【レビュー】『チームの狙い×選手の情熱で今季最大の大一番を制す』～第33節ファジアーノ岡山vsV・ファーレン長崎～

試合結果

2024 J2 第33節
9/29 14:00K.O. ＠シティライトスタジアム
岡山（1-0）長崎

スタメン

チームの狙い×選手の情熱で掴んだ大勝利

3位・長崎をシティライトスタジアムに迎え撃つ4位・岡山が立ち上がりから狙い通りに相手陣内でのプレーを増やしていった。

アウェイチームが非保持に採用する[4-4-2]は、フアンマ・デルガドとマテウス・ジェズスが最前線を構成するる形で、[4‐4]の2ラインのブロックを組む。そのため、岡山は最終ラインからパスをつないで簡単にハーフウェイラインを越えると、両サイドのタッチライン沿いに立つWBを狙ったサイドチェンジで大きく左右に揺さぶっていく。長崎の4バックを横に広げ、その間から2シャドーが抜け出し、1トップのルカオが相手DFとの肉弾戦で起点をつくってゴールに迫った。

左WB末吉塁と6試合ぶりに先発した右WB本山遥が鋭いランニングでサイドの奥を突いて押し込む中、24分に決定機を創出した。

早川隼平が献身的なプレスバックでボールを奪い、藤田息吹が前方のスペースを利用した見事なファーストタッチで前を向いて縦パス。ルカオが先に体を当てて相手DFのボディバランスを崩しながらターンすると、右サイドを豪快に突き進む。ボックス内右まで進入して折り返したボールを逆サイドから走り込んだ末吉が右足で合わせる。低くて鋭いシュートは枠を捉えていたが、相手DFのスライディングブロックに防がれた。

押し込まれていた長崎はCBを中心に粘り強く守ってカウンターで反発しつつ、GK若原智也がビルドアップに参加することで落ち着きを取り戻す。神出鬼没なジェズスがボールを受けると、味方が一気に動き出し、攻撃のスイッチオン。昨シーズンの得点王・フアンマが188cm90kgの肉体をフルに生かしてチャンスを伺う。35分にはジェズスがボックス内左に進入し、フアンマがゴール前でパスを受ける。反転からのシュートを試みるも、岡山の選手4人が素早く囲い込んでピンチを脱した。

スコアレスで迎えた後半は互いに攻勢を強める中で、岡山が相手ゴールを脅かしていく。攻撃をけん引するのはルカオ。51分、スローインから相手DFを背負いながらオーバーヘッドキックを放ち、62分にはPA右角からのシュートがポストを直撃。その直後には本山がPA右から上げたクロスに末吉が飛び込むも、懸命に戻った相手選手にクリアされた。

途中出場の神谷優太の鋭いプレースキックからも再三にわたってゴールに迫り、両サイドから波状攻撃を仕掛けていく。相手を自陣に閉じ込めるように一方的に攻め込むと、78分、岡山に関わる全ての人の思いが結実する。

13本目を数えたCK、GATE 10の声援を背にした神谷の鋭いボールをニアに走り込んだ鈴木喜丈が頭でフリックし、ルカオが力強いヘディングでネットを揺らした。マンションの隣の部屋から住民に騒音苦情を言われかねないほどの「よっしゃーーーーーーーー！！！」が自室に響き渡ると同時に、Cスタが激しく揺れていた。ゴールを決めた背番号99はユニフォームを脱ぎ、渾身のガッツポーズで自身の存在を誇示し、胸を強く叩いて喜びを爆発させた。

喉から手が出るほど欲しかった先制点をもぎ取った岡山は、神谷がオン・ザ・ボールでチームに落ち着きを与え、途中出場の選手も己のミッションをしっかりと遂行する。木村太哉は推進力を発揮してボールを自ゴールから遠ざけ、柳育崇はロングボールを情熱的に弾き返し、太田龍之介は懸命にコーナーフラッグ付近で時計の針を進める。

試合終盤、長崎がゴール前にボールを放り込んで最終攻撃を仕掛けてきた。しかし、岡山の選手が全員でボールに寄せてシュートを打たせず。中村慶太のFKがゴール前を通り過ぎてピッチ外に出ると、タイムアップのホイッスルが鳴り響いた。3位との直接対決を制する笛の音がこだます中、田上大地は飛び跳ねながら拳を突き上げ、鈴木は地面を強く叩き、地響きのような歓声がスタジアムを包み込む。木山隆之監督は満面の笑みで力強くガッツポーズし、ベンチに退いた戦士たちも思い思いの方法で喜びを爆発させる。大きな、大きな歓喜を自らの手で掴んでみせた。

長崎の戦術を踏まえた上での狙いを持った攻撃。目の前の相手にやらせないという気迫を感じる、球際の戦いと献身的なプレスバックをはじめとした守備。岡山の選手全員が今節の意味をしっかりと理解し、それを熱いプレーで体現。田上がシュートブロック後に雄叫びを上げて味方を鼓舞し、プレスで縦パスを塞いだルカオは両手を挙げてGATE 10を盛り立てる。11,429人が駆けつけたスタンドとチームが一体となり、最高の瞬間を手繰り寄せた。