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動き始めたZ世代:社会変革と教育の意味

もうすぐ衆議院選挙が公示されますね。
皆さん、どれくらい関心を持っているでしょうか。

これから、世の中は確実に変わっていきます。
いや、世の中はいつも変わっていっているのですが、
人は、・・・特に日本人は、変化ではなく、
できるだけ「同じことが安定的に繰り返される」ことが好きなので、
「いつも変化している」という現実を見過ごしやすいです。

しかし、変化していますよね。
いま、テレビなどで昭和の時代の何げない映像を見ると、
「よくこんな生活していたな」と思います。

つまり、この数十年だけでも
人々の常識は大きく変化しているということです。

これから、世の中は大きく変わっていきます。
その鍵を握っているのは、若者です。
いや、今までだって若者たちが世の中を変えてきたのですが、
ここ30年の日本では、
若者たちが時代を変革する機会と力が奪われてきていました。

それが失われた30年、「ロストジェネレーション」だというわけです。

ここ30年の日本は、まったく経済成長していないにもかかわらず、
「今までと同じこと」に固執したために
全体として変革の力とその機会を失いました。

人の寿命が長くなったこともありますが、
当時の若者たちは、社会の若輩者というポジションのまま、
自分の打席を与えられず、そのまま、
今や50代の年齢に入ろうとしています。

ここ30年、何かを決めるのは、ずっと同じ世代の人々のままでした。
そのことが社会の空洞化とニヒリズムを生み、
ロスジェネたちは様々な意味で、社会に居場所を与えられず、
「生きている実感」を持たせてもらえなかった。

それが、この日本という国がやってきたことです。

しかし、ようやく時代は動き始めました。

最近、私の胸を打つ二つのニュースと出会いました。

ひとつは、100人以上の若者が、
若者の意見を政策に反映するように訴える
「気候若者会議2021」というアクション。

もうひとつは、この衆院選に向けて大学生たちが始めた運動、
「#選挙で聞きたい気候危機」というムーブメントです。

世界ではグレタ・トゥーンベリさんの「未来のための金曜日」運動や
バリ島のメラティ&イザベル・ワイゼン姉妹による
「バイバイ・プラスチックバック」運動など、
Z世代の若者たちによる
「世界を変えよう」とする運動は話題になってきましたが、
日本の若者たちの気候危機に関する運動は、特に目立ったものはなく、
社会全体として世界の流れに遅れをとってしまっている印象でした。

しかし、そういうことではないのです。

社会の変革、常識の変化というのは、
多くの場合「世代の交代」で起こります。

いま、天動説を本当に信じている人は、
宗教従事者以外ではほとんどいないと思います。
でも、かつて人類の多くは、
地球を中心に空が回っていると信じていました。

天動説がどうして地動説に置き換わっていったのか。

それは、それまで天動説を信じていた人々が考えを変えたのではなく、
天動説を信じていた世代が地動説を信じる世代に置き換わったからです。

しかし、何もしなければ世代が変わっても常識は変わりません。
それまでの常識とはちがうことを考えた一部のオトナが、
「こっちの方が正しいはずだ」と声をあげることがとても重要なのですね。

その様子を見ていた次の世代が、その意見を精査することによって、
「どうやらこっちの方が正しいようだ」と考えを変えていくわけです。
そうやって大きな常識の変化は起きていく。

では、このZ世代の行動はなんなのか?というと、
これが「教育の変化」の賜物なのですね。

そのことを少しお話しさせてください。

文科省が決める「学習指導要領」というものがあります。
簡単にいえば、学校で子どもたちに何を教えるのかを決めたものです。
その中で2012年ごろから
アクティブラーニングという言葉が使われるようになりました。

アクティブラーニングというのは、一方的に知識を教え込む教育ではなく、
自分で主体的に考え、答えのない問いに答えていくような学習のことです。

もちろん、そのような指導要領に変わった理由は、
少子高齢化、気候変動など、これからやってくる未曾有の社会変化の中を
生き抜いていく力をつけるためですね。

このアクティブラーニングですが、
2017年にはその言葉が要領から消えて
「主体的・対話的な深い学び」という言葉に置き換わりました。

これは方針が変わったのではなくて、日本語にすることで、
アクティブラーニングの、より具体的な意味を明確化する目的です。

つまり、ここ10年弱の間に、教育の方針が変わり、
その効果が、こうして今、出てきているということなんですね。

学校の指導要領が変わったら、
次の日から効果が出るということはありません。
先生方は、未知の教育テーマを、
ほぼぶっつけ本番で子どもたちに教えていきます。

当然、最初の頃に比べると時間の経過とともに先生方の理解や、
指導のやり方も有効なものに変わっていきます。

人間がやっていることだから、当たり前ですよね。
その効果が、これから選挙権を持っていくような世代の中で
徐々に意味あるものとして表出してきた、ということなのですね。

しかも、このような傾向はこれから、どんどん強まっていきます。

安保法制のときに旋風を起こしたSEELDsは、
残念ながら持続性がないものになってしまいました。
それは、結果的に一部の意識の高い若者だけに閉じてしまったからです。

彼ら自身に原因があったのではなく、
「普通の子たち」の平均的な常識のレベルが
まだまだついてきていなかったからですね。

けれども、今は状況が変わってきました。
もちろん教育格差の問題は存在しつづけるでしょうが、
意識の最大公約数は確実に上がっているのです。

この変化は「一過性の流行」ではないのです。

その根拠のひとつとなるのは、「コロナ禍」です。
コロナ禍が教育現場に与えた影響はとても大きいのですね。

いちばん大きかったのは、
このコロナ禍は先生方自身が自分自身で経験する
初めてのアクティブラーニングだったということなのです。

今までは、指導要項に従って授業を行なっていれば良かったけれど、
突然のコロナ禍、突然の休校によって、
教育をどのように組み立てていけばいいのか、という問題が
現場の先生方に急に降りてきたんですね。

教育のデジタル化が、コロナ禍で急激に進展したこともありました。
授業をリモートで行うなんて、それまで誰もやったことがなかったけれど、
急にそれを実施しなければいけなくなった。

まさに前例のない課題ですね。
正解のない問いへの答えを、みんなで考え実行していく。

それがここ2年の間に先生方が向き合ってきたことです。

今まではアクティブラーニング未経験の先生方が
アクティブラーニングを教えていたわけですが、これからはちがいます。
ほぼすべての先生方がコロナ禍で
アクティブラーニングを自ら体験しましたし、
先生方の中にZ世代の若者がいるようにもなっています。

教育にとって、5年という時間はとても大きな時間です。
小学校1年生が6年生になる時間ですからね。

そして教育の影響というものは、少しタイムラグを持って
社会の中に直接的に現れてきます。

かつて明治政府は、初等教育で教育勅語を教え続けて、
戦争国家を作り上げることに成功しました。
それは教育内容が皇国観を植え付けた結果なのであって、
教育と社会がどうつながっているかを表す端的な例です。

今、行われてきたアクティブラーニングと、
これから行われていくSDGs教育は、この国の常識を10年以内に
根底から変えることが、
今の時点ではっきりとわかっているということです。

そのことが見えているかどうかで、
これからの社会の変化を読み切れるかどうかが決まると言えます。

日本の若者たちは「自分の力で社会を変えられる」というアンケート結果が
世界の平均に比べて著しく低いことが言われています。
世界の平均は6割がイエスなのに、日本では2割以下なのですね。

この数字、これからどんどん変化していくと思います。
日本は変わっていきます。

変えていくのは若者たちです。

そして我々ロスジェネ世代もこの流れをしっかり見極めて、
新しい社会づくりの一端を担う責任があると思っています。

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