売上には限界があるという話(打率理論)

これまで、なんとなく仕事の広げ方とか考え方みたいな話を書いてきた気がするが、最近おれが重要だと思い始めていることに、売上というか収入にはどうも限界があるらしいという話がある。今日はそれについて、考えをまとめてみたいと思う。

問題意識の所在

脱サラして、ウン千万稼いでいます、みたいな話は、ウソかホントかはともかくとして、ない話ではない。以前におれが書いた、監査のバイト基準で言っても、月には20日ほど稼働できる日があるので、12百万ぐらいは、うまくやればなんとかならないことはない。また、それ以上の稼ぎをどうやって目指していくかについても書いたことがあるつもりだ。

そういうわけで、おれは努力とかを惜しまなければ、会計士であれば1人で20百万程度の売上を作ることは、能力・環境的に恵まれていないとかでない限り、非現実的な話ではないと考えている。

ただまあ、よくよく考えてみると、おれたちには給与所得控除とかいうイカしたものはなく、経費も言うほどかからないので、結構な勢いで税金が持っていかれるのがあって、売上20百万円のフリーランサーと、給料15百万円ぐらいのサラリーマンと、どっちが良いかという事に関してはやや評価が難しい面があると思う。決して売上だけで物事を考えてはいけないのは言うまでもない。

それは、また後に出てくるかもしれないからいったんおいておくとして、最近おれが問題だと思ってるのは、20百万円とか30百万円とか稼ぐやつが、だいたい死にそうな顔をして死ぬほど働いているとか、顔には出ないが、とにかく年がら年中仕事をしているとか、そういうところだ。

限界を突破する定番の方法について考えてみる

金額的にどこで限界が来るかは個人の能力が関係するので一概には言えないが、死にそうな感じがしてくるということは、それ以上、収入を増やすのは難しいということである。やらずぶったくりを繰り出せば、一時的に遊びながら大金をせしめることは不可能ではないようだが、だいたいそういうやつは長続きしないので、ロングランでビジネスを考えようというおれの考えとは少し違う。よって、それについては語らない。ペナントレースにおいて、今日は調子がいいとかそういうことは、あまり大したことではないのだ。ワールドシリーズとかは除くが。

個人の稼ぎに限界を感じたやつ(くどいようだが金額の多寡はおいておく)が、次に考えることは二つで、一つは「諦める」だが、だいたいの人間は売上を増やすとうれしい気持ちがするものなので、もう一つの選択肢について考え始める。それは、とても当たり前のことであるが、人を使うことである。

人を使うに際して、知っておくべき重要なことは、安くて有能な奴を使えると非常にもうかるのだが、そういうやつはすぐどっかに行ってしまうということだ。よって、おまえが劉備とかそういうのでない限り、長期的に考えると、おまえは値段相応以下のスタッフを雇うことになる。

おまえも知ってのとおり、世の中には仕事を持ってくるやつと持ってこないやつがおり、持ってくるだけのやつはそれはそれで問題であるが、他の諸条件が同じであれば、仕事を持ってくるやつのほうがエラいということについては特に問題がないだろう。よって、いかにスタッフに正当な対価を払おうとも、仕事をとってくるおまえにはいくらかの手残りがあるはずだ。

そうやって、組織をとことん大きくして行けば、自然とお前のふところに入るカネは増えるはずだ。理屈からするとそうなる。しかし、おれはこれは案外難しい事なのではないかと最近考え始めている。

なお、二つといったがそれはウソで、大体の人間が考える三つ目のやつは、投資で一山当てて、あとはカネに仕事をさせるというやつだ。ただおれの知る限り、気合をいれて投資をやっている奴は、稼ぎも良いが、ものすごく心身にダメージを負っていたりとかそういうのも多く、おれが重視する、健康に楽しくやるという価値観からすると、相当運に自信がない限り、おすすめとは言えない代物である。

なぜ、人を増やして儲けることを難しいと思うのか

おれは、そうやってひたすら人を増やしていくということについてよくよく考えてみた。そうなると、おまえのビジネスの最終形は、要するに、その辺の何千人とかが働いているような一部上場企業とか、BIG4の会計事務所みたいなものになる。うかつな奴は、ここでトーショーイチ部のファウンダーであれば、死ぬほどカネがふところに入ることになると思うだろう。それは、実際に事例があるので、あながち間違いではないとは思うが、一つ問題があって、おまえに本当にそのような才覚があるのであれば、おまえはとっくにビジネスを立ち上げており、死ぬほどもうかっているはずだし、そもそも公認会計士とかいう資格に頼ってメシを食おうとかそういう発想にもなってないはずだ、ということだ。

おれは、ペーペーの世話をする場合には必ずこの話をして、雑魚を戒めることにしていてしょっちゅうこれを言っているので、前に書いたかどうかはちょっと記憶が定かではないし、詳しい話をするつもりもあまりないのだが、結論だけ言うと、基本的に会計士になろうとか考える人間は凡庸なので、ジョブズみたいなめちゃくちゃスゴイことは、まず一生できないと考えてよい。そもそも、一代で巨大な上場企業を築き上げるということ自体が、結構まれなケースで、昔から初期投資が大きい産業なんかはザイバツ的な何かがやってきたのではないかとおれは思う。詳しくはないが。

要するに、おまえはサラリーマンとして相当成功したとしても、部長とか事業部長とかエグゼクティブになれるかどうか怪しいぐらいの能力しか持っていないので、当然賃金はそのあたりの水準となるだろう。そうなってくると、自ずから明らかであるとおれは思っているのだが、おまえが相当組織をでかくして、多くの人間の稼ぎの上前をはねたとしても、実はそれほど沢山の金額をもらえるわけではない。

しかも、東証一部の企業とかで部長とかのクラスになれるやつは、学歴とかも相当高く、基本的なスペックがそもそも高い。おれの経験ベースでは、やはり会計士業界では旧帝の連中というのは結構まれで、まあひどい言い草だが、少なくとも学力に関してはそれ以下のやつが大多数だ。おれは、一応学歴とかそういうことでヒトをどうこう言うべきではないということを理解している程度には大人だが、実際の話として、平均値というものを考えると、やはり公認会計士になるような人間は、グローバル企業とかの第一線で管理職をこなせる人間に比べると総じて能力は低い。もちろんおれも例外ではない。おれは逆立ちしても上場企業のエリートにはかなわないような能力しかもっていないのだ。よって、彼らの年収を超えるということは、うかつなおれたちが思っている以上に、非情に難しい事だとおれは言わざるを得ないと考えている。

おれがこういうもの言いをする場合に、一点だけ理解しておいてほしいことは、すべての場合に当てはまることについておれは語っているわけではなく、ボリュームゾーンというか、そうなる確率が一番高い集団についておれは話しているつもりだ。当然、確率の女神がほほ笑む人間というものは存在する。しかし、おれの基本的な考えは、それが自分に対して起こると想定することは、少々ウカツすぎるのではないか。そういうことだ。

ともかく、将来予測とかタラればの話には、結局確たる根拠がないのでなんとも言えないのはそうなのであるが、そうであれば、おれは確率論で物事を考えることが合理的だろうと考えている人間だ、ということを前提として理解してほしい。これをおれは比ゆ的に打率理論と名付けている。要するに、おれはセイバーメトリクスみたいなものの考え方が結構好きなのだ。セイバーメトリクスすらわからないやつに会計士が務まるとはおれは到底思わないが、知らないのであれば、取り敢えず、自分が大儲けできるとかいう妄想は速やかにガベージして、『マネーボール』をポチったほうが良いとだけは言っておく。

上場企業の部長クラスはどれぐらい稼いでいるのか

ここで突然ソースが怪しくなるが、おれがインターネットでクイックに調べた限りによると、一流企業の部長の年収は、だいたい18百万円から42百万円らしい。彼氏はいるの?現在の年収は?

その上を行くやつは、そういう連中を束ねる才覚を持っている特殊な層になってくるので、おれの打率理論で行くと、自分にそういうことができると考えるべきではない。

この数字はおれにとってなんとなく見知った数字であって、何かというと、監査法人の普通の代表社員とかがもらえる年収がちょうどこんなもんなんじゃないかとおれは感覚的に思っている。これは、考えてみると、しがない代表社員クラスでも、会計士を何十人か束ねて仕事をしているのは事実だが、そいつらが下っ端のウワマエをはねまくったとしてもその程度だという事実をある意味示しているとおれは考える。

おまえは、これから自分の組織を作っていくのである。それが大変うまくいったとしても、最終的には限界は50百万円とかというラインが見えており、これを超えたければ、BIG4のグローバルのエリア(大陸レベルのだ)を統括するパートナーとかになるしかない(完全に適当に言っている)。当然だが、そうなれるのは一握りの連中だけだ。

おまえは、アジアを手中に収めるファームを作れるか?おれはできないと思う。だから、おまえの年収は、結構うまくいっても数千万みたいなレベルに収まるだろう。これがおれの考えだ。

そんなに努力をするつもりがあるなら、そもそも医者とかになったほうがいい。

つまりどういうことか

稼ぎの限界は、大手企業・ファームの観察から知ることができる。一方おれは、おまえが20百万円程度に達することはそうそう無理な話ではないとも言った。

仮にお前が、15Mを超えて20Mとか稼いでいて、それを超えるような可能性が見えてくるとしたら、おれはその仕事は限界を超えているので断ったほうが良いのではないかと考えてみるべきだと思う。むしろ、その仕事を誰かにあげて人脈を強化することによって、仕事の情報が入ってきやすい環境を整えるとかそういうことに使ったほうが良い。フリーランスの宿命として、仕事の増減は必ずあるので、何かをロストしたときに、すぐ次が見つかるというのは重要なことだ。

仮にお前が、人を雇うことによって、自分の仕事として抱えていきたいと考えるのであれば、それも否定するわけではない。しかし、それによって、おまえ自身のふところに入るカネはさほど多くないだろう、ということだ。よって、人のマネジメントが死ぬほど楽しいタイプとかそういうのでない限り、しんどいわりにあんまり儲からない仕事だ、ということを知っておくべきだ。

そういうのに当てはまらないモノスゴイやつが、ここまでおれのくだらないテキストを読んできたのだとしたら、それは大いなる時間の無駄なので、さっさと自分の商売に戻るか、もっと価値ありげな情報商材めいた有料ノートを読んだりするべきだ。

要するに、人間が稼げる金額には能力によって限界があるし、世の中の能力が高いやつの稼ぎもわりと見えているところがあるので、どうにかこうにかそれを超えたいと思ったとしても、結果がそれほど伴うとはおれは思わない。そこに心血を注ぐぐらいであれば、他にもうちょっと楽しいことや考えるべきことがあるのではないかとおれは思う。

結果的には、無理なく稼げる金額、という水準が人生すなわちライフ全体にとって良いのではないかとおれは考えており、目の前にカネがぶらさがっているとなかなか難しいのではあるが、その水準を超えられるかも、と思った時に、ちょっとおれの話を思い出して考えてみて欲しいとおれは思っている。

そういったようなことだ。


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