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考察

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ジャンルレスに〈考察〉
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記事一覧

計画性と創造性はトレードオフの関係なのか?

これは、共に(広い意味での)ものづくりを生業とする私と夫が、時折議論するテーマである。 計画を立て、その通りに物事を進める能力 本筋には関係ないが、今、私の身分は育休中だ。しかし産休明けつまり生後8週間を過ぎた頃から、細々と仕事をしている。 ただし、稼いでよいと定められている給料はかなり少ない。そもそも乳児を見ながらの仕事、たかが知れている。全く仕事しない日もあれば、オンラインの会議が4時間続く日もある。平均して1日2時間程度の軽い仕事だ(もともと小さな職場で融通が効く

哲学、はじめました。

noteの別アカウントを作りました。 「考える小猫」というふざけた名前でやっています。笑 あれもこれも、いろいろな物事を(主にはちょっと小難しいことを)考えて語るためのアカウントです。「哲学」と言ってますが、いわゆる哲学ではありません。西洋哲学史を読んだりはしません。あれこれ考えるという、どんな時代にも共通する「哲学」をやりたいと思っています。ご興味のある方は見てみてください。 以下に、ここに至るまでの経緯、心境の変化などを書きます。 哲学する決意私は、生まれたときか

〈感情〉型と〈思考〉型の違いについて|ユングのタイプ論/MBTIの話

素人の考察にすぎないのですが、ユングのタイプ論/MBTI診断における〈感情〉型と〈思考〉型の違いについて理解を深めるべく書いてみました。エビデンスがあるわけではない点をご了承ください。 ◎ どちらかといえばユングのタイプ論よりもMBTIあるいは16タイプ診断に基づいた話です(そもそもMBTI自体がタイプ論をベースにしているのですが)。質問型のテストにしては出来が良いと思うので、まだの方はぜひ。 診断結果には4文字のアルファベットが表示されます。その4文字を①②③④とした

続々・5億年ボタンの考察|心理に潜むパラドックス

自分で書いた「5億年ボタンの考察」(以下)を読み返していたら、ふと別の論点を思いついてしまったので、忘れないように書いておく(以下の記事をベースにした考えですが、これは読まなくても問題ないです)。 ◎ おさらいで「5億年ボタン」の条件を再掲しておこう。 あなたの目の前に一つのボタンがあります。これを「5億年ボタン」と呼びます。以下の条件の場合、あなたはボタンを押しますか、押しませんか? - 条件1.ボタンを押すと何もない異空間へ飛ばされ、そこで5億年過ごさねばならな

〈箱の中のカブトムシ〉と〈シグナリング〉

ニュートン別冊「哲学」で、「箱の中のムシ(カブトムシ)」という思考実験を知った。哲学者ヴィトゲンシュタインが考えたものらしい。 誰もが箱を一つだけもっているとします。そして、その箱の中身には「ムシ」と呼ぶものが入っているとします。ただし、自分の箱の中身を見ることができますが、他人は自分の箱の中身を確かめられません。 (ニュートン別冊「哲学」より) ※ニュートンでは「カブトムシ」を「ムシ」と表記 自分の箱の中のカブトムシは、自分にしか見えない。言葉を尽くして説明しても、そ

なぜ“難しい本”を読むのだろう

以前から気になっていたこの問いを、普段ほとんど読書をしない夫にぶつけてみた。答えが面白かったのでメモしておく。 ◎ 「“難しい本”って、どうして読む必要があるんだと思う? 例えば同じ内容を『漫画でわかる〜』的な本で読むのって、ダメなのかな?」 このことをずっと考えていた。 私自身「できるだけ原本を読みたい派」なのだが、その理由をうまく説明できずにいた。「なんとなく、そのほうがいいような気がするから」としか言えなかった。 それと最近「『読書』といってもいろいろあるよな

YOASOBIの音楽が気持ちいい理由

Twitterで関ジャムの「2020 年間ベスト10」という回の情報を見て、TVerで視聴した(この番組見たの初めて。普段ほとんどテレビを見ないので……)。いしわたり淳治、川谷絵音、蔦谷好位置という3人のプロデューサーが、2020年にリリースされたうちお気に入りの10曲を紹介するというもの。面白かった。 その中で、いしわたり淳治さんがYOASOBIについて話していた内容がとても興味深く、少し掘り下げて書いてみたくなった。 (うろ覚えで書いています。若干言葉は違うかもしれま

「美しい」とは何か

この世界は、自然が生み出したものの中で、最も偉大で、最も美しいものです。そして、人間の精神は、この世界の観察者にして賛美者であり、この世界の最も偉大な一部です。それは、われわれだけの永遠の所有物であり、われわれが存続し続けるかぎり、われわれと共にあるのです。 ──セネカ『人生の短さについて』 以前から書きたいと思っていたことです。 私は日常的に「美しい」という言葉を使うのですが、「美しい」という形容詞には、その他の似た言葉、例えば「きれい」「かわいい」「かっこいい」等とは

続・5億年ボタンの考察|記憶の消去について

前回書いた5億年ボタンの考察は、ある意味“逃げ”みたいなものだった。 この選択問題を真正面から議論しても埒があかないと思って書いたが、本当に考えるべきことから逃げたとも言える。 実は、ここで書いた「他者」は、ある別の難問からヒントを得ている。「ニューカムのパラドックス」というものだ。 問題: 超知的生命体が置いた、箱A、箱B、と2つの箱がテーブルの上にある。箱Aの中には、現金100万円が入っている。箱Bの中には、現金1億円が入っているか何も入っていないかのどちらかである

5億年ボタンの考察

「5億年ボタン」という究極の選択問題がある。以下のようなものだ。 あなたの目の前に一つのボタンがあります。これを「5億年ボタン」と呼びます。以下の条件の場合、あなたはボタンを押しますか、押しませんか? - 条件1.ボタンを押すと何もない異空間へ飛ばされ、そこで5億年過ごさねばならない。あなた以外の他人はそこにいない。あなたは空腹や疲れを感じることがなく、眠らず、死ぬこともない。あなたができることは、動く、喋る、考える、メモをとるのみ。 条件2.5億年を過ごしたら、5億

幸福について

(まったく深い意味はなく、ただの考察ですので、悪しからず。) ショーペンハウアーが『幸福について』で言っていたように、幸福というのはしょせん自分の脳が感じるものだから、自分さえ幸福であればいいのだ、という意見はもっともだと思う。 本当にその通りで、多くの不幸は他人(広い意味での他人=自分以外。家族も他人)との関わりにおいて生じるものであるから、他人を意識せずに自分だけを見つめていればいい。 だって他の人が何を考えていようと、自分が気にしなければ、感じなければ、存在しない

暗号と謎解きにおける公平性

暗号と謎解きの性質の違いについては少し前から意識していた。以前書いたエントリーでは、“メッセージ性”を重視するかどうかによって謎解きのスタンスが変わると考えた。 解く側に「私はメッセージを受け取った」という意識がある場合、そのメッセージ性を重視するので、丁寧に読み取ろうとする。一方で、解く側が暗号解読者(わかりやすく言うとハッカーのようなスタンス)の場合、「私は今からメッセージを破壊する」と考える。この意識の違いは大きいのではないか。(私は多くの場合後者の考え方をする。)

暗号と謎解きの違い

暗号と謎解きの違いについて考えています。 暗号は、送信者と受信者が鍵を共有する(細かく言えばパターンによって違うけどざっくりと話します)。あらかじめ鍵を知っている受信者は、それを使うことで容易に読める。鍵を共有するのは二者の間であり、第三者には読ませないことを目的とした秘密のメッセージのやり取り。 よって第三者は、解読前の文章を入手し、それをなんとかして解読しなければいけない。アルファベットの頻度分析が代表的な例。その時点では暗号化された方法すらわかっていないので、さまざ

推理と交渉の共通点|相手の知性に憑依する

デュパンが『盗まれた手紙』で、ホームズが『マスグレーヴ家の儀式』で語っていたが(そういえばドルリー・レーンも言っていたかもしれない)、「自分の知性を相手の知性と一致させること」が推理においては重要なのだと。 いくつか推理小説を読んできて、現時点ではこれが、推理する上で最も大切かつ難しいことではないかと感じている(あるいはそう感じるのは、私が苦手だからかもしれない。簡単にできる人はたぶんいる)。 間違えやすいのが「自分だったらどうするか?」という考え方。一見もっともらしいけ