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100年先も繁栄する会社にするためにこれが最適な意思決定──新経営体制をツクルバ共同創業者の2人が語る

本日、ツクルバは代表取締役の異動を発表しました。創業以来、共同創業者の2人が共同代表として引っ張ってきたツクルバは、創業者と執行体制を分離して代替わりを迎えます。

2019年7月31日のマザーズ上場後、強い企業体になるための組織文化の変容を経て、コーポレート・アイデンティティを刷新したツクルバは、なぜ今新経営体制へ移行するのか。

ツクルバの「創業者」として区切りのタイミングを迎えた、共同創業者である中村・村上に、これまでとこれからを振り返り、語ってもらいました。

取締役・共同創業者
中村真広 / Masahiro Nakamura

思想を持った事業への共感と参加で社会を進化させていくために、ツクルバを共同創業。創業からクリエイティブ領域、社内外ステークホルダーコミュニケーション領域、ビジョン構築領域を中心に会社経営を担当。今期から立ち位置を変更して取締役へ。ツクルバの枠組みを超えた活動を通じて獲得した価値をツクルバに還元し、今後も長期的な視点からツクルバの成長に貢献していく。
代表取締役CEO
村上浩輝 / Hiroki Murakami

事業の拡大を通じて社会に貢献し、未来へ文化と人を遺すために、ツクルバを共同創業。上場後に改めて自分のミッションを再確認し、変わらない思いで経営に携わる。今後は、創業者から経営者へのトランジションを経て、改めてツクルバの経営にリーダーシップを発揮していく。


創業者として自分のすべてを会社に投影してきた10年

村上 新経営体制に移行して、まーくん(中村の呼び名)はツクルバの執行から離れることになったけれど、創業から10年を迎えるタイミングで、創業者としての区切りを迎えた気分はどう?

中村 どうかな、まだあまり実感はわいてないかも。ただ、「創業者としてのゴールはなにか」についてはずっと考えていたんだよね。何かしらゴールを設定しないと継承ができない。創業当初から、自分たちの寿命を超える会社を作りたいと考えていたから、どこかでは継承できるようにするのが創業者の役目だなと思っていて。カウカモを立ち上げたときはそんなこと考えていなかったけれど、事業も組織も大きくなって、上場の話が出てきた頃から少しずつ意識し始めたかもしれない。

村上 たしかに。組織が大きくなる前は、自分の人格、自分の全てがツクルバとイコールな感じだったけれど、それが少しずつ、親離れ、子離れ的なことが頭にちらつき始めたみたいなことを上場前後くらいのタイミングで話してた。

中村 話してたね。自分の中でも、組織が100人弱で、毎月新しいメンバーが10人ほど入るくらい拡大している頃って、勝手に代表らしくあろうして、いろんなものを背負おうとし過ぎて、うまく噛み合わなくなっていった時期だったんだよね。

振り返ってみると、ずっと「ツクルバ=自分」だったのが、組織が大きくなってツクルバが自我を持ち始めているなかでも自分と一体化しようとしていたから、窮屈になっていたんだと思う。

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村上 ツクルバは共同で創業してるから会社と自分を重ねる度合いって、1人で創業してるケースと比べて薄いはずなんだけどね。最初から会社は自分一人のものじゃない。そのはずなのに、いつのまにか会社と自分を重ね過ぎていたんだよね。

「自分のためにツクルバがあるんじゃなくて、ツクルバのために自分たちがいる」ってずっと言い続けてきた。とはいえ、創業者として会社に自分を投影してしまうときもあり、思いどおりにならないと「自分がいなければ生まれなかったのに」と考えてしまうこともあって、なかなか自分と切り離すのは難しかったな。

中村 難しいよね。というか、それくらい自分と会社を重ねないとゼロイチの立ち上げは無理だと思うな。共同創業者の二人ともが自分とツクルバを同一視して、阿吽の呼吸でやってきたのが創業初期だったんだと思う。

村上 阿吽でやってこれてしまったのが属人性を高めてしまって、別の課題にもなったんだけどね。俺がまーくんと一緒に起業したいと思ったのは、視座を高く、視野を広くして事業に取り組みたいという考えが一致してたから。遠くて大きな目標に向けてツクルバを進めていこうという部分はズレていないから、直近で何をやるか?は手段でしかなくて。そういう考えもあったから、会社に自分は投影していないって思っていたけれど、そうじゃなかった。

中村 正直、めっちゃ自分を投影してたよね(笑)

村上 そうだね(笑)まーくんの言う通り、確かに会社と自分を同一化してないと創業なんて無理だった。共同創業者の二人として阿吽の呼吸で進めてきた10年は、正解がない中で考えながら実行してきたアート的な要素も強かったと思う。


自律した「ツクルバ」という生命体と、創業者の分離

中村 振り返って話すとすっきりだけど、この決断に至るまでは相当悩んだよね。上場前後でも、それぞれで悩んでたしね。

村上 上場後、俺はこのままだと会社がつぶれると思ってたしね。その危機感から「第3創業期だ!」ってことでツクルバを再構築するために、社内の組織構造を変革したり、ロゴや理念体系を見直したりして、「リビルディングプロジェクト」を仕掛けてきた。

中村 俺は上場前後で崩れてかけた組織文化をなんとかしたいと焦っていて、会社を変えるぞ!ってことでCIのリニューアルを進めて、最初に作ったロゴ案は社内からものすごく反対されてね(笑)今思い返すと、あそこでスムーズに進まなくてよかった。

村上 そうだね、「会社のロゴを変える」を目的にしてたなって反省した。前のロゴと違うからいいって思ってたんだよね。

中村 会社を変えるためのアクションをしなきゃいけない、こういうアクションをしないと自分はバリューを出せてないみたいな焦りもあって動いていたのもあった。浩輝は浩輝で事業の成長における焦りがあって、お互いに十分に対話できていなかった。俺らがしっかり話せてないんだから、他の経営メンバーや会社のメンバーともしっかり話せてるわけもなく、ちぐはぐしてしまっていた時期だね。

村上 うん、あの頃の失敗は必要な経験だったと思う。

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中村 そう思う。俺はロゴや理念体系のリニューアルを経て、ツクルバを相対化して自分と切り離すため時間を過ごせたと思ってて。そのプロセスで、会社のみんなが当事者意識を強くできたと思ったんだよね。「あ、なんか創業者としての自分はもういなくてもいいのかも」ってふと感じた。「二人のツクルバ」から「みんなのツクルバ」にするための経験を一連のプロセスで共有できた気がして。


(CIのリニューアルプロセスについて中村が語っている様子)

村上 この間、二人でツクルバ10周年の日本酒を作ったときにも話したよね。日本酒づくりって、麹菌を均等に振りまいたら、あとはひたすら麹菌にとってベストな環境を整えてあげるだけ。ツクルバも、創業者としてはこの10年で麹菌は振り終えたよねって。

中村 そうだね。画竜点睛じゃないけど、自分を投影し尽くさないと絵に魂が入んないというか、最後に魂を込めて目を描くと、それで竜が動き始める。自分と一体化させて、憑依して描き切らないと生き物にはならなくて。だからこそ、俺も浩輝もそれぞれ自分を投影しまくって、創業期は走ってきた。

それで最後に目を描き入れたら竜が動き始めて、「あ、自分とは違うじゃん、ちゃんと竜になったじゃん」って気づいた感覚なんだよね。ツクルバという生命体には、もう自我が芽生え始めてるから、その存在にとって最適な選択をしなきゃいけない。それが今回の新経営体制につながってる。


会社と創業者の関係が変わるとどうなる?

村上 新経営体制では、創業者としての自分ではなく、改めて経営者として就任する。創業者として今のツクルバにとって最適な意思決定をして、創業者の二人は見守る立場になる。その上で、経営者人格としての自分は2代目の経営者として執行を任せてほしいと創業者に伝えた感じだね。ちょっと伝わりにくいかもしれないけれど、創業者と経営者の切り分けは自分にとって大事な意思決定。

経営体制変更.001

中村 浩輝のなかで、2代目CEOとして就任したことでの変化はあるの?

村上 あるね。外部から経営者として呼ばれて就任したような気持ちでツクルバに向き合ってるつもり。ドライに数字だけを見ていくと、今のツクルバは赤字で売上も昨年比で下がっている。株価も上場時から大きく下がっていて、今この瞬間だけを切り取ると、決して理想の状況ではない。

ただ、ツクルバには大きなポテンシャルがあるから、そこを生かして大きく成長させられると確信している。会社が持っている強みを発揮できるようにして立て直しのために就任したような気持ちで向き合っていて、その1つ目のアクションが増資(2021年6月30日に開示)だったんだよね。

中村 創業者でなく、経営者としてツクルバに向き合っていくわけだよね。

村上 そうだね。あと、これまでは共同創業者で、2人で相談しながら決めてこれたから、意思決定に甘えがあった部分もあると思っていて。今後は、1人で意思決定して、責任を取っていく。そこは覚悟が問われる。結果が伴わなければ自分も会社も続かない。今回の意思決定で、その覚悟が決まったかな。

中村 ツクルバがより強くなっていくために必要な意思決定を浩輝が責任を持ってしていく。創業者と会社の関わりが変わって、ツクルバはより良くなっていくと思ってる。

社内からも執行体制についていろいろ質問をもらったけれど、ツクルバの価値は何も変わらないと思ってる。俺が担っていた執行領域であるクリエイティブ、社内外ステークホルダーへのコミュニケーション、ビジョン構築などは、今後のツクルバにとっても大事なものは取り入れて、執行体制のなかで推進していく。逆に時代の変化とともに大事でなくなっていけば、カタチを変えて、別のことに取り組んでいくことになる。これまでもこの先も、大事なのはミッションだけ

村上 自分たちの寿命を超えた会社へと成長させていくことを考えると、ミッション以外のものは変わっていくことのほうが自然なんだよね。不変なものが少ないというのは不安かもしれないけれど、「『場の発明』を通じて欲しい未来をつくる」という言葉に込めているように、自分たちの手で未来を引き寄せるんだ!という圧倒的な当事者意識こそが唯一かつ最重要なことだと思っている。

中村 未来は予測するものでも、傍観するものでもなく、自分の手でつくっていくものだからね。俺は事業活動もひとつの表現になりうると思っているし、表現で思想が伝播することで社会を変えていけると思っている。表現として事業活動に携わっていたから、経営者として高みを目指す浩輝とは違ってこのタイミングで執行からは離れるけれど、事業活動を通じて社会に貢献したい、という想いは創業から変わらない。

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やがて文化になる事業を、欲しい未来をつくるために

村上 「やがて文化になる事業をつくり続けるリーディングカンパニー」というビジョンで掲げている"文化になる事業"って、めちゃくちゃ大きい事業であるはず。人々の生活に欠かせないインフラになっていて、その事業に価値を感じる人が無数にいる。

国内の事例で言うなら、メルカリやLINEのように日常的に当たり前に使われるサービスや、人生の節目で誰もがイメージして利用するゼクシィやマイナビも文化になっている事業といえるかもしれない。ツクルバは、事業活動を通じてそういう誰もが知っていて当たり前に使っているサービスやプロダクトを生み出すことを目指している。

ツクルバの現在地は、やがて文化になる事業をつくり続けるための入口に立ったばかり。まずは、ビジョンを示して今手掛けている事業を圧倒的に成長させるという結果を出さないといけない。そうでないと、多くの人に応援されない。応援されないと言うことは、株価や様々な指標に反映されて、資金調達ができないし採用ができない。投資ができず、成長もできない。そうして成長ができなければ良いサイクルが生み出せない。

先日発表した増資によって、勇気のある投資を実行し、力強い成長を実現する。それによって正のスパイラルを生み出す。期待が資金に、資金が成長に、成長が結果に、結果がまた期待に繋がるスパイラルとなる。こうして、どんどん新しい挑戦ができるようになる。

中村 両利きの経営的に深化と探索でいうならば、いまのツクルバは圧倒的に深化に振り切るフェーズだよね。ツクルバは創業初期の頃から探索の要素が強かった。探索はもちろん大事なんだけど、探索ばかりで深化できてないと、やがて文化になる事業にはならない。ありがたいことに今は、カウカモで勝負するための舞台に立たせてもらっている。まず、ここで一発目の結果を出すときだね。

探索が本格的に必要になってくるのは、カウカモがやがて文化になる事業まで成長する目処が見えてきた後。カウカモしか柱となる事業がない会社になってしまったら、それはそれでやがて文化になる事業をつくり続ける会社にならない。それはツクルバとしては不本意だよね。

村上 まさに。正のスパイラルを自らつくることによって、やがて文化になる事業をまずつくり、やがて文化になる事業をつくり続けられるようになるはず。そして、それが実現できている会社は、ツクルバがミッションで掲げているように、欲しい未来は他の人たちに任せるんじゃなくて自分たちつくるという状態が実現できる。

10年前に創業したときにも、「50年後は宇宙で仕事してるかもね」なんて話していたけれど、ツクルバは常に時代の社会課題を事業を通じて解決して欲しい未来をつくる。誰かに任せるんじゃなくて、自分たちが社会をつくる主体であるというアイデンティティー持ち続ける組織にしていく。そのためにも、まずは今の事業で力強い成長を実現させないとね。

中村 そうだね。執行からは離れるけれど、ツクルバの取締役として「共にいる」を仕事にシフトしていこうと思っていて。上場後に「ファウンダー」という肩書きにして、領域を限定せず長期視点でツクルバというムーブメントを起こすことに集中すると決めて動いてきた。これまでに個人名で活動してきたことも「頭の片隅では常にツクルバにどうやってつながるかな」って考えてるしね。

今回の体制変更で執行からは離れても、長期視点でツクルバの価値を高めていくことに変わりはなくて、これまで以上に広く世の中を探索しようかなって考えてる。俺だけが探索を担うわけではないけれど、CEOとして浩輝は執行に集中することになるから探索を担うのは俺の役目かなって。執行には関わらなかったとしても、ツクルバの次の事業の種になりそうなものを発見してきて、何かしらで統合していくような探索はしたいなって思う。

村上 人の寿命を超えて長期的に発展する企業体をつくるためには、まだまだやらないといけないことだらけ。みんなと一緒に、次の10年をつくりあげていきたいね。

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CREDIT
編集・ライティング:モリジュンヤ(inquire)
撮影:柴田紘之

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