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#21 『イチローの流儀』

"「小さなことを重ねることがとんでもないところへ行く唯一つの道」"

本日は、元プロ野球選手・メジャーリーガー、イチローさんの流儀を料理評論家である山本益博さんのお話です。山本さんは野球ファンやスポーツジャーナリストと違う視点で、職人としてのイチローさんに迫り続けてきました。「イチローさんに学ぶ」という本も出版されています。


また、イチローさんの流儀に関する山本さんのお話として、この『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』の出版社である、致知出版社の記事にこんなのもありました。

「準備をするのは言い訳を最小限にするため」

 イチローさんを語る上で、もう一つ外せないのが「準備」に関する話だ。私は年に一度マリナーズのホームグラウンドまで足を運んで彼の姿を見に行っていた。最初は彼の守備位置であるライトがよく見える一塁側の観客席に座っていたのだが、ある時、ベンチの中で何をしているのかが気になり、三塁側の観客席から双眼鏡で覗いてみた。
 すると、味方の攻撃中ほとんどベンチにいないのである。守備を終えてベンチに戻ると、すぐロッカールームに降りていってしまう。次のイニングに備えてストレッチでもしているのかと想像していたものの、本人に確認すると実際はそうではなかった。ロッカールームにアンダーウェアを十数枚置いてあり、毎イニング着替えているというのだ。

「他の選手はやるんですか」
「いや、僕だけだと思います」
「どうしてやっているんですか」
「汗が冷えて次のイニングに体調が変わるといけないので、用心のために着替えています」

スポーツに留まらず、どの世界でも準備の大切さを語る人は多い。しかし、ここまでやるかというくらいに準備に準備を重ね、怠らず徹底している人はいないだろう。なぜ準備をするのか。彼の言葉が忘れられない。

「言い訳を最小限にするため」

 例えば、前の日にグローブの手入れを怠ったとする。翌日の試合にたまたま守備でミスをすれば、「昨日グローブの手入れをしなかったからだ」とつい言い訳をしてしまうのが人間の弱さだ。それを許さないのは、これもやはり情熱を燃やしているからだと感じる。


準備と言い訳をする人間の弱さの関係がよくわかる言葉です。弱さを許さないイチローさんの情熱はすごいものを感じます。しかし、イチローさんは目標についてはこのように考えています。

"「目標は高く持たないといけないんですけど、あまりにも高過ぎると挫折してしまう。だから、小さくとも自分で設定した目標を一つひとつクリアして満足する。それを積み重ねていけば、いつか夢のような境地に辿り着く。」"

あれだけの成績を残してきた方ですので、ものすごい高い意識で高い目標を持ってやり続けているのかと思いますが、高過ぎることは逆に挫折してしまうとおっしゃっています。そのため、目標を小さく分けてそれを一つずつクリアすることが、結果的に高い目標や到達点に達することができるという考え方です。

少し話はずれますが、私の好きな哲学者であるルネ・デカルトは、「困難は分割せよ」という考え方(「困難は分割せよ」という言葉自体は、正確には井上ひさしの作品に登場する台詞)を残しています。複雑な物事をシンプルなレベルにまで分けることで、物事にどのようにアプローチするかが明確になり、一つひとつ片付けていくことができるという点で、目標を小さくすることも同じアプローチなのだと思いました。

"いまの自分とかけ離れた目標ではなく、努力すれば手の届く小さな目標を設定し、その目標をやり切り、自分との約束を守る。そうして満足感や達成感を積み重ねていくことが大事。この積み重ねというのは、情熱を持ち続けていないとできないことだろう。"

この満足感と達成感を感じることは、行動を積み重ねていく上で大切な心持ちだと思います。どんなに目標を小さくしてそれをやり切ったとしても、ポジティブな感情を持てないのであれば、行動を継続することは難しいと思います。その点で、自分の行動とそれによる成果をきちんとポジティブに受け止める心の余裕もイチローさんの凄さなのだと思います。

そして、これまでの全20回のお話の中で、優れた人の仕事術における共通点であり最大公約数は「継続」と「情熱」であると気づきました。自分にしかできないことや自分が成し遂げたいこと、誰に何を言われても揺るがない「情熱」を持つこと。それを成し遂げるために小さなことを「継続」する努力と行動。

自分の進みたい道に進む。それは地道で、辛いことも失敗することも非難されることもある。それでも進むこと、やり続けること、やり切ることに意義がある。そう思って1日1日、小さなことを積み重ねていきたいと思います!


以下はイチローさんが残している名言の一部です。何度も読み直したい言葉たちばかりです。

"少しずつ前に進んでいるという感覚は、人間としてすごく大事。"
"特別なことをするために特別なことをするのではない、特別なことをするために普段どおりの当たり前のことをする。"
"苦しみを背負いながら、毎日小さなことを積み重ねて、記録を達成した。
苦しいけれど、同時にドキドキ、ワクワクしながら挑戦することが、勝負の世界の醍醐味だ。"
"憧れを持ちすぎて、自分の可能性を潰してしまう人はたくさんいます。自分の持っている能力を活かすことができれば、可能性は広がると思います。"
"結果が出ないとき、どういう自分でいられるか。決してあきらめない姿勢が何かを生み出すきっかけをつくる。"
"しっかりと準備もしていないのに、目標を語る資格はない。"
"自分の思ったことをやり続ける事に後悔はありません。それでもし失敗しても後悔は絶対に無いはずですから。"


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書籍『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』
2021/01/21 『イチローの流儀』
山本益博 料理評論家
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※Image by Gillian Callison from Pixabay