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503号室にお別れを

今でこそ仲良くしているが、わたしは両親と反りが合わなかった。小学生の高学年から家を出る20歳の時まで、顔を合わせるたびに喧嘩をして、世間話を二言、三言するたびに口論になっていた。

だから中学を卒業するとともに両親に言った。

「もう一人暮らししてもいい?」

だがその要望は受け入れられず高校を卒業しても、専門を卒業しても実家から出ることは許されなかった。実家を出てもいいと約束をした日付は成人式。そこまでは家にいるべきだ、と説得させられた。

そして約束どおり、成人式の次の日にわたしは家を出た。今思うとすごく素っ気ない、可愛げのない娘だなあ。成人式の次の日から、今日まで住んでいたのがこのワンルーム503号室だ。

初めて1人で契約して、家賃を稼いで、料理に挑戦して。最初はパスタの茹で方も目玉焼きの作り方も知らなかったのに、この503号室の狭いキッチンでハンバーグも餃子も煮物もカレーも、アップルパイもチョコケーキもなんだって作ってきた。

実家では自分の部屋がなかったから漫画や本を置いておく場所すらなかった。初めてニトリで自分の身長よりも高い本棚を買って、どんどん漫画で埋まっていく様子を見るのが好きだった。
ベッドより冷蔵庫より洗濯機より、真っ先に本棚を買いに行って友達にもすごく笑われたんだよね。


友達に笑われたと言えば、部屋に人工芝を敷き詰めたこと。憧れの人がやっていて、一人暮らししたら人工芝の部屋に住むのが目標だった。自転車で人工芝を運んで部屋に敷いてみたら裸足で歩けないくらい痛くて。靴下が引っかかって。
馬鹿にされながらも人工芝とは半年くらい生活を共にしたなあ。

ペットショップで今のわたしの相棒・らくちゃんに出会って、途中から1人と1匹のシェアハウスにも姿を変えた503号室。こんなに狭い部屋なのに、ベッドの下に隠れたり、開けっぱなしにしていたお風呂に入ったり、ワンルームの中で隠れんぼをしてよく遊んだなあ。

思いつきで書道をしていたら墨をぶちまけて真っ黒になってしまった絨毯や、気持ちが落ち込むと決まって座り込んでしまう部屋の隅っこの居心地の良さや、ただいま〜って帰ってくると徐々に電気が明るくなるあの感じ。

念願の一人暮らしだっただけあって、思い出が詰まりすぎていて、考えれば考えるほど離れたくないなあって思ってしまう。


明後日の28日からようやく同棲がスタートする。そして今夜この部屋で寝て、明日荷物の運び出し、明後日には引き渡しだ。

賃貸のワンルームのこの部屋は実家でもなんでもないから、明後日引き渡したらもう二度と戻ってくることがないんだって思ったらこみ上げてくるものがある。幼い頃から念願だった自分の部屋を持ち、好きなように過ごした503号室ともお別れだ。

503号室、2年半、本当にお世話になりました。


読み手の方をはるか遠くに置いて行っている自覚があります。。。同棲で嬉しいはずなのに、マタニティブルーみたいな、マリッジブルーみたいな気分になっているのは、このワンルームと離れたくないかららしいです。気持ちの整理のために書かせていただきました、明日からちゃんと書きます。。

では今日はこの辺で。
皆さん、良い夜をお過ごしください。

彅野アン

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