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子の刻参上!

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子年なので鼠小僧のお話を楽しんで頂ければ。
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記事一覧

子の刻参上! 一.あけがらす

(一) その夜は、賭場に来てはみたものの意気もあがらない。 丁の目のときに半に賭け、半の…

高橋照美
4年前
12

子の刻参上! 一.あけがらす(二)

狐が、そっ、と裏木戸から入り込み、手招きした。次郎吉は木戸のすきまをするりと入り、後ろ手…

高橋照美
4年前
13

子の刻参上! 一.あけがらす(三)

頭巾の武家装束は重かった。半纏、腹巻・股引という軽々とした装束が、どれほど普段の身ごなし…

高橋照美
4年前
13

子の刻参上! 一.あけがらす(四)

狐に「ひとくさい」、 つまりは人間らしい、と言われて、次郎吉はうろたえた。 「気持ちのつ…

高橋照美
4年前
8

子の刻参上! 一.あけがらす(五)

大番屋がほど近くなった時、次郎吉は 「変だぜ」 と、狐に向かって小声を発した。 ざわついて…

高橋照美
4年前
8

子の刻参上! 一.あけがらす(六)

堤が決壊して濁流が出るように、留め置かれていた人々がこけつまろびつ出ていく。周りのものた…

高橋照美
4年前
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子の刻参上! 一.あけがらす(七)

「青木さま、と、呼んでほしい名を、ちゃあんと、呼んでくれたなぁ」 狐は、くくく、と心地よげに、しかしひっそり笑った。 「若様と落ちあえたなら、わけを尋ねてみるとよかろう。やつがれ(わたくし)はただいま、若様の下知に従うものにて候。しこうして、若様より、『 鼠の問うこと、ことごとくに答えてやるように』とのお指図は、頂いておらぬでの」 「そういうもんかい……」 「鼠も、大工仕事のおりには、棟梁が仰せに従わねば、棟上げがならぬだろう」 「あ、あ」 鼠小僧次郎吉、失敗(しく

子の刻参上! 一.あけがらす(八)

「そうか」 狐は次郎吉の反省顔を特にどうこう言うでもなく、ただ、うなずいた。 「熊公に会う…

高橋照美
4年前
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子の刻参上! 一.あけがらす(九)

「湯治宿で養生させてもらえるそうだから、逗留の間はおとなしくしてんだぞ。誰にも、この話、…

高橋照美
4年前
7

子の刻参上! 一.あけがらす(十)

「いちどにひとつの動作だけをしつくす、と決めてかからなければ、刀も大工仕事も、上手の石段…

高橋照美
4年前
7

子の刻参上! 一.あけがらす(十一)

「お戻りなされませよ」 軽衫袴姿に着替えた狐がささと歩いてきて、益田に一礼し、そう言った…

高橋照美
4年前
7

子の刻参上! 一.あけがらす(十二)

「鈴木さま、といやぁ……」 寝転んで箱枕をかい込んだままの次郎吉は、幼いころ中村座でその…

高橋照美
4年前
11

子の刻参上! 一.あけがらす(十三)

魚屋の朝はひどく早い、むしろ夜のおわりがただ。 「ああ、刻限だ。話は途中だが、いちどお休…

高橋照美
4年前
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子の刻参上! 一.あけがらす(十四)

瓦版だの芝居だので日本駄右衛門がもてはやされているが、衆を頼むのが大の苦手な次郎吉は、あの盗賊集団があまり好きではなかった。 大名屋敷を仕事場にする、という部分は同じだ。 お武家屋敷は、お上にはばかって、さほどの武力を持てない。謀反を疑われないよう、非常に手薄なのだ。しかも、盗みに入られたとあっては「不行届(ふゆきとどき)」のお叱りを受け、取り潰しや国替えの候補として目をつけられてしまう。したがって、やられても、表に出せない。 その意味で、お武家屋敷から金品をくすねる、