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コミュニティのこわれ

パパさんが死んで、ちょっとの時間が経った。

子供さんたちは夜早く寝ても、長時間睡眠をくりかえし、おねえちゃんはとくに、通算40日近く中学を休んだ。弟君はさほど休まなかった。

大量に残って、始末に困ったのは、パパさんに処方された外用薬内服薬およびインスリン注射器セットと消毒綿の山。(一般的には、インスリン注射器セットは、かかりつけ医療機関でごみ出しを頼むのがいちばん手っ取り早いらしい)消毒綿は、転職後の職場で母親介護をしてる同僚がお金を出して買ってたそうで、その人に引き取ってもらえた。あと、体サイズと衰えに従い、複数タイプを買わなきゃいけなかった紙おむつ類。むくみがひどかったときLLパンツタイプ、そこからMサイズまでの幅で、テープタイプも。特にテープタイプはサイズがあわないと漏れるので、ひんぱんにサイズ変更の指示をされた。これは一部分死亡退院した病院のナースステーションに寄付してきたけど、もう交通費と時間を犠牲にしてまで届けにいく気力はない。

寝巻のレンタルと紙おむつの買いなおしと、感染症を防ぐペットボトル等密封飲料と交通費、僕が仕事で料理間に合わないときの子供さんたちへの食糧なんかで、またたく間に貯金はどっか行った。誰だよまったく、僕らの生活費きれいに持ってった奴らは。医療とケア周辺って、専門家づらして出費指示してくるところが強制執行できていいよね。「こっちも大変なんです」って本当だから言えるし。

そっちに金まきあげられている僕らも大変なんですけど、僕らはどこから金捻出すればいいんですかね。年金事務所は1か月予約待ちの挙句に指示した書類が間違ってたからってまた2週間先の予約にしやがったし。児童扶養手当等の区役所担当係はすまなそうな笑顔で、年金事務所のほうで結論が出た翌月ですねーとか言うし。つなぎ資金に福祉貸付とかつかっちゃったら、また手続きの手続きで、僕、仕事して休む時間が破綻するわけでしょ?

昨日ニュースで、市営住宅の自治会での係除外に関する「例外は認めない」トラブルから、事情を抱える人を自殺に至らしめたケースを報道していた。ほぼ、わがことのように身近なできごとだった。

昨年の某中学校PTA。某役員からの電話。

「もうひとりの副部長が転校していってしまって、いま高橋さんが副部長をできないとおっしゃると、最初から決めなおしで炎上してしまうんですよ」

だから、パパさんが白血病で入院していて、こちらはただの親戚ですから。

「手伝いますから受けてくださいませんか」

で、先般のやっとの引継ぎ(そう、例年、年度越え5月引継ぎという任期を慣例化させていたここは、今回は、7月後半に引継ぎをした)の最後の名簿作成のときに

「それはそちらの仕事でしょう」

あれ?「引き受けてください」のとき「手伝いますから」までの電話を録音しておけなかった僕が悪いですかね?
「大胆に引っ越さない限り、弟君も同じ中学だよな」、という前提があって、穏便にこちらが引いたら、そういうことになるんですかね。

PTAの横暴って、いったいどこに訴えれば改善されるんですかね?協議会?

某パパさんの所属する自治会。赤い羽根募金をやってて、生活保護世帯に一万円応援してあげてる。パパさんちはひとり親で準保護水準なのに、お金出してあげる側。自治会では訃報も出なかったし、お金も来なかった。自治会費を払う側、そして今、順番で回ってくる組長で集金係の僕。なにこのタイミング。

県営住宅当たったら、年度途中でこの自治会出ることになるから、僕また「年度途中に申し訳ありません」ってぺこぺこ頭下げる役回りですかね。パパさんがここへ引っ越してきてから払い続けてた年間自治会費等、数年間の合計額でも、たったの一万五千円弱ていどではあるんですけれど、「すいません看取りで家が子供たち二人だけになるので、ちょっとときどき、気を付けてやってくれませんか」と僕が病院から電話でアパートのななめ向かいの一戸建ての厚生部長にお願いしたら、僕が留守にしてる日付誤認してて、一度だって見に来てくれませんでしたよね?
こっちは自治してあげてたみたいですけど、回覧板もらう以外にこっちが自治してもらったことって、一回ぐらいありますかね?お姉ちゃんと弟君が夏祭りで楽しませてもらったぐらいですかね?

ーーー家族システムが壊れるとき、しわ寄せと攻撃は弱いものに向かう。
地域や学校のコミュニティが壊れるとき、ひずみのがけっぷちから、僕らはおしくらまんじゅうのように落とされる。

水曜、手帳に「つかれたつかれたつかれたつかれたつかれたつかれた」と無言で書いてみて、僕はちょっとだけガス抜きができた。

原稿がものすごい字数、ものすごい勢いで投稿されてるとき、読んでる側は「あ、順調に作品発表してるんですね」とうらやましくさえ思うんだろうな。ほほえましくさえ思うんだろうな。

背負い水と同じで、死ぬまでにこれだけはどうしてもやっておかなきゃと思うことを、古本買取の段ボール箱の山の中で、たたんでない洗濯物の中で、燃えるゴミ袋8袋と紙ごみ4袋と資源プラスチック袋2袋と同居してる中で、洗ってない皿を放置したまま原稿書いてるって、ここでバラしておかないと誰も想像しないから。

三十六歳すぎて生きていられる気がしない。だから死んでる暇のない自分で、今回だけは、「ちょびっと」、助かったなと思います。ただの親戚なのに、手伝いにきて、こんなことあんなことで追い詰められて死んだら、あまりにもばかばかしいしな。

小学生のうちに父親も母親も病死しちゃった子供さんたちに、僕はうっかり八つ当たりしたくない。それだけかな。

さあ、今日も、はらわたからつかみだした「白鳥の歌」いってみような!

「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!