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『コンセント』『失恋回収省』の三墨正季先生は、あの後、何を描いたのか

第15回手塚賞

それは、1978年(昭和53年)のこと。
三墨正季さんという新人作家が、手塚賞に準入選しました。

受賞作は、『失恋回収省』『コンセント』。

手塚賞に2つの作品を送ったところ、どちらも良かったので「あわせて準入選」という扱いになったのでした。

「『コンセント』『失恋回収省』は同一作者のもの。二作とも力作、その力量に対して両作品をあわせて準入選という珍しい形がとられた」

週刊少年ジャンプ 1978年27号

 

余談:1978年の同期

『コンセント』『失恋回収省』の準入選と同時に発表されたのが、あの『ロックンロールベースボール』の原作賞入選でした。

『コンセント』『失恋回収省』の三墨正季先生、『マラソン八っちゃん』のみやたけし先生、『ロックンロールベースボール』の武石正道先生が、1978年上半期の同期組となります。

 

『コンセント』

三墨正季先生の受賞作『コンセント』は、『月刊少年ジャンプ』1978年9月号に掲載されました。

コレについて、ネットで「なんか記憶に残ってるけど、詳細が分からない漫画」みたいに語られているのを、たまに見かけます。

 

導入

三墨正季先生の漫画は単行本化されてなく、40年前の雑誌以外に読む方法もないですし、画像多めでネタバレ紹介させていただきます。

物語の始まりは、ある日、主人公の少年が、地面にブッ刺さった謎のコンセントを見つけたこと。

とりあえず抜いてみると、周囲の人間が、みんな停止しました。

コンセントを抜くと止まってしまうのなら、それは人間ではなく、電気で動く何かなのでは……。

ほかの場所にもコンセントがあり、抜くと周囲の人が止まって、挿し直すとまた動き出します。

みんなコンセントでうごいてるんだ
「このコンセントはいったいなんだろう!? どこにつながっているんだ!!」

そう思い悩んだ少年は、コンセントの元をたどっていきます。

 

ホラー

そうして、地下鉄の出入り口をおりると……。

「コンセントの群れだ!!」
ということで、無数のコンセントに追われる少年。

停止した街を、あらゆるところから伸びてきたコンセントが埋め尽くします。

本来、人が作った器具であるハズのコンセントが、群れをなして動いて人間の世界を押し流す……。
「コンセントに襲われる」という意味不明で問答無用の絵ヅラが、この読切の魅力です。

コンセントたちは ぼくを殺すつもりなんだ」と逃げる少年ですが……。

巨大なコンセントに襲われて、気を失います。

 

結末

そんな少年の姿を、何者かが見ていました。

どうやら、人間を観察している何者かが、わざとコンセントを発見させて面白がっていたようです。

彼らの実験も終わって、少年は元の場所に戻されます。

「夢だったのか」と安心する少年ですが、彼もまたコンセントで動いているのだったというオチになります。

いまの感覚だと、『世にも奇妙な物語』とかに近い感じでしょうか?
70年代の新人の読切で「人間が上位存在のオモチャで主人公は遊ばれていたオチの漫画」と括るなら、村井一忠先生の『悪魔の聖書』(少年チャンピオン 1975年11月15日増刊掲載)に通じるかも知れません。

とにかく、これを子供の頃に読むとインパクトがあったようです。

 

『失恋回収省』

この『コンセント』と同時に手塚賞に準入選したのが、『失恋回収省』という読切です。

こちらは、1978年の『少年ジャンプ 8月20日増刊』に掲載されました。

※『こち亀』のジャンプコミックス未収録(『下町奮戦記』収録)の番外編「両さんのサマー・トラベル」の初出誌

 

あらすじ

『失恋回収省』の舞台は、「失恋した心だけを抜き取る機械」が発明された世界。

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