デザイナーと、折衝と、落語の話
DXDesign室のnoteができて今回で三つ目。
せっかくなので、これまで言語化してこなかった自身のデザインに対する考えを整理するのに使うことにした。
基本的には自分の頭がスッキリすれば充分ではありつつ、もし周囲あるいは将来同じDXDesign室のメンバーになる方にほんの少しでも参考になることがあれば、それはそれでラッキーだとも思う。
今回はデザイナーとしての、クライアントとのコミュニケーションについて整理する。
デザインで折衝する
"Design is a relationship between form and content."
IBMのロゴなどを手がけた著名なグラフィックデザイナー、ポール・ランドの言葉だ。
「デザインとは◯◯である」と色んなデザイナーが定義している中、個人的にこれ以上しっくりくるフレーズには出会っていない。
(デジタル領域を主戦場とする私が解釈しているため多少拡大した理解になっている懸念はあるが)デジタルプロダクトにおいても、形と中身、あるいは外側と内側といった関係性は常に発生しているように思う。
視覚的なデザインの部分はもちろん、プロダクトが完成し世に出ていくまでの検討プロセスにおいてもそれらは存在する。
具体的なケースでいえば、「ユーザーはこう言っている」と「事業者目線ではこうしたい」という主張がぶつかる時、こうした関係性を痛感する。経験上、どちらかのみ比重を置きすぎてうまくいったケースはない。ユーザー側と事業者側、両者の達成したいことの関係性を見極め、UI/UXの設計に落とし込むことが重要だ。
ある意味で、デジタルプロダクトデザイナーの仕事は、
折り合いをつけること。デザインで折衝する、それこそが腕の見せ所のように思っている。
そして、その折衝を行う上で重要なのがコミュニケーションなのは言うまでもない。
最前列にかじりつく
クライアントとのコミュニケーションにおいて、会社によっては営業やディレクター、PMなどの職種がフロントに立ち、デザイナーは控え目なポジションに固定されるケースもあるだろうが、我々DXDesign室のデザイナーは比較的前進気勢が強く、直接議論を進めるケースが多い。
なぜデザイナーが直接クライアントとコミュニケーションを取るべきなのか?理由はいくつかあるが、そのひとつに「一次情報を得やすい」というものがある。
(似た言葉に「一次資料」があるが、それとは異なる)
クライアントにおいては、プロダクトを担当する現場の方、事業観点でそのプロダクトに責任を持つ決裁者の方など、さまざまな視点から意見やアイデアが出てくる。議事録に残る文字列からも方向性は理解できるが、トーンやニュアンスなど、直接受け取る情報量とは比較にならない。
自らの耳で聴き、意見を受け取り、明快に回答する。そうして得られる一次情報の蓄積がデザインの細部に活きてくる。視覚的なデザインに、ニュアンスやトーンといった中身がしっかりと織り込まれたUI/UX設計が可能になる。
他にも直接的にコミュニケーションを行うことで、検討のスピードが早まるだとか、コミュニケーションを重ねることで信頼を獲得し、より大胆な意見を交換できたりだとか、良いことづくめだ。
であればこそ、デザイナーとしてコミュニケーション能力に無自覚ではいられない。クライアントと対話し、ユーザビリティを最大限考慮しながら折り合いをつける。プロダクトの品質を高め、効果を出していくために最前列にかじりつく。
会議そのものがうまく行こうと行かまいと、自分の振る舞いや発した言葉のニュアンスなど日々反省しながら、よりよい状態を目指していきたい。
コミュニケーションを磨く参考に
あくまで私自身にマッチした、というだけではあるが、クライアントと接する上でコミュニケーションを磨くのに役立ったものを以下にまとめる。
『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
同じ意見を言っているのに、人によって伝わり方が違うのはなぜなのか
納得できる意見を引き出す「問い」とは
共感される文章の書き方とは
などなど仕事上のコミュニケーション全般に活かせる内容が詰まっている。5年ぶりくらいに読んでみたが、やはりわかりやすくていい。
落語 (主に、桂枝雀)
個人的に、話術で人に何かを伝える上で、落語以上のものはないのでは、と思っている。
間の取り方、抑揚、聴く側の集中を自在にコントロールするような空気の作り方などなど、学べるところがたくさんあり、プレゼンやMTGでの振る舞いに自信が持てるようになったのは落語の影響が大きい。
仕事のために、というつもりで聴いてはいないが、スマホに入った桂枝雀全集(1-40)は頭の切り替えやリフレッシュに効いている気がする。
おすすめは「宿替え」「花筏」「高津の富」です。
最近はジャンプで「あかね噺」という落語の漫画もあるが、そちらもなかなか学びが多い。7巻の「仁」の話などは特に。
いかにも仕事関連というものだけでなく、刺激になりそうなものを自分なりに組み合わせながら、デザイナーとしての幅を出していきたいと思う。
DXDesign室の高木でした。