Agatha Christie

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一体、誰が演じている?|演出型ミステリーの魅力

一体、誰が演じている?|演出型ミステリーの魅力

■アガサ・クリスティー『予告殺人』 「殺人をお知らせします──」 突然地方紙の個人広告欄に掲載された、ギョッとするような広告。殺人が起きること、その時間、場所が「予告」される。 さてこの「お知らせ」通りに殺人は起きるのだろうか? ポアロシリーズの人気作『ABC殺人事件』を彷彿とさせるような、センセーショナルで非現実的な事件だ。私はまずその、読者を一気に惹きつける設定に「これこそアガサ・クリスティだなぁ」と感心した。難しいことを抜きにしたスリルが体験できる。 殺人犯は

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文字が奏でる不協和音

文字が奏でる不協和音

■アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』(途中からネタバレ) 私がアガサ・クリスティを読む動機は「ミステリーだから」だった。そんな単純な理由で、「ミステリーではない」この作品を読むのはずっと先延ばしにしていた。 『春にして君を離れ』について未読の方にまず伝えたいのは、 〈できるだけ前情報なしで読んだほうがいい〉 ということだ。これはアガサ・クリスティの著作全般について言えることなのだが、本作が「ミステリーではなくサスペンス」だとしても同様に「ネタバレ厳禁」である。

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「若くて美しいというのは、罪なことです」

「若くて美しいというのは、罪なことです」

■アガサ・クリスティー『ゴルフ場殺人事件』(最下部にネタバレあり) 「無分別もいいところだが、それはきっと若くて、美しい女性なんでしょうな。若くて美しいというのは、罪なことです」(P.159) 『スタイルズ荘の怪事件』に次ぐ、ポアロシリーズの二作目。 ある意味でとてもミステリーらしく、同時にとても物語らしい。ミステリーが好き!……というわけでは“ない”人にとって、読みやすい小説だと思う。 この頃のクリスティはまだ、ホームズとワトスンを意識しているような気がする。ポアロ

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「迷宮入り事件」

「迷宮入り事件」

■アガサ・クリスティー『火曜クラブ』 「迷宮入り事件」  レイモンド・ウェストは満足そうに一座を見まわした。 初めてのマープルシリーズ。原題は”The Thirteen Problems”、訳すなら『十三の事件』といったところかな。原題もかっこいいのですが『火曜クラブ』という邦訳もなかなかイカすなと思う。 ミス・マープルはポアロにひけをとらない人気らしい。いわゆる「安楽椅子探偵」で、小さな田舎町に住む普通の老女だが、人間を観察する眼に非常に優れていて、ぴたりと事件の真相

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庭園という魅惑

庭園という魅惑

■アガサ・クリスティー『ハロウィーン・パーティー』 飛び飛びで読んでしまったので、なかなか人物も覚えられず、正当に評価できているか怪しい。内容については深くコメントしません。ポアロシリーズ晩年の作品ということで、成熟していて、教訓めいた話は多めかな。 あまり関係ないのですが、庭園が舞台として出てくるので、そこに思いを巡らせていました。 ポーの短編「庭園」(のちの「アルンハイムの地所」)や、少し違うけれどアガサ・クリスティでいえば『ポアロのクリスマス』に出てきた箱庭。のよ

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サー・チャールズ・カートライトの演出

サー・チャールズ・カートライトの演出

■アガサ・クリスティー『三幕の殺人』 物語を読みながらずっと拭えない感覚があった。この書かれた物語自体が、ナレーション自体が、物語の中の物語のように感じられたのだ。 つまり、私は「アガサ・クリスティ著『三幕の殺人』を読んでいる」のではなくて、「アガサ・クリスティ著『三幕の殺人』の中に書かれた、チャールズ・カートライト演出【三幕の殺人】という芝居を見ている」という感覚だ。 一枚モヤがかかったようなその朧げな光景というか。『幻の女』を読んだときと少し似ている。 それは、こ

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「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている」

「殺人は結果なのだ。物語はそのはるか以前から始まっている」

■アガサ・クリスティー『ゼロ時間へ』 アガサ・クリスティの魅力の一つである「物語性」が素晴らしく発揮されていました。とても面白かった。 殺人事件が起きる瞬間を「ゼロ時間」とし、そこに向かって収斂していくストーリーを描く。普通の推理小説ならまず事件が起きて、聞き取り調査をして証拠品を集めて、推理して……となるが、それはおかしい!という著者の信念が感じられる。 その考えは、これまでクリスティ作品を読む中でもたびたび感じてきたものだった。例えば『ナイルに死す』では事件が起こる

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ピリッと利かせたワンアイデア

ピリッと利かせたワンアイデア

■アガサ・クリスティー『ポアロ登場』 長編で読むポアロはどこか根無し草的というか、家庭もなければ住まいもハッキリせず、ヘイスティングズ以外に友達がいるのかな……という感じですが、この短編集は違った。長編とは違うポアロが見れる。と、いうか、ほぼ別人と言ってもいいかもしれない。笑 翻訳者のさじ加減なのか、口調がいつもの気取ったベルギー人風ではなくて「〜だぜ」って感じで。誰だお前は!ホームズじゃん!です。笑 その点は残念なのですが、短編も面白い。 一番好きだったのは『安アパ

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名探偵ポワロ版『五匹の子豚』を観ました。原作も面白いけど映像もいいです。雰囲気が凝っていて、気合いが入っている。ポワロの語りもイケてる。クリスティの魅力が詰まってますね。しかし絞首刑は映像で見ると辛いなぁ。あと、アミアスがイケメンで美味しい(笑)もっとオジサンを想像してたよ。

名探偵ポワロ版『五匹の子豚』を観ました。原作も面白いけど映像もいいです。雰囲気が凝っていて、気合いが入っている。ポワロの語りもイケてる。クリスティの魅力が詰まってますね。しかし絞首刑は映像で見ると辛いなぁ。あと、アミアスがイケメンで美味しい(笑)もっとオジサンを想像してたよ。

「あの人は、あんなに私を愛しはしないだろう」

「あの人は、あんなに私を愛しはしないだろう」

■アガサ・クリスティー『杉の柩』 なんとも読ませるストーリー。先が気になって止められないという意味では、今までで一番だったかもしれない。 あらすじはこんな風に書かれている。 婚約中のロディーとエリノアの前に現われた薔薇のごときメアリイ。彼女の出現でロディーが心変わりをし、婚約は解消された。激しい憎悪がエリノアの心に湧き上がり、やがて彼女の作った食事を食べたメアリイが死んだ。犯人は私ではない!エリノアは否定するが…嫉妬に揺れる女心をポアロの調査が解き明かす。 (ほうほう

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