見出し画像

コロナ後の社会とファッションを歴史から考える⑴ 〜第2次世界大戦とその後から〜

変わりゆく世界に対して、大好きなファッションから考察し、未来へのヒントを模索します。歴史、社会、ブランド、自分…などのこれからの有り方を探る試みの第1回です。


■なぜ今、歴史から学ぶのか? 

元々昨年、ヨーロッパ4カ国6都市を、蚤の市や古着屋を巡って旅をしてからファッションの歴史について興味が湧いていて、この期間に学びを深めると同時にファッションを中心にコロナ後の世界について考えていました。

ネットを中心に調べても「ECの強化が必要」「サステナブルが加速するだろう」ばかり。そんなことは誰にでもわかっていて。どう未来を描いていくのかについて、ポジティブでわくわくすることがありませんでした。

そんな中で、「歴史から学ぶ」ことで未来をポジティブに描くことができるのではと考えました。

■どんなことを考えていたか? 

ファッションの歴史から「今に生かせる」と感じたことは大きく2つ。「1940〜50年代の日本、第2次世界大戦とその後」と「1950〜70年頃 アメリカのヒッピーカルチャー」なので、まずは前者にフォーカスしたお話しをしたいと思います。


〜第2次世界大戦時代とその後について〜

■なぜその時代か?

まず、今回の新型コロナのパンデミックを「戦争」と例えた人たちがいましたが、個人的にはそうは思わないです。戦争は人と人が殺し合うこと。新型コロナウィルスはそうではなく、分断のない闘い方があるはずだと思う。ということを最初に伝えておきたいです。

一方で「非常事態」という同様に感じる部分もあります。で、多くの方が指摘しているように戦時中との類似点も感じます。

■具体的な類似点は?

国防婦人会=自粛警察

国民服=アベノマスク、ユニクロ(については後に詳しく触れます。)

国家総動員法(国民徴用令)=自粛要請による経済活動の自由の奪取

ネガティブなことが多いですが、そんな歴史から未来を見据えることができないかと考えました。

本からの引用を含みますが(※1)、「難局」「時局」など非常事態となると私的事情は二の次になり「みんなが一丸となって同じ目的に向かうべきだ」と動き出します。大戦時、日本は国民服を制定し、「贅沢は敵」「欲しがりません、勝つまでは」などの有名なキャッチフレーズとともに、同じ服装になることで参加意識を促し「平等」(特に労働力としての女性)と扱われたことが戦後の「一億総中流社会」につながり高度成長期へと入っていきました。

ファッションの視点でいうと「衣服のあり方から生活のあり方を管理する」という手法です。

そのことを重ねてみると、「一億総中流社会」を目指すかは別として、「自粛すべきだ」「マスクすべきだ」と良くも悪くも平等、フラットになったこの後に新しい世界が再構築できるタイミングである気はします。

ただ、当時と大きく違うところは、現状はお金持ちが守られている社会であるというところです。なので、よく言われるポスト資本主義の必要条件、「富の再分配」はないと思っています。

■新しい価値観について、再構築のために必要なことは?

具体的なアクションまでは落とし込めていませんが、前提として、各自がお金にとらわれない新しい価値観を創造することが必要だと思います。つまり、「同じ社会に戻さない」という強い意志です。

■その作り方について、どんなことができると思うか? 

ファッションで例えると、先ほどの「国民服=ユニクロ」 という意味からの説明になりますが、ネットでもこの文言でヒットするくらいそのように考えている人が多いようです。もちろん僕の伝えたいことと違った意味も含めてですが。

そして今、行動範囲の制限で華美に着飾る必要がなく、実用主義なモノ選びになる。また、自粛ムードの中での「嫌味のなさ」「贅沢はしていません」というひとつの表現、「妬み、嫉み」対策になること、そんな理由からユニクロが国民服となり得る。

実際に以前、ある大企業でお話しさせていただいた時に、まさにその意味で「ユニクロが大好き」とおっしゃっていた女性社員がいました。また、海外の話ですが顕著な例として、このコロナ騒動で「アジア人が派手な格好で外を歩くと目をつけられるので、スエットにサンダル姿で出掛ける。今までプロテクションの機能を持っていなかったスエットが、他者から傷つけられないための防御服として着用される」というNY在住の日本人デザイナーもいました(※3)。
そして、営業再開された地元のファッションビルに出かけた際、服屋で行列ができていたのはユニクロだけでした。

このようなことを言い換えると現状の日本では「国民服=ユニクロ=大きな体制」といえるのではないかと思います。
これを先ほどの「衣服のあり方から生活のあり方を管理する」ということから考えると、いかにユニクロと「違うステージ」ではなく、「同じステージ」で戦える服であるかが「生活のあり方」自体を変えていくことができる服、ファッションの可能性を感じる服と言えます。
ユニクロではない「それ」を選ぶ理由のある服づくりです。

しかし、大企業も政治でもそうですが「大きな体制」に正々堂々と、正面から挑んだら簡単に潰されてしまいます。つまり、「大きな体制」の中で受け入れられつつ、異質である(新しい価値観)体制を創ることが重要だと思います。

■具体的な例はあるか?

主観が入りますが、ユニクロと戦えるという意味では、山下陽光さんというデザイナーさんが手がける「途中でやめる」というファッションブランドはヒントになります。

簡単に説明すると、山下さんは「服を作ることは苦ではない」とのことで「リメイクなのにめっちゃ安い」というコンセプトで作っています。自分的に苦労だと思わない仕事をして、儲かりはしないけれど、たくさん売れて嬉しい!幸せ!といった感じです(※2)。デザインや少量生産、デザイナーさんの思想という付加価値を含めると、もちろん個人の好みや質、量などの違いはありますが、価格面でも充分ユニクロと戦えます。

もう一つはファッションブランドではないのですが、「ボーダーレスジャパン」が浮かびます。「ソーシャルビジネスを広げることを目的に儲ける」ことをしています。儲けたお金でまた新たなソーシャルビジネスのグループ会社をどんどん立ち上げていくというやり方。多くの社会的企業も同じ目標を掲げていますが、おもしろいなと思う部分は社長が「お給料は通常社員の7倍まで」と公言しているところです。儲けが目的でないことをそのようなかたちで率先して明らかにしていることで、資本主義という大きな体制とは違います、という意思表示を感じますし、共感する若者がたくさん増えています。

このグループ会社にもサステナブル(持続可能な)、エシカル(倫理的な)に特化したブランドを世界から集めた服のセレクトショップ「Enter the E」(※4)がありますが、それぞれのブランド力、認知度がそこまでない段階では、価格、質などの面でユニクロと比較しても選ばれる、という壁はやはり無視できないでしょう。
個人的に、「サステナブル、エシカルという付加価値」にプラスして「デザイナーズ」「セレクトショップ」というかたちで、どこまで国民服ユニクロやブランド力、デザイン力のあるデザイナーズブランドという二極を越えて、環境意識の高い方々以外の一般層に広がっていくのかを見定めていきたいです。

■では、向かうべき未来の姿、今できることとこれからの姿は? 

2つの例からも言えるように、経済で言えば小さくて新しい経済圏の確立、簡単な言葉でいうと現在の体制にポジティブな意味で「寄生すること」「バグになること」です。

また、そのためにテクノロジーの活用は大なり小なり欠かせないものになっていきそうです。
小さなことだと、先ほどの山下さんは著書の中で「好きなことをするためにバイトをするけれど、結果たくさんの時間をバイトに費やしていて好きなことはできない。その現状をメルカリで自分の持っているものを売って打破しよう」といった趣旨で、スマートフォンを「バイトやめる装置」と捉えています(※2)。
大きな話だと、課題はたくさんあるようですが、仮想通貨やポイント性などで独自の経済圏をデジタルコミューンで作って世の中の体制とは必要最低限でつながっていく、ということもできるかもしれません。

■最後に、まとめを。

資本主義社会におけるビジネス、という舞台で起きた問題を、同じビジネスを手段に解決するために「ソーシャルビジネス」というかたちが出現し、認識されつつあります。しかし、資本主義自体を再考する時期が来ているので、そのあり方自体をアップデートする必要がありそうです。

「100のお金儲け」と「60のお金儲けと40の幸福感や満足度」が同等の価値であると「言い切れる」価値観です。繰り返しますが「言い切れる」ということが重要なポイントです。

例えば、「半農半X」(※5)の考え方など、すでに世に提示されている具体案もありますが、できることや個人的嗜好など、人の幸せは千差万別なので、たくさんの方法があってそれらが支え合うコミュニティのかたちなどを見越して、「儲けない勇気、儲けなくても安心して暮らせる人生設計」ができる世界をみんなで創ることができれば・・と思うので、自分としてはそれをファッションを通じて考え、実践することにチャレンジしていきたいです。

(2)へ続く。


※ 1 柏木 博 著 「ファッションの20世紀」


※ 2 山下陽光 著 「バイトやめる学校」


※ 3 2020/6/20 WWD JAPAN


※ 4   Enter the E


※ 5 半農半Xという生き方【決定版】塩見 尚紀 著



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?