見出し画像

【レビュー】『チアゴ・アウベス劇場開演』~第30節いわてグルージャ盛岡VSファジアーノ岡山~

2022 J2 第30節
8/7 18:00K.O. @いわぎんスタジアム
岩手(1-3)岡山
25分 チアゴ・アウベス
35分 ミッチェル・デューク
41分 奥山洋平
60分 チアゴ・アウベス

スタメン

マッチレポート

勝負を分けた個の力。
チアゴの2G1Aの活躍で岡山が勝利

個の力が勝負の分かれ目となった。

岡山は5月8日以来に揃って先発したミッチェル・デュークとチアゴ・アウベスが2トップを組む[4‐4‐2]でスタート。岩手は出場停止のモレラトに代わって最前線に入ったオタボーを含む先発4選手を変更すると、前節に敵地で首位の横浜を破った勢いそのままにゴールに向かった。8分、バイスのクリアを拾った弓削が強烈なミドルシュートを放つ。これは堀田が鋭い反応を見せて弾き出した。その後も積極的にミドルシュートを放つも枠を捉えられない。

岡山は思うように敵陣に入れなかったが、一瞬のスキを突く。25分、相手のクリアミスに反応したチアゴが倒されてPKを獲得。背番号7が左足を強振してネットを揺らした。先制した岡山は自陣でパスをつないで相手を揺さぶり、35分に追加点を奪う。右サイドから抜け出したチアゴが甲斐を振り切ってクロスを上げると、デュークがニアで合わせた。前がかりになった岩手を裏返し、2トップが力でリードを広げた。得点後、ベンチの前ではゆりかごパフォーマンスが行われ、堀田の第一子誕生をチームで祝福した。ホームで3連敗中の岩手は41分にカウンターから1点を返す。岡山のロングスローをクリアしたボールを中野がキープし、抜け出した奥山が堀田の股を抜くシュートを沈めた。

両チームが選手交代を行ってスタートした後半は岩手が攻勢を強める。途中出場のブレンネルが起点になり、オタボーが背後に抜け出すも、柳が立ちはだかった。背番号5は57分に石井のミドルシュートに体を投げ出して止めた。岡山は60分にまたしても一瞬のスキを突いたチアゴがバイスのフィードに抜け出して3点目を奪った。

突き放された岩手は61分にクリスティアーノ、中村充孝、ビスマルクを加えて圧力を出す。71分にはブレンネルがPA左角から右足を振り抜くも、シュートは堀田に弾かれて右ポストに当たった。後半だけで岩手のCKは8本、シュートは7本を数えたが、65分に濱田を投入して5バックで対抗した岡山を崩せなかった。

攻守両面で岡山は個の力を発揮したが、その中でもチアゴが強烈だった。背後に抜け出すスピード、推進力のあるドリブル、強烈な左足をだれも止めることはできなかった。6試合ぶりの先発でも2G1Aの大車輪の活躍を残したチアゴの爆発力がチームの命運を握る終盤戦になりそうだ。

コラム

目的から手段へ。
意思統一が進むビルドアップ

2点目と3点目は相手の状況を理解した上での得点だった。

どちらの得点も岡山がパスをつないでボールを保持し、岩手が重心を前に懸けたところで本山とバイスのロングボールで相手をひっくり返した。そしてチアゴがそれぞれデュークへのクロスと左足のシュートで得点に結びつけている。この2得点に岡山の成長を見た。

木山監督が就任した今シーズンは自陣からパスをつないで敵陣に入っていくことにトライしてきた。しかし、チームとしてボランチがボールを触る回数を増やすことができず、ビルドアップに苦戦をしてきた。第24節・熊本戦では強まったつなぐ意識が自陣でのパスミスによる失点を招いている。

それでも岡山は自陣からつなぐことをあきらめなかった。というよりも、パスをつなぐことは手段であり、目的ではないという答えが明確になった印象を受ける。相手を揺さぶるためにはショートパスをつなぐことは必要だが、それに固執していない。相手が食いついくと、ロングボールで空いた背後のスペースを突いていく。出し手と受け手の意思がピタリと合った2点目と3点目からチームとして意思統一できていると感じた。

リードしている状況が岩手を前がかりにさせたことは間違いない。しかし、パスをつなぎながら相手の状況を把握し、それをもとに判断してプレーできたことは応用が利く。認知と判断をうまく合わせて奪えた2得点はチームのビルドアップ力を高める財産になるだろう。


読んでいただきありがとうございます。 頂いたサポート資金は遠征費や制作費、勉強費に充てさせていただきます!