見出し画像

【ベスト16敗退国その2】曖昧な記憶で振り返るカタールW杯2022

スペイン負けとるやないかーい!!PK1000本ノックはどうなったんやー!!!

その1はこちら!

日本

ドイツ、スペインと同組になった時には「終わった」「どちらかと言えば終わった」「家族は終わったと言った」と白金在住の主婦の98%が感じたらしいですが(当社調べ)、まさかその2チームに勝つとは誰が予想したでしょうか。ドイツ相手にはシュート26本(枠内9本)を撃たれ、スペイン相手には80%以上もボールを保持されながらも、ボール非保持に全振りした陣容で凌ぎ切り、3バック化からの三笘&伊東のWBなどの大胆な采配で乾坤一擲の勝利をつかみ取りました。運がいいとか、奇襲が成功しただけとか言われるかもしれませんし、実際ドイツ戦で2失点目をしていたら全く違うグループリーグの展開になっていたと思われますが、そうだとしてもドイツ、スペインを連続で倒せるチームが世界のどこにいるんだという感じなので、これは胸を張っていい成果だと思います。コスタリカ戦のことは忘れましょう。さすがにベスト16では老練なクロアチアに対応され、ある程度ボールを持たされて攻め切ることができず、PK戦で負けました。しかし、これはもうどうしようもないかと思います。圧倒的に攻められながらも、伊東、三笘、冨安、鎌田、遠藤を筆頭に、部分では個で勝って得点を取り、デュエルその他で負けなかったのは間違いなく日本の実力が上がった証拠でしょう。ただ、そうなると、次の段階として今後はドイツなりスペインなりにもうちょいボールを持って普通に戦いたいね、となるのは当たり前であり、そうなると今回のようなカウンター全振りスタイルを取るわけにはいきません。で、ある程度保持するようなスタイルにすると、本大会のグループリーグでコケたりするんですよね。でも、試行錯誤を繰り返して一歩一歩進んでいくしかないんでしょうね。強いチームでした。

・気になった監督 森保一
本当に騙されました。というか、私だけではなく、かなり多くの人がびっくりしたんじゃないでしょうか。アジア予選でも序盤は煮え切らない試合が多くて一時は3位に落ちたこともあったり、直近の親善試合でもそれほど内容がよくなかったので、本大会での躍進を事前に予言していた人は多くはありませんでした。実際、ドイツ戦の前半までは惨敗の二文字が頭をよぎりましたよね。そこから、あのやけっぱちにしか見えなかった布陣変更があれほどハマるとは予想もできなかったです。もちろんやけっぱちではなく、ドイツ、スペインがどんな状況でもボールを繋いでくるという確信があるからこその作戦ですが、それをほぼほぼ本番ぶっつけでやってくる森保さんの胆力のすさまじさですよね。ある程度選手に主導権を持たせながら、話し合いを通じてうまく調整してあの戦術に辿り着かせるという芸当は、他のどの監督でもできないことなんじゃないでしょうか。様々な否定的評価をされながらも、ブレずにそれをやり切った森保さんは日本代表の歴史に残る監督になったと思います。ただ、継続はどうなんでしょうかね。次のW杯でこれ以上の戦果が望めるかというと難しいですよね。今の選手主導型のチーム作りのやり方を続けるとしたら最適というか森保さんくらいしか適任者がいないのですが、それを望むのかどうか。続けたとしても、保持して攻撃する部分を作るのは得意ではない感じなので、選手と方向性が違っちゃう可能性が高いかな、と思います。ただ、そうなると後任どうするんですかね。選手が海外主体で発言権が大きく、監督が国内オンリーの経験で相対的に発言権が小さいというチーム構成は、日本人監督は誰でもやりづらいはず。外国人としても報酬含めて旨味があるかというと微妙で、候補が難しいですね。ビエルサを呼んだ上でめちゃくちゃに色々ゴネられた挙句に就任会見後に辞任とかされてハードルを下げる、というのもアリだとは思います。

いったんこのお方というのもありですよ

韓国

中々難しいグループに入りましたが、ギリギリで最終戦に勝利を収めて久々の決勝トーナメント進出となりました。初戦は低調なウルグアイと引き分け、2戦目でガーナに敗れて崖っぷちに立たされますが、3戦目ではメンバーを落としたポルトガルに終盤まで同点でしたが、後半ロスタイムにソン・フンミンが単騎カウンターで持ち運び、最後はファン・ヒチャンにラストパスを出して、勝ち越しゴール。これで決勝トーナメントに進出しました。ベスト16では相手がブラジルだったので、ボコられて終了です。エースのソン・フンミンは直前に怪我したものの、それほど影響は感じさせずに獅子奮迅の働きでしたね。パウロ・ベント監督はビルドアップを重視していましたが、割と本番では縦に早めのいつもの韓国スタイルも出てましたね。ただ、そのビルドアップもグループリーグでそれほど前プレでハメてくるチームもいないので真価がわからず、また配置で殴れるほど洗練もされてませんでしたが、一方的に殴られないためのポゼッションとしては機能していました。あと、パウロ・ベント監督が暴言で2戦目の試合後に退場したのは面白かったです。韓国代表は3試合目しか勝ってないので、パウロ・ベント監督不在の時しか勝てなかったのは、「ふふっ」ってなりますよね。韓国歴代最長の在任期間だったらしいですが、辞めることになりました。もっと長くいて、暴言で退場して欲しかったです。あと、DF陣の基本セットがキム・ムンファン、キム・ミンジェ、キム・ヨングォン、キム・ジンスのDFラインにGKキム・ジンスの金囲いなのはちょっと面白かったです。

・気になった選手 ソン・フンミン
プレミアリーグ得点王の肩書は伊達ではありませんでした。全体的に目立ったタレントがいない中で、別格の働き。他のアタッカーは2戦目にイケメンのチョ・ギュソンが2点を取って気を吐いた以外はぱっとしませんでしたし、韓国のエムレ・モル(勝手に私が呼んでいる)ことイ・ガンインも相変わらずのドリブル特攻っぷりは変わらず。ソン・フンミンはなかなかサポートがなくてしばしば2人とかに囲まれていましたが、そこをキープして繋いだり、ファウルを貰ったりという地味だが大変な仕事をこなしていました。あと、時折放つミドルはさすがのものがあり、アジアで最も優秀なアタッカーであることを証明したのではないでしょうか。と、ここまで書いて、状況がポーランドのレバンドフスキと酷似していることに気づきました。得点はありませんでしたが、3戦目のロングカウンター完遂も含めて、キャプテンにしてエースという責務を十分に果たしました。韓国は早く銅像を建ててあげてください。

みんな「あーあ」って顔してる

スペイン

やっちまったー!!!というわけで、ベスト16でモロッコにPK戦の末にやられました。グループステージでコスタリカに大勝し、ドイツと引き分けたあたりまでが今大会のピークでした。美しいガラス細工のシャンデリアではありましたが、さすがに脆すぎましたね。エンリケ監督は圧倒的ポゼッション唯一神教の狂信者で、メンバーもポゼッションに全振りしてこの大会に臨みました。確かに日本戦、コスタリカ戦、モロッコ戦は80%前後の驚異のボール支配率を記録、同種のドイツ相手にも65%とポゼッションでは圧倒しましたね。世界ポゼッション選手権があったら間違いなく優勝ですし、ほっといたら3年くらいは余裕でパスを回してそうです。ただ、いかんせんこれはサッカーの試合であって、ポゼッション選手権ではないということをエンリケは忘れていました。試合をフリーズさせることに関しては天下一品ですが、とにかく点が取れませんし、相手が出力を瞬間的に集中して上げる方策を取ってきた場合に対応できなかったですね。ドイツとの試合は確かに今大会最高レベルに高質でしたが、それはあくまで将棋盤を挟んで将棋のルールでやっているからそうなっているだけであって、世界には日本のようにいきなり将棋盤で殴りつけてきたり、モロッコのように部屋に火を放つ輩たちもいるのです。カメルーンに至ってはいきなり自分の腕にナイフを突き立てますからね。確かにポゼッションを高めてボールを支配すれば勝利の可能性が高まるという理論に正当性はあるとは思うのですが、サッカーには別の方向の正しさもあるということをスペイン代表は教えてくれました。まあでも、ほんとうまかったですけどね。ガビ&ペドリ&ブスケッツ&ラポルト&ウナイ・シモンとかどうやってボール取るんだって感じですし。ただ、これにロドリCBはさすがにやり過ぎでしたね。エンリケ大僧正は続けるのかどうかはわからないけど、ここから異物を増やしてバグを多めにする方向にいくんでしょうか。そういう選手がいるのか知りませんけど。それができれば、たぶん結構強い。でも、やらない(やれない)んだろうな。

・気になった選手 ウナイ・シモン
エンリケ大僧正によるポゼッション正教の異端審問官の1人として正GKを務めました。まあ、とにかくうまいですな。堂安にぶち抜かれたようにセービングの技術はけっこう微妙な気もしましたが、長短問わずにグラウンダー、浮き球のパスをスコスコ通しまくっていて、キーパーへのプレスをほとんど無力化できるのは、スペインのやり方では相当なアドバンテージでした。この手の繋げるGKの場合は技術もそうなんですけど、メンタルがすごいですよね。寄せてきても全然慌てない、平気で切り返したり、ドリブルしたりします。ブラジルのエデルソンとかも同種なのですが、恐怖を感じるスイッチがぶっ壊れてるんじゃないでしょうか。ただ、それも良し悪しで、日本戦では必ず繋いでくるというパターンを読まれて狙い撃ちにされ、それが失点の原因となりました。何をどう考えてもあんなもん外に蹴ってしまえばそこで終わりなのですが、そこで繋ぐ度胸と技術があるせいでかえって仇になってしまいましたね。ただ、傍から見てる分には面白いので、これからもバリバリに繋ぎ倒していってもらって、最終的には自陣PA内でルーレットかましたりして、スペイン国民の高齢層の心臓を活性化させていってほしいものです。

スペインのお年寄りのバイタルにハートビート!!

スイス

ブラジル相手に負けたものの善戦、セルビアを倒して意気揚々とグループステージを突破したのはいいのですが、そこに待っていたのは地獄でした。出すとチームがいびつな形になってしまうロナウドをスタメンから外したポルトガル@100㎏の道着脱ぎましたは前線からのプレスと変幻自在のパス回しでスイスを翻弄。特にジャカへのパスルートを寸断されたために、ロクに前線にボールがいきませんでした。早めの時間にゴンサロ・ラモスに先制点を取られると、立て続けに点を取られてあっという間に4ゴール。その後に見るたびに正方形に近づいてるシャキリのCKからアカンジが1点を返すも、ゴンサロ・ラモスが追加点でハットトリック、とどめでラファエル・レオンに決められて1-6という屈辱の敗戦となりました。完璧に崩された形が多く、いくらヤン・ゾマーでもどうしようもありません。ちょっとシェアーのところがおかしかったですが、スイスがおかしいというよりポルトガルが良すぎましたね。ジョアン・フェリックスを全然止められませんでした。これでスイスは2010年にグループステージで敗退した以外は、2006年から4回ベスト16に進出していて、そこで敗退しています。今大会グループステージで敗退したメキシコの代わりに、ミスターベスト16を名乗る資格があるのではないでしょうか。なんかメキシコもそうなんですが、このくらいの中堅国がこれ以上に行くって「メッシ待ち」みたいなところもありますよね。組織と汎用的な選手は作れるんだけど、異質でぶち抜けた選手は作ることはできないので、それが来ないと新しいステージに行けない、みたいな。限りなく正方形に近いシャキリやジャカの世代がそれっぽかったけど、そうではなかったという結果になりました。アルプスのメッシ待ち。

・気になった選手 ブレール・エンボロ
EUROの時は能力が高いんだけれどわけわからんプレー選択をするという、偏差値が定員割れの工業高校な感じだったんですが、なんかめちゃくちゃ賢くなってましたね。1トップで起用されると、ボールをキープし、ターンするところはターンする、一旦預けるところは預ける、と非常にプレー選択が的確でした。進研ゼミでも始めたんでしょうか(この問題、この前進研ゼミでやったところだ……解ける…解けるぞ!)。ただ、そうなると持ち前の身体能力と推進力が生きてきますよね。2得点でしたが、周りを生かしたことも含めてエースとしての責務は果たしましたね。セフェロビッチなんか使ってる場合じゃありません。ところでエンボロは以前はバーゼルで柿谷と同僚になり、今季はモナコで南野と同僚という、なぜか日本人と縁があり、ポジションも同じという不思議。当時柿谷は「レアル・マドリーやバルセロナに行ける」と評していましたが、今のプレーを続けるならその可能性もなきにしもあらずという感じとなってきました。レアル、バルサは無理でも、少なくとももうちょい上のレベルのクラブにはステップアップできるんじゃないですかね。もしかしたら本編の方に書いた「アルプスのメッシ」がエンボロなのかも、という気さえしてきましたが、それはさすがに言い過ぎだと思います。とりあえず「アルプスのバロテッリ」くらいをまずは目指していきましょう。

すっごい四角~い♡

ベスト8敗退国はこちら!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?