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3Mのイノベーションと企業文化について

はじめに

このnoteは、テレビ東京「カンブリア宮殿」という番組の2022年2月17日に放送された回のメモになります。仕事面において非常に学びの多い内容で、思わずメモを取り始めていたので、その内容を整理したものになります。タイトルにある「イノベーション」や「企業文化」もちろんのこと、「マネジメント」や「組織づくり」「新規事業」「商品開発」といったキーワードに関心がある方には刺さる内容なのではないかと思っています。(番組は無料であれば、2022年3月3日までTverで観ることができます。)

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番組メモ

今回の企業はポストイットや台所スポンジのスコッチブライトでお馴染みの「3M(スリーエム)」。

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その商品ラインナップは「文具・生活用品から宇宙ビジネスまで」と表現され、多種多様な製品は5万5000種類以上だそうです。

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会社名のスリーエムには「身の回り3メートル以内に3M製品がある」というコンセプトがあり、創業はなんと1902年の老舗企業で、本拠地はアメリカ・ミネソタ州。世界70カ国に展開する巨大企業です。

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そんな世界に展開する企業の日本法人「スリーエムジャパン」の現在の代表取締役社長は宮崎裕子さん。日米両国で弁護士資格を保有しており、スリーエムジャパンには2017年に入社し、法務担当役員を経て、2021年6月に社長に就任しました。

宮崎さんの上司であるアジア地域統括責任者によると、社長抜擢の理由は、宮崎さんは「常に人の話に耳を傾け、理解しようと最善を尽くす人」であり、「すでに成熟した日本法人のトップにはマネジメント能力だけではなく、チームが安心して仕事を進められるよう、サポートできる人物が適任」という考え方で抜擢されました。

放送内で宮崎さんは社内会議をする時は、テーマとは全く関係ない「雑談」から始めるそうで、社員の本音を言いやすくする雰囲気づくりや信頼関係づくりを大事にしてる方というのが伝わってきます。

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そんな119年も続く企業の独自文化として、「15%カルチャー」という勤務時間の15%をビジネスに役立つと考えることができれば、興味のある別の研究に充てることができるという文化があります。ちなみ、ポストイットもこの15%の研究から生まれたそうです。

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日本発で開発された商品では、「スコッチブライト すごい鏡磨き」という製品があるのですが、これは研磨材担当、不織布・スポンジ担当、生産技術担当など異なる部署の技術者がそれぞれ15%の時間で協力して出来上がった製品だそうです。

社員一人ひとりではなくチームとしても15%カルチャーが浸透している点は他の企業にはない文化なのではないかと思います。

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そのような「失敗を恐れない」「チャレンジする」という風土によって、イノベーションが生まれる理由が番組内で宮崎さんが話されていて、それが「不文律」。つまり、ルールがない、暗黙の了解事項ということです。

宮崎さんは「ルールにしてしまうと、それにとらわれて自由な発想ができなくなる」「イノベーションは失敗を恐れないカルチャーから生まれる」とおっしゃっていました。

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そしてもう一つ、イノベーションの秘訣として「51の技術基盤の組み合わせ」があります。様々な技術を開発し、一つひとつの技術を組み合わせて新しい製品を生み出すという考え方です。

もちろんそこにはたくさんの失敗があると思いますが、開発した時すぐに使えるものでないかもしれませんが、それを温存しておけば、また別の機会に使えるかもしれないということもあり得るわけです。

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そして、なぜ宮崎さんが法務担当から社長に抜擢されたのか。そこには「3Mらしい人事」の考え方があるとおっしゃっていました。

それは1つの素材、1つの技術をいろんな用途で活用する(例えば、不織布をスポンジで使う、マスクで使う)という考え方があるように、「私という人間・スキルを法務・知財で活用する、社長として活用する」という考え方で、人材も製品と一緒ということです。

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村上龍さんから「法務の資質と経営の資質の親和性」の問いに対しては、「事業を行うにあたって、物事を多角的に見て、第3者的な視点で見るということは法務としての技量と経営者としての技量は一緒であり、さらに物事を調整していく力も一緒である」とおっしゃっていました。

さらに、法務担当の時は「やってはいけないこと」や「法律で決まっていること」の枠組みばかりを考えていたそうですが、法務から社長に立場が変わり、「経営者は会社の枠組み自体をデザインする仕事である」と感じたそうです。

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感想・気づき

個人的に学びとなったのが2つありました。

1つ目は「ルール」は時と場合によって、さらにその粒度によって思考や行動を制限するものとなってしまうということ。スリーエム社の場合は、研究開発に15%カルチャーというものがありますが、「勤務時間の15%」と「ビジネスにつながる可能性があるもの」という2つ以外のルールは設けていないと思います。「ルールメイキング」という言葉もここ数年聞く機会が増えていたので、新たな視点が今回インプットできたのではないかと思います。

そして、2つ目は点と点と繋げることは同じ要素でなくてもできるということ。スリーエム社の場合は、51ある別々の技術を組み合わせて製品開発を行なっていたり、宮崎さんの言葉にもありましたが、製品開発の考え方を人材配置に応用したりと、点と点を繋げることを非常に武器としている企業で、だからこそ新たなアイデアや製品が生まれる、イノベーションが起きやすい企業なのだと思いました。

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