マガジンのカバー画像

お父さんが白血病になりました。〜ある家族看護の記録

143
13歳と10歳の子どもたちを残して、お父さんが急性骨髄性白血病で入院しました。親族の僕が、家族看護に入っての記録集。
運営しているクリエイター

#家族

保護者という名前がつくのは急に突きつけられると怖いこと

保護者という名前がつくのは急に突きつけられると怖いこと

ついにきた。

2019年まるごとと2020年の5月まで、僕は実質、子どもさん二人を保護して扶養していたと言っていい。
よくよく冷静に振り返ってみると、僕はパパさんの住居に越して来て、健康であった時のパパさんの責務を肩代わりし、最後は僕の給料も入退院のパパさんの扶養に供していた……

結果的に、僕は三人の親族の養い手として、もがいた事になる。

パパさんの死亡届を葬儀屋さんが区役所に出しに行ってく

もっとみる
「男親ってそんなもんかもな」で問題をずらしてみようか。

「男親ってそんなもんかもな」で問題をずらしてみようか。

たまたまパパさんは、半年ぐらいの時間があって→「成功率38%ぐらい」の賭けに応じた→1回生着して→1年弱の時間があって→結局死んだ

という経過をたどった。

がん、という病気はその人の本質をあぶりだす、とよく言われる。
「怖いから」という理由で主治医説明にも付き添ってくれない冷たい夫とか、「これがいいと言われたから」と次々エビデンスもない無責任な民間療法を押しつけてくるおせっかいな外野に完全同調

もっとみる
課題は後日配達

課題は後日配達

お姉ちゃんの中学校、先週、課題配布日があったのだが。
その日、お姉ちゃんと弟くんは、パパさんの病室に詰めていた。

学校に僕が電話をかけたら、
「他にも来れない生徒がいます。後日取りに来るか、または先生が手分けして届けます。どちらがいいですか?」

と、親切に選択肢を出してくれた。

僕は、子供さんたちのケアが十分にできない分
たくさんの大人が関わってくれることに、とても感謝したい。

勉強が遅れ

もっとみる
折り鶴の頭

折り鶴の頭

特別の面会日に、お姉ちゃんと弟くんがノートの切れ端で折り紙を折って置いていった。

折り鶴を、頭を折らずに仕上げたお姉ちゃん。
国語の教科書の、重松清か誰かの小説に、
「折り鶴の頭折っちゃうと、容態が下がるから、千羽鶴の頭は、しっぽと同じようにピン!と立てておく」というくだりがあったのだそう。

お姉ちゃんも弟くんも、通知表にあひるさんやたぬきさんが並ぶ子たちだけれど、税金で将来ある子供たちに教科

もっとみる
三泊目。

三泊目。

パパさんの病室に泊まり込み、三泊目。
お姉ちゃんと弟くんは、準保護(就学支援)でスマホも持ってなかった。推しキャラのいるソシャゲに、友スマホ経由ですっかりハマりおったのと、クラス・部のLINEに入ってなくても「見ませんがなにか?」なお姉ちゃんなので、僕も「僕が金出すとしても、中3、かつ、推しがいたって利用時間1日一時間以内の管理できる人になってからな!」と言ってたのだ。

指紋認証がむくみで効かな

もっとみる
ほんとの勉強

ほんとの勉強

こどもと同居しているおとなは、今おきていることを、どんなふうに子供さんに説明しているんだろうか。

うちはたまたま、パパさんが入院する前は正月にお年玉をあげるくらいだった間柄だから、親戚のニーチャンである僕は、担任の先生と変わらない距離感のポジション。

なので、もっぱら説明したことは、

「なぜ学校を休みにして、人との接触を最低限にするべきなのか」を、現時点での彼らの科目とからめて。

「人対人

もっとみる
今は、寝食をなるべく定時に。

今は、寝食をなるべく定時に。

「寝食を忘れて」という言葉がある。
今は、免疫力を維持しておくために、それをやっちゃいけない。

春休み前から子供さんたちをあまり起こさないようにしていた。
人によって最適睡眠時間(または必要睡眠時間)の長さが違うだろうから、見当をつけてみたい、というのが、理由の一つ。
もう一つの理由は、「起こされて起きるんじゃ、”自分で計画したことを自分で完成までもっていくための微調整” に熟練していかないだろ

もっとみる
ラクなんです

ラクなんです

(写真は、弟君が小さいころの「台所・洗面所・トイレタオル配達」だそう。こいつ、幼稚園時代から家庭内労働を担ってたのか!笑)

4月6日に、「しばらく行きません」とパパさん入院中の病院の看護師さんに電話で話した。
4月7日、どうしても今日じゃなきゃ、あとがまずい書類の提出のために区役所から必要書類をもらってへとへとになった。

そのあと子供さんたちと家にいて、8日間。

ほかに会ったのは、生協のドラ

もっとみる
花冷え

花冷え

パパさんが3月半ばから再入院。通院から再入院に切り替わる回数をカウントしてないほど忙しい。
というわけで、「子の刻参上!」アップが止まってます、すいません。

療養記録として、骨髄移植後何ヶ月で何がおこった、みたいな事実関係をあげておいて、家族看護者・医療従事者・診断を受けたご本人、の参考に少しでも足しになると良いのだが、「逆算して誰がいつどこで提供したか」なんかが割り出せてしまう情報の公開は、骨

もっとみる
家庭科の宿題――夏休みの思い出から――

家庭科の宿題――夏休みの思い出から――

お盆頃の事だったな。

「茄子、買っていい?」

中2のお姉ちゃんが、僕に急に訊ねた。

「いいよ」

お姉ちゃんのごはん作り。
家庭科の宿題。
献立を立て、献立表に材料を書き、買い物と調理と食事をした感想を書いて提出。

なぜか、お姉ちゃんのつくるごはんは

「茶色い、盛りつけ好きそうに見えない、めんどくせー感そこはかとなく漂い気味」

…なのだ。

折り紙や彩色や木工品は緻密で華麗なものを作れ

もっとみる
自由研究ーー夏休みの思い出からーー

自由研究ーー夏休みの思い出からーー

今日は、弟くんの自由研究の記録を。

-----
記憶というのは、アウトプットして「記録」に変えておかないと、すぐに事実からねじ曲がって、はるか遠くへ行ってしまう。
そもそも、脳の記憶のしくみが「物語記憶」であって、事実を体感覚からインプットして、解釈や価値観やそれに伴う感情をつけて保存し、いくたびか咀嚼する中で付帯解釈・価値観・感情を塗り替えていく有機システムだからだ。

--芥川の『藪の中』は

もっとみる
診断書

診断書

生命保険会社からの書式を、病院の受付に提出した。

医師の診断書をもらうには、2週間ほどかかる。何度かの入退院は繰り返すことになるが、当座の入院費用の支払いに、まず今日までの期間の区切りを申告する予定だ。

白血病の治療には、ガンの中でほぼ最高額に近い費用がかかる。
確率論で貯蓄が吹っ飛ぶ体験は、ほんとに初めてだった。高額医療がどのように支えられているのか、初めて体験した。
できるから漠然とやって

もっとみる
6月になっていた

6月になっていた

1月15日に親族のパパさんが緊急入院して、もう半年。

核家族で、ひとり親で、親たちの介護が同時多発してる世帯って、なにかあったときに立て直すのが、本当に大変です。

今、パパさんの周辺では、パパさんの両親と義両親が全員、がんを抱えながら自宅療養か、腫瘍の手術のあとで施設入所と入退院のくりかえしが頻発する、などの状態になっていて…

もし、パパさんが一命をとりとめなかったら、

3年後の今頃は、ほ

もっとみる

お姉ちゃんと弟くんに、間違った英語を主張する。
(例えば「きゅうり」を「キュキュンバー」と言い張ってやる)
すると、面白いことになります。

「えー? キューカンバーだよ!」

ザンネンなものや、違ってるものが目の前に繰り広がると、
にんげん、手直ししたくなるくせがあるのかな^^