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俺のCD棚 第17回

今回は、DAFT PUNK 【RANDAM ACCESS MEMORIES】

DAFT PUNKは、フランス出身のトーマとギ=マニュエルで1993年に結成された、言わずと知れたEDMのパイオニアであり、今やリビングレジェンド的な存在。

このCDは、2013年に8年振りにリリースした4枚目のアルバムで、それまでとは全く違う、コンセプチュアルな内容となっている。

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全体の構成としては、ずっと牽引してきたEDMとは距離を置き、ファレル・ウィリアムズやナイル・ロジャース等、幅広い世代の客演勢との生楽器での演奏により作られた、70年~80年代を彷彿とさせるようなヴィンテージサウンドが大半を占めており(打込みで作曲したのは2曲のみ)、初めて聴いたときは衝撃だった事を憶えている。

これは当時(2013年)、インターネットが普及・肥大化し、00年代までの音楽の聴き方から大きく変わっていく最中に、彼らが示したアンチテーゼとも取れるアイデアを具体化した結果で、タイトルにもその意図が隠されている。

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そのタイトルに関しては、「脳とハードディスクの類似性がキーになった」と語っており、「メモリー」は「データ / 情報」であり、「メモリーズ」は同じ言葉でも「感情」がこもる。この「感情」という本質が、機械と人間を分ける違いであるという認識が根底にあったらしい。

国内盤のレビュー記事には「今後は、膨大なライブラリを抱えるプラットフォームから、リスナー達はあらゆるジャンルの音楽を容易に接する事が可能となり、過去も現在も、ローカルもグローバルも、全てがフラットになった地平で、よりランダムに音楽にアクセスし、個々の体験や記憶を形作っていくだろう」とあり、そんな「シャッフル文化」の映し鏡を、音楽的な幅の広さによって表現したのである。

エレクトロ~EDMブームを作り上げた二人が、いざインターネットの時代に突入した際に選択したのが、人間らしい感情を重視したルーツミュージックであるというのは、何とも皮肉が利いている。

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この意図を知った時は、驚きと同時に不思議と共感できる部分があり、それ以降の自分の音楽の聴き方の核となっている。(具体的には、知らなかった音楽を聴いた時、時系列ではなく、自分の感情を優先して素直に「新しい」と感じることができるようになり、なるべく1つの作品に向き合って聴こうと思うようになった。)自分にとっては、ジャケットデザインや曲の良さではなく、コンセプトに惹かれた、唯一のアルバムである。

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以上、第17回でした。これまで数珠繋ぎにCDを紹介してきましたが、実は このCDを真ん中に据えた配置にしており、今回で折り返し地点に到達しました。次回からは、棚の反対側からこのアルバムに向かって紹介していきますので、次が何のCDかはお楽しみという事で。

それでは、また。



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