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#08 『バイアスの認識から行動を促す』

7/14(水) Thinking Design Lab(TDL)の第8回の定例会を開催しました。

TDLの定例会とは?

①事前にテーマや問い(※「思考」に関わることや「思考」を通じて見える化できること)を設定する
②「思考設計」(Thinking Design)のポイントである『対話』(Dialogue)と 『整理』(Organize)をしながらその場で『言語化』(Output)する
③その時間で言語化したアウトプットをnoteで発信・共有する
→この3つのプロセスは、「見えないものを見えるようにする」というLabのコンセプトに基づいた「思考実験」をする場であり、発信・共有することを通じて、ニーズやリアクションがあるものはプロジェクト化やプログラム化する。

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今回のテーマは、「バイアス(偏り)」についてです。先週の定例会では「ストレングス(強み)」について対話と整理をした中で、「何をもって強みとするのかに正解はない」という気づきが出た時に、この「バイアス」というキーワードが浮かんできました。

メディアでも取り上げられていますが、インターネットの普及から20年以上が経ち、その過程で「情報過多」という言葉がビジネスやライフスタイルなど様々なシーンで使われるようになりました。そして、情報過多の一つの要因であるSNSの普及は、マスメディアや企業が情報発信する時代から個人が発信する時代へと主流が移った現象と言えます。

その変化によって、情報を正しく捉えることや認知することが、昨今問われているのではないかと思います。それは自分の「バイアス(偏り)」を知ることであり、自分はどのような思考の偏りがあるのか、どのような情報に耳を傾けているのかといったことを理解する力が必要になっているのだと思います。

※以下の本は認知バイアスを、「論理学的」「認知科学的」「社会心理学的」の3つのアプローチで体系化されていて、おすすめの本です。


●自分は「真ん中」なのか?

私たちのLabでは「対話」を軸にした取り組みをしているので、自分と相手というのが常に存在します。その前提で「バイアス」を考えた時に、「自分は真ん中なのか?」という問いが出てきました。

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自分という視点で相手を見る時に、自分と相手の立ち位置を上の画像のように捉えるのではないかと思います。自分を何かしらの項目(性格、価値観、強み、特性など)を基準にして、両端に相手を配置する。人によっては自分が両端だという人もいると思いますが、どちらにせよ自分と異なる位置に相手を配置します。

ここで押さえるポイントは、自分と相手を比較して位置を配置すること自体は、その人の考え方なので基本的に自由です。しかし、「自分が相手より良い、正しい」といった基準で物事を判断することや、その判断が行き過ぎることによって差別や相手を見下すような行動には問題があるということです。

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自分の考えや見方が正しいわけでも、相手の考えや見方が正しいわけでもありません。そのため、自分を中心、もしくはトップ(相手を見下す見方)として相手を「位置」で捉える考え方や、自分だけの基準で物事を判断する考え方は、「思考設計」するプロセスには不要であると考えています。

その代わり、自分と相手を「位置」ではなく、「円」で捉える考え方が私たちは大切だと思っています。その円(=枠組み)にいる自分と相手には順位も序列も存在しません。それぞれが独立していて、個性や特性がきちんと尊重されていることが重要です。そのような世界観で捉えることができれば、自分のバイアスを認識する、偏りを理解する一歩になるのだと考えています。

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自分と相手を円で捉えるという見方にもう一つ、自分自身を円で捉えるという見方を持っておくといいのではないかと思います。「メタ認知」という言葉がありますが、メタは「高次」という意味があり、「もう一人の自分」とも言えます。つまり、自分という存在は一人ではなく、また、自分の特性は一つではなく、複数あると捉える思考です。

前回のテーマ「ストレングス」もそうですが、ある診断ツールではAという強みが出たとしても、別のツールではBという強みが出る場合もある。ポイントは、AもBという結果は多様にある結果の一つの視点や見方でしかないという認識です。前回の対話の中で出てきた「強みは弱みにもなりえる」のも別の視点や見方でみればそのように捉えることができるのです。


●答えがあるものとないもの

円の枠組みで物事を考えると、良い悪い、正しい正しくないで判断する必要が基本的にはなくなると私たちは考えています。その理由として、「人工」を対象としているからではないかと私たちは考えています。ここでいう人工とは、「人が何かしら加工している、もしくは関わっている」=「人のバイアスによってつくられている」ものであるということです。

人のバイアス、言い換えるならば「主観」によってつくられている以上、そこに良い悪い、正しい正しくないといった客観的な正解は存在しないのではないかと思います。その代わり、そのつくられたものをどのように見るかという「捉え方」が存在します。

今回の定例会では、「捉え方」をどのようにつくるか、認識するか、変化させるかが「思考設計」する上では大切であるという結論に至りました。また、「捉え方」をつくるというプロセスにおいて、「理論」「法則」「条件」「前提」「ルール」をつくることが重要なアプローチなのではないかという結論に至りました。

今後のLab活動で、この「捉え方」をつくるプロセスはより掘り下げていきたいと思います。現時点で一つ言えることは、正しいか正しくないがはっきりしない、正解がない人工の世界において、「理論」「法則」「条件」「前提」「ルール」といった枠組みを定義して、その範囲の中で正解・不正解を出していくことはできるということです。ただし、それが絶対的な正解ではないということも含めて。

●第3の選択肢をつくる

ここ数回の定例会で、「思考と行動の両輪」というキーワードが何度か出てきているのですが、思考と行動を両輪させる(=自分の頭で考え、自分で判断し、自分の意志で行動する)ためには、「バイアス」の認識は不可欠な要素であると考えています。

バイアスを認識することを突き詰めると、「白か黒かという2択の世界」から「第3の選択肢」をつくることなのではないか?と今回の定例会で発見することができました。さらに、思考法の一つである「ロジカルシンキング」は、物事を論理的に考える力で答えを導く力である一方で、物事を批判的に考え疑う力である「クリティカルシンキング」が第3の選択肢をつくる思考法として有効なのではないかと思いました。

「1+1=?」の?の答えを出すロジカルシンキングではなく、「?+?=2」の?の要素(1+1だけではなく、2+0、3-1、4÷2など)を探すプロセスにおいて、考え疑うクリティカルシンキングがバイアスの認識から行動を促すためには必要になると思いました。

そして、その探求の先には、ビジネスにおける「イノベーション」につながるヒントがあるのではないかという発見があった第8回の定例会でした。

以上、Thinking Design Labの第8回の定例会レポートでした。
次回は「Labのホームページづくり」について考えていきます。お楽しみに。


■プロジェクトメンバー募集中

「見えないものを見えるようにする」というコンセプトをもとに活動する私たちのLabは、「対話」(Dialogue)を通じて、言語化や構造化して「整理」(Organize)をし、その体験や思考プロセスを体系化したプログラムを「設計」(Design)していく活動をしています。
 
プログラムは、新たな価値(=思考と行動の両方がアップデートされる仕組み)を提供することができる人の発明を目的に、ビジネス(事業)をつくるというよりは、「ジョブ」(課題解決/機会)をつくる方向を考えています。

思考実験する場をもっと多くの人と共有・共創していきたいと思っています。ぜひ興味関心のある方は、一緒に何か取り組みをしたり、イベントやプロジェクトを企画したりしたいので、お気軽にお声かけください。


サムネイル画像:Photo by Fakurian Design on Unsplashより