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ベランダに出ようとしたら、妻がパニックになった話

僕にはまったく想定できない理由で、妻はパニックになってしまうことがある。
今回は、僕の対応がまずくて結構深刻になってしまった一例を書いてみる。

1.パニックはいつも唐突に

在宅勤務も板についてきた2020年5月のとある金曜日。
その日は21時過ぎに仕事を終えました。比較的遅めの終業でした。

「はあ、疲れた」
ノートPCをパタンと閉じて、僕は身体を伸ばした。
一日中部屋の片隅でPCと向き合っていた疲れが、どっと押し寄せてくる。

よく頑張った、自分。
月-金ずっと在宅で仕事をするのは意外と消耗するのかも。

すこし休憩しよう。
食事前に、すこし夜風にあたってリフレッシュが必要だ。
楽しい食卓に疲れを持ち込みたくはなかった。
さらにその日は月齢6程度、西向きのベランダからは絶妙な角度で月が見えるはず。
想像しただけで、なんだか元気が出てきたぞ。

「ベランダでちょっと外の空気吸ってくるね」
妻にそう伝えて、ベランダに出ようと扉に手をかけた。

その時。

妻は、大パニックを起こした。

え?

なんで?

ベランダに出ようとしただけなのに泣き叫んでるの…?

結局、その夜は外の空気を吸うことは叶わなかった。
風にすこし当たりたかっただけなのに。
たった一度の深呼吸、それだけで良かったのに。
窓越しに見えた月は綺麗だった。

2.原因と対策

原因は2つあったと考えている。

①精神的に不安定な時期だった

その日の数日前から、妻は不眠の症状が出ていて調子が悪そうだった。
精神的に不安定な時期は決まって眠れなくなるようだ。

人一倍感覚が鋭いため、精神的な疲労が日常的に蓄積されるらしい。
ある一定の周期で不安定な時期が訪れる。
このような時期は、偏った思考に陥りがちになってしまうようだ。

注意深く、体調に気を配ってあげたほうがいい。
幸いなことに体調が悪いときは、眠れなくなるなど症状がわかりやすい。

これ以来、しんどそうな時はしつこいくらいに病院へと誘うことにしている。

②『ちょっと』という曖昧な言葉

そして、パニックの直接的な引き金となったのは、僕のこの言葉。
「ベランダで『ちょっと』外の空気吸ってくるね」

『ちょっと』

これはどれくらいの時間を指すのでしょうか?

妻は業務終了後、すぐに晩御飯を食べられるようにと、食事の準備をしてくれていた。(ありがたい!)
僕の見立てでは1~2分で「いただきます」といった雰囲気だった。

それを踏まえての「ちょっと」外に出る。
網戸を開けて、ほんの深呼吸くらいの気持ちだった。

しかし、そうは捉えてもらえなかったらしい。
理解していたはずだったが油断した。

妻に曖昧な言葉は通用しない。

『ちょっと』

妻の脳内で、この言葉は数秒から数時間までの幅をもっているみたいだ。
そして、その幅はどのような文脈においても狭まることはない。

一般的には深く意識せずに、文脈からなんとなく捉える言葉。
「『ちょっと』トイレ行ってくる」なら、数分間くらい。
「『ちょっと』遊びに行ってくる」なら、数時間くらい。
「『ちょっと』海外旅行に行ってくる」なら、数日間くらい。

こんな感じでざっくり捉えて、特に深く考えない人がほとんどではないかと思う。
僕もあまり深く考えることなく言葉を使っていたことに気付かされた。

詳しくは、妻視点で書かれたこちらの記事を参照いただければ嬉しい。
僕も勉強になる。

3.当たり前

自分の「当たり前」が誰しもが納得する「当たり前」とは限らない。

妻といると、そんな当たり前なことに気付かされる。

僕にとってはわざわざ「○○分間、ベランダに出る」と表現するのもはばかられるくらいの『ちょっと』のつもりだった。
もはや『刹那』に近い。そんな『ちょっと』。
僕にとっては。

発達障害の特性として、曖昧な言葉、複数の捉え方ができる言葉は理解し難い場合がある。
理解できない言葉が脳内をループし続けてパニックに繋がることもあるそう。

疲れているときなどは、つい曖昧な言葉を発してしまうことがあるけれど、気をつけていきたい。
ほんの少し気をつけるだけでいい。

「なんで伝わらないの?」と責めてはいけない。
悪気はないのだから。

4.最後に

妻は25歳の時に「自閉スペクトラム」と診断されました。
ふたりで生活していると想像以上に多くの困難にぶつかる日々です。
同じような特性で苦しんでいる方、支援されている方にとってすこしでも力になれたらと思っております。

いろんな考え方をお持ちの方がいらっしゃると思います。
ぜひ、お気軽にコメントいただければ幸いです。

※我々の記事はあくまでも、我々ふたりの体験談に基づく考え方や考察です。
詳しい発達障害の特性などは、専門家の記事などをご参照いただければ幸いです。

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