたのだ。


岸畑さんは勝負をかけた。
僕もデザイナー人生をかけるしかない。


*

今回は、株式会社With Midwifeのロゴデザインがどう生まれたのか?勝てるデザインはできたのか?のお話になります。

結論から話そう。

最終的にこんなデザインになった。(↓下の画像)ぼくは今回アートディレクターとして関わった。デザインは弊社の期待の星、デザイナー久本さんです。


上がリニューアル前    下がリニューアル後



ロゴリニューアルが必要な理由

2年でコーポレートロゴをリニューアル。これは、株式会社With Midwifeが圧倒的な急成長を遂げているからこその話だと思う。アカチャンホンポとの協働プロジェクトや、経済産業省フェムテック実証事業、メイン事業の顧問助産師は、日経新聞の一面を飾ったり、テレビの取材などメディアで大きく取り上げられたりすることが多い。弊社NASUも見習いたいところ。

正直うらやましい。

創業ロゴと事業拡大ロゴは違う

創業ロゴは創業時に必要だったデザインです。まだ見ぬ未開の地を照らし、灯台のように照らしてきたのが創業ロゴです。With Midwifeの急成長とともに、ロゴを使っているうちに違和感を感じてしまうのは当たり前のことなんですよね。事業を進めるにつれて、With Midwifeはもっとこうしたい!こうあるべきだ!ということが可視化していくから。

創業時のロゴ


次は事業拡大のために必要なデザインだ。創業から大切にしてきたロゴを作り変えることは、大きな決断だったと思う。創業時から支えてくれてきた訳だから、想いや歴史をそんな簡単に捨てるのか?ということになる。漫画『ONEPIECE』でいうゴーイングメリー号からサニーサウザンド号に乗り換えるのとまったく同じだ。

創業時から共にしてきたロゴに勝てるのか?」弊社、株式会社NASUにとっては大きな挑戦だと思った。

新しいロゴとWith Midwifeのみなさん

みんなでロゴを作りたい

今回、代表の岸畑さんから「スタッフみんなで作りたい」というとても素敵な打診がありました。最初は以前のロゴを変えることに対する反発防止(ウソップのような)なのかな?と思ったけど違った。みんな割と新しいロゴに前向きだったのは正直すごいなと思った。この取り組みの真意は創業2年目、今までの自分たちを見つめ直し、自分たちが未来にどう舵を切っていくのか?それを言語化する行為なんですよね。航海していくためのコンパスを形にしていくのが今回のミッション。

ぼくにとってもリベンジであった。

実はぼくがまだフリーランスの時に、別のクライアントさんの案件で30人くらいで「ロゴをみんなで作る」というのをやったことがあります。残念ながらやむをえない事情でプロジェクト自体がなくなってしまいました。だからぼくにとってもリベンジという気持ちがありました。


ヒアリングとコンセプトワークが命


芸能人は歯が命。デザイナーは情報が命。

専門性が高い職業のクライアントさんの場合は特にヒアリングをじっくり行いたい。その業界のことが当たり前化していたり、外から見えていることとギャップが大きいことが多いからだ。だから今回の「みんなで作る」という取り組みは、われわれNASUにとってヒアリングがしっかりできて、ありがたい話でした。

代表の岸畑さん、With Midwifeのみなさんに納得してもらえるデザインにするにはWith Midwifeさんに所属している、いやそれ以上に入り込まないといけない。

今回のデザインは勝てるのか?

勝てるタネを探していきます。

今ある弊害から、見えてきたキーワード

With Midwifeのミッションである「助産師の再定義」を進める上で、弊害がある。助産師の一般的なイメージは出産の時に赤ちゃんを取り上げること。だからなのか、企業や社会と接点が感じにくい、企業ではなく慈善団体、ボランテイアチームに見えてしまうことだった。今、With Midwifeに必要なことは「企業らしさ」だ。助産師という部分的な認識、社会との大きなギャップ。「助産師の会社である」ということを直感的に伝わることが勝てるデザインだと理解した。

よくよく考えたら「助産師の会社」というのがすでに社会ではインパクトがあり、株式会社With Midwifeでやっているプロジェクトをそのまま伝えていけばいい。直球勝負だ。

そして、助産師の人数を増やすことが社会必要の証明になる。

どん!

ルフィのようにこう宣言したい。

プレゼン用に弊社の小野くんに作ってもらったイラスト

思い返すと、古い記憶には助産師さんがいた。

ぼくは男4人兄弟の次男。母親に連れられて助産師さんのところに通っていた。たらいで生まれたての弟がお風呂に入れられてたり、おむつの肌ただれ用のクリームをもらってたり、そんな光景を覚えている。ぼくは3歳だったので映像でしか記憶がないが、With Midwife代表の岸畑さんから話を聞いて助産師の認知がアップデートした今だからわかる。子育ての相談もしていたんだと思う。

ぼくです。かわいいがすぎます。

そういう助産師さんが身近にいなくなってしまった現代。今は病院でしか助産師さんとは関わらない。ぼくの子どもができた時もそうだった。出産し、退院したらそこからは母や義母に頼るしかない。ぼくの場合は頼れる人がいたからよかったけど、頼れない人はどうしているのだろうか。友だちや市が運営するコミュニティなんかな。

「W」のマークは「道」である

With Midwifeさんは現代には助産師が必要だと言っています。助産師のやってきたことは、もっと広いし欠かせないものだった。それを現代版にアップデートしていこうとしている。

その「道」を作っていく。「W」のマークは道なのです。

実はこの「道」というワードは、With Midwifeのかたからもらった解釈でした。それが提案できなかったのはデザイナーとしては非常にくやしいですが個人的な話で。よくあることです。いっしょに作るからこそ、よりいいロゴが生まれます。


ロゴデザインは子どもを産むことと似ている。

完成したロゴ


With Midwifeのみなさんとじっくり打ち合わせを重ね、助産師の価値や夢や思想への理解を深めていきました。そして、以前のロゴのDNAを継承し、より強い意志を持ったロゴが誕生しました。

みんなで作ったからこそ生まれたデザインです。

よりくわしいロゴの制作秘話は、また別途NASUメディアで公開されます。

話して、聞いて、考えて、作って、直して、また、話して、聞いて、考えて、作って、直して、作って、直して、作って、直して……。新しいWith Midwifeにふさわしいロゴにたどりつくことができました。

ぼくが好きな言葉にベートーベンが残した言葉「苦悩を突き抜け歓喜にいたれ」があります。With Midwifeさんと産みの苦しみを乗り越え、いっしょに産みの歓喜を味わうことができました。


これ以外のデザインはありえましょうか。


それくらいやりきりました。(特にNASUの久本さん、小野くん、ありがとう。おつかれさまでした。)


この新しいロゴが永くWith Midwifeのみなさんに寄り添い、機能していくことを確信しています。

あらためてWith Midwifeのみなさん、大切なロゴを全力でデザインさせていただける機会をいただき本当にありがとうございました。引き続き、次は勝てるWebサイトのデザインを一緒に作っていきましょう。何卒、よろしくおねがいします。

株式会社NASU 代表取締役/クリエイティブディレクター
前田高志


(宣伝)『勝てるデザイン』を出版してから、「勝てるデザインサービス」を始めました。今回メソッドを意識して実行しました。会社で大事なタネを発掘し育てます。形だけを作るのではなく思想・哲学を作った上で最適化したデザインにします。こうしてできたデザインはさまざまな側面のクリエイティブの精度を高めます。ご依頼・お問合せお待ちしていますね。

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