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鬼滅の刃で中学英語#53~なぜ「単数」と「複数」を使い分けるのか?

英語で「私たち」のことは「we」で表しますが、これを英語では「複数形」と言います。

人数が複数だからですね。

日本語にも当然「私」と「私たち」の区別はありますので、その辺でつまずくことはあまりないかと思いますが、英語の複数形のやっかいなのは、「I」と「we」のようなそもそも単語が違う複数形ではなく、「a pen」と「pens」の違いですね。

日本人含め、英語が母国語でない人間はこれを結構間違えますが、英語が母国語の人は間違えることはありません。

それはなぜでしょうか?

「pen」「two pen」ではダメ?

「単数」「複数」というのは、名詞の概念で、日本語にもあります。

しかしその中で、英語の「複数形」は、我々日本人にとって「無用の長物」のようにも感じます。

なぜなら、日本語では「私」と「私たち」という使い分けはしても、「ペン」と「ペンたち」という使い分けはしないからです。

しかし英語では、「a pen=1冊の本」と「pens=2冊以上の本」で使い分けられます。

「pen」だけでも通じそうなのに「a pen」としなければならないし、「two pen」と書けば2本ペンがあるのがわかりそうなのに「two pens」と書かなければ×なのです

なぜこんなことが起こるのかという歴史はさておき、これを英語ネイティブな人がほぼ間違えないのには理由があります。

常に単数形と複数形を使い分けているからです。

英語がネイティブであっても、まだ英語が身についていない子どもの場合は、単数と複数の言い間違いが起こりますが、すぐに「正しい使い方」に修正されるので、使い分けが身について行くそうです。

日本人の子どもだって、「お兄さん」と「お姉さん」を言い間違えたら修正されますよね? そんな感じが近いかもしれません。

しかも、名詞を使う頻度が、英語の方がはるかに多い。

なぜなら、文の主語に必ず名詞を使うのが英語で、日本語のように省略されないからです。

つまり、英語は名詞にこだわりのある言語、とも言えます。

単数形は使わない?

英語は、「語順」で意味が決まるようになっています。

これはまた別の機会に解説しますが、「主語+動詞」という基本の並びの後の語順によって、意味が変わる仕組みになっています。

だから、その主語(名詞)がどんなものであるかを「ハッキリ」明示しなければいけません(出来ない場合は仮主語「It」などを置くが、結局後で説明する)。

主語がたとえば「ペン」だとしても、英語「A pen」「Two pens」「The pen」「The pens」「Some pens」「My pen」「That pen」などとするように、基本的に「Pen」という単数形だけで使うことはありません

必ず、penのような「可算名詞」の場合は*、前に何かをつけるか、前に何かをつけた複数形にするか、のどちらかになります。

*数を数えられない「不可算名詞」の場合は逆に、複数形にしません。
不可算名詞:apple(果肉として)、wood、water
可算名詞:pen、phone、apple(リンゴそのもの)

でないと、「どのペンの話なのか」ハッキリしないためです。

英語は、語順に縛られた言語なので、「誰の/何の」話なのか、ハッキリさせないと気が済まない、ということですね。

だから、単数なのか複数なのか、ハッキリさせておく必要があります。

しかし、日本人には「ええ?」というものも少なくありません。

たとえば「肺が凍りそうだ」という日本語を英語にするとしましょう。
「肺=lung」ですが、そのまま使っては、×です。

例文をご覧頂きましょう。

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻

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So hard to breathe!
息が苦しい
The air's so cold it's freezing my lungs.
凍てついた空気で肺が痛い

これは、『鬼滅の刃』第1話で禰豆子を背負って山を下りる炭治郎の独り語りのシーンの英語版です。

炭治郎は自分の「肺」のことを、「my」はまぁわかるとして、「肺=lung」を「lungs」と複数形にしています。

なぜでしょう?

「肺」は左右二つあるからです。

ウソみたいなホントの話ですが、英語は臓器によって、「単数形」にもなれば「複数形」になるものもあるのです。

もちろん、「左の肺にガンがあります」のようなケースでは「my left lung」になります。

これが英語の「常識」なのです。

名詞だけの問題ではない

さらに、もう一つ英語特有の理由があります。

たとえば「木で作られたペンです」を英語にしてみましょう。

A pen is made from wood.
Two pens are made from wood.

おわかりいただけますでしょうか?

これはどちらも同じ日本語から作られた英文ですが、上が単数形、下が複数形ですよね。

そして、複数形になることでbe動詞が「is」から「are」に変化しています。

複数形のやっかいなところは、名詞に「s」や「es」をつけることもそうですが、後ろのbe動詞を変化させることにあります。

かといって、be動詞以外の動詞は変化するのかと言ったら、「変化しない」ので余計ややこしいです。

むしろ、「he」「she」「it」などの「三人称」「単数」の「現在形」(三単現)は、動詞の語尾に「s」がつくという変化を起こします

前の(主語となる)名詞が「単数」や「複数」のある条件によって、後ろの動詞が変化する以上、名詞をハッキリ正しく伝えなければいけなくなるのは当然ですよね?

ですから、英語ネイティブの人が名詞の「単数」「複数」の表現を間違えることはないですが、逆にネイティブじゃない我々日本人には、この感覚がなかなか身につかないから、いつまでも間違ってしまうのです。

だって、日本語の感覚だと、「木から作られたペンです」に「Two」っている??・・・ってなりませんか?

だけど、英語では名詞が「単数」なのか「複数」なのかで、後ろの動詞も変わってしまう以上、そこは厳密に考えている、ということなのです。

そこにある「木で出来たペン」が2本あれば「Two pens」にならなければ「おかしい」のです。

なお、数が特定できない場合は、そのだいたいの分量によって「some」や「serveral」などを名詞の前につけ、後ろは「複数形」にします。

この辺もまた別の機会にご紹介します。

「pen」だけで使わないもう一つの理由

ちなみに、なぜ「pen」という単語がそのまま使われないのかにも理由があります。

我々は学校で、まずは「I」や「You」「book」「apple」など「単数」を基本として英語を学びます。

それはおかしなことではありませんが、なんでもかんでも「単数」で学びますから、ここでちょっと勘違いを起こしてしまいがちなんですよね。

実は、日本語の「ペン」=英語の「pen」ではないんです

と言われてもピンと来ないと思うので、『鬼滅の刃』のネイティブ翻訳版『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba』の文を見てもらいましょう。

(出典『Demon Slayer: Kimetsu no Yaiba Vol.1』/原作『鬼滅の刃』第1巻

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Demons.

Staple food: humans.
主食・人間
They kill humans and eat them.
人間を殺して喰べる

これは、鱗滝さんが炭治郎に「鬼の生態」を説明しているシーンです。

ここでは「鬼」を、辞書に載っている「Demon」とせずに「Demons」と複数形になっていますよね。
また、その下の「人間」も辞書に載っている「human」ではなく「humans」と複数形になっています。

#12で、チラッとお話しさせていただきましたが、英語は、一つじゃないもので一般的な用語として使う場合は数をつけない「複数形」で言う、というルールがあります。

この場合の「鬼」も「人間」も、一人のことだけじゃないので、それぞれ「Demons」「Humans」になるのです(ついでにthemも複数形です)。

一般論に使う名詞は、その背後にたくさんいる/あるという前提から「複数形」が正解なんです

「pen」なら、「pens」じゃないとダメなんです。
ペンは工業製品ですから、他にもたくさんあるからね。鬼も人間もそう。

逆に、「たった一つ」なら?

・・・それは次回ご紹介いたします。


このように、「pen」や「demon」という単語が、文中でそのまま何もつけずに出てくることはありません。

「pen」も「demon」も何もかも、名詞は辞書にだけ登場する単語で、「誰の/何の」「どんな/どういう」、「pen」で「demon」なのか、ということが大事なのです。

「単数」も「複数」も、その名詞をより詳しくするために存在している、と考えていただけると、英語がなぜこんなにも数にうるさいかわかっていただけるかなと思います。

本日のまとめ
英語の可算名詞は「単数形」だけでは使わない
 前に何かをつけた「単数形」か、前に何かをつけた「複数形」として使う
(単数形:a pen、my pen、this pen 複数形:two pens、some pens)
一般的なものとして表現する場合のみ、数をつけない「複数形」で表す
・英語は、be動詞の複数形や三単現の「s」など、名詞によって動詞が変化することもある

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