【レビュー】『総力戦で勝つ。岡山の強さは本物』~第38節ファジアーノ岡山VSベガルタ仙台~

試合結果

2022 J2 第38節
9/25 13:00K.O. @シティライトスタジアム
岡山(3-0)仙台
40分 ステファン・ムーク
51分 佐野航大
90+2分 仙波大志

スタメン

マッチレポート

チーム力で上回った岡山が3発快勝

岡山は強い。

そう断言できるのは、誰が出ても“相手コートでプレーする”という志向してきたサッカーを体現できるところにある。自動昇格だけを目指す選手たちが日々の練習から高い意識を持ち、木山監督が意識を1つの方向に統一させる。チーム力の差で仙台を圧倒した。

岡山は豪州代表に選出されたデュークだけでなく、16得点のチアゴ、司令塔の河井も欠場。これまでチームをけん引してきた主力が不在の状況で、木山監督は[3-4-2-1]の布陣を採用した。第32節の横浜FC戦以来の形でスタートすると、全体の陣形をコンパクトに保ち、こぼれ球を回収して仙台を押し込んでいく。右サイドは河野と田中の好連係で崩し、左サイドは佐野が勢いよく飛び出す。20分には本山がGKの手前でバウンドするミドルシュートを放つも、GKに弾かれた。

仙台は岡山の圧力を受けながらも、縦に素早いカウンターで反発していく。敵陣で相手のクリアを拾うと、28分には中山がPA手前から左足を振り抜き、30分にも同様の形から中島がミドルシュートを打った。さらに35分、出場停止の遠藤に代わって先発した氣田のクロスから、最後はゴール前で中島がシュートを放ったが、輪笠のブロックに遭った。

仙台が中山へ縦パスを打ち込み、フォギーニョと松下が前向きでボールを触る回数が増えたことによりリズムを掴んだに見えたが、40分に岡山が鋭いカウンターで試合を動かす。河野がパスカットし、永井がゴール前で体を張って落としたボールをムークが流し込んだ。5試合ぶりの出場となる背番号8の得点で岡山が先制して前半を折り返した。

追い掛ける仙台は後半開始時に富樫を投入し、前線に起点を増やして反撃を試みる。しかし、岡山が突き放した。右サイドを抜け出した河野のクロスを佐野が押し込んだ。19歳の誕生日に花を添えた背番号22が喜びを爆発させ、11,661人が集まったCスタが歓喜に包まれた。

その後は仙台が攻撃的な選手を加えて変則的な形で攻めてきたが、バイスが統率する岡山の守備陣が寄せ付けない。選手交代でプレスの勢いを持続させると、終了間際に相手のミスを突いた仙波ネットを揺らして勝負あり。

主力選手が不在の中でもチャンスを得た選手が力強く結果を残し、途中出場の選手も役割を全うした。誰が出てもチームの強みを発揮して勝利をつかむことができる。岡山の強さは本物だ。

コラム

訪れたチャンスで結果を残す。
ムークが見せたプロの姿勢に感動

先制点が決まったとき、目頭が熱くなった。

抱いた感情は単に得点が入ったうれしさだけではない。デュークとチアゴがいない中でも得点を決めることができた安堵の気持ちもあった。しかし、それ以上に大きなものがあった。それは全身を満たす大きな感動だった。

エモーショナルな気持ちにさせたのは、ステファン・ムーク。今節、相手がリズムを掴みかけた時間帯に先制点を決めてチームの勝利に貢献した。背番号8は得点という最高の形で5試合ぶりに巡ってきたチャンスを生かしたのだ。ゴールネットを揺らしたムークが弾ける笑顔でチームメイトと喜びを分かち合った。

チャンスが来たときに力を発揮して結果を残すことは簡単ではない。ムークは外国籍選手枠の関係で欠場する時間が続いていた。J2のレギュレーションにおいて、試合に出られる外国籍選手は4選手のみ。岡山は5選手の外国籍選手が在籍しているため、毎試合必ず1選手が試合に出られない状況の中でリーグを戦ってきた。

そのしわ寄せを1番受けてきたのがムークだった。豪州の世代別代表に選出された経験を持ち、前所属のチームではで主将を務めた実力者がベンチにも入れない状況が続いた。もどかしさや悔しさの気持ちがあったに違いない。それでもムークは自身と向き合い続け、常に100%を出して練習に取り組んできた。出番に備えて最善の準備を重ね、実力を発揮して結果を残す。意地を見せたプロフェッショナルな姿勢に感動を覚えた。


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