VRChatは「どのような」教育的利点を産むのか?
VRChat - 全世界最大同時アクセス数 9.2万人、どのVR最大手プラットフォームでも2万人弱ほどの数を圧倒するようなプラットフォーム。
今年の1月頃から、私はこの「VRChat」を使用し、英検の二次試験の練習として使用する試みを行いました。
私は前回、メタバース「を使用した」高校と題して、「メタバースを勉強の場で使われる」という記事を見つけたことと+感想と利点を述べさせていただきました。今回は以前と繋がるようなテキストとなっています。もし見ていない場合は、ぜひご覧ください。(前半は住民向けではありません)
まえおき
私は以前から、「VRChatはどのように教育的目的で使用されているのだろうか?」と1年前ほどから考えていました。
前提として、VRChatにはさまざまな「イベント」が開催されており、例えば、VRChatに初めて来た初心者さん向けの交流イベント、自分たちの好きなアバターのアイドルグループの交流イベント、はたまた、お姉さんから授乳を受けるイベントなど、様々なイベントがあります。
そのイベントの中にも、学術系のイベントがあったり、エンジニアリングを主にしている人たちと集まって交流するようなイベントがあります。
しかし、私は「勉強(基礎的学術・論述を習う事)を行うようなイベント」は少ないと一年間を通して考えました。つまり、上で挙げたようなイベントは、「前提知識がある程度ある人向け」のイベントが多いということです。このようなイベントはなかなか基礎が固まっていなかったり、年齢による学習全体の習熟度の違いによる知識のギャップがあると(特にこれ。)、なかなかイベントの輪に入りずらいと言うことがあります。(これらの問題は、イベント運営側が初心者向けに動画を配布しているケースもありますが、学術系のイベントも含め、VRChatでは成人しているプレイヤーが大多数派のため、高校数学等は分かっている前提で話される場合が多いです)
こういう事もあり、「高等教育」や「試験勉強」での用途で開催されるイベントがない(私の把握しきれている限りだと)という事を知れました。
そのため、今回、この記事の主題でもある、実用英語技能検定2級の二次試験をマンツーマンでトレーニングするという試みを行ってみようという事となりました。
1.準備
準備はとても簡単でした。
パソコン(ゲーミング)、Unity(VRChatにアップロードする過程で必要)、Blender(3Dモデル作成ソフト)、Paint.netやワープロ(Microsoft Word)(英検の二次試験の問題を作成するために使用)、英検2級の二次試験例問その他諸々…
これだけあれば十分に練習ができる空間が出来上がります。
もし、少しBlenderを触れるのであれば上の様な簡単なワールドは作れます。
ワールドの完成
最終的に、ワールドは完成し、いつでもマンツーマンで始めれるワールドを完成させました。
このワールドでは、あらかじめ問題カードの画像が出るように設定されているURLを準備し、それを貼ると問題カードのオブジェクトにその問題の画像が張られるギミックなども作成しました。
今回、問題や、教室ワールドを作成するにあたって、特に「できるだけ面接本番のような雰囲気を出せるようにする」様に心がけました。この理由は後程お伝えします。
と言う事で、準備が完了しました。ここまでで7日間ぐらいです。(期間は少し長かったですが)
2.実践
というわけで、完成した後、相手(高校生)と日程等を調整し、マンツーマンで練習を始めました。
1日目:LT(ライトニングトーク)+基礎対策
まず、最初の練習では、「二次試験を受ける流れ」をスライドを使用し、LT(ライトニングトーク)を行いました。
このLTでは、私の知識をふんだんに使用し、「どのように二次試験の面接まで到達するのか?」かを説明するなど、相手が当日、会場についても困らないようにするためのLTとなりました。
このLTでは、例えば…
「受検証の他にどのような物を持ち込んでも良いのか?」や、
「車の送迎は本当にダメなの?」、
「受検証に貼る証明写真はどれぐらいのサイズ?」など、些細な疑問を解決できるようなLTにしました。
LTが終わった後、すぐに練習を始めました。
最初の練習では、「二次試験の問題カードはどのような形になっているか。」「どのような質問が来て、それに対する応答は問題カードのどこを参考にすると良いか。」などの、質問に対する対策方法を教えました。
私は今回、「できるだけ面接本番のような雰囲気を出せるようにする」という意識で準備をしたため、問題カードは実際に二次試験で行われる形式を私の経験則と英検公式が配布していた資料を元に作成しました。
この、問題カードを作った事は今回の実践で特にこだわった所です。
普通、英検の二次試験の対策は一人でやったり、先生と英検対策本にある例題をコピーをしてやることが多いと思いますが、私は、実際に使われている形式を使用しての対策が一番効果的だと考えました。そのため、今回の実践で一番こだわった所となっています。
という訳で、この一日は二次試験の流れのLT、質問に対する対策方法などを教えました。次の日に行きます。
2日目:実際に練習
2日目、実際に面接室を模した部屋で相手と面接練習を開始、
英検二次試験の面接室では、面接官と受験者の間が空いている部屋になっていることがあるため、上の画像のように、受験者と面接官の間を空けたり、机の上に「INTERVIEWER(面接官)」と書かれた置物を置いて、実際の部屋をできるだけ再現をしました。
面接練習が終わった後、LTを行った講義室(のようなところ)「ここは…こう答えたほうが良かったかもね~!」や、「結構答えられていたけど、文法が崩れていたかも~…」などなど、振り返りを行い、相手と改善点を話合いました。
基本、面接練習は、上記のように行いました。次の日に行きましょう。
3日目:自作問題を使って練習
少し間が空いて、5日後ほど、自分が作った問題で練習しました。
3日目の練習では、この問題カードを初見で見ても、情報を正しく読み取り、処理することができるかを確認しました。
内容は、かなり専門的な知識が求められてくる問題となっていましたが、英検2級ではたまにこのような問題が出てくることが多いです。そのため、このような問題を作成しました。
相手はこれ(問題カード)を見て、練習中に笑ってしまいました。んまぁ…うん…(笑)
ですが、これも一つ練習となりました。次の日に行きましょう。
4日目:最終チェック(2/17 受験日前日)
4日目、また間が空いていましたが、二次試験受験前となったので、最後の練習を開始。
その練習の前に、超早いLTの振り返りを行い、受験するにあたって不備がないかを確認しました。
練習は、3日目でやった問題を練習し、振り返り、
また、自分が用意した新しい問題を練習し、また振り返りをしました。
これで、VRChat内での二次試験の練習を終えました。
次に、この実践の評価と結果に関してお話します。
3.評価と結果
実践を行い、試験を受け…2/27、ついに、お相手さんの合格発表の日がやってきました…
結果は…
見事!余裕を持って、英検2級に合格されました!
546点は、これはかなり大きい点数です。
上を見る限りだとリーディングやQ&Aで若干の失点はありますが、これは十分、余裕を持った合格ができているレベルです!(レベルの到達具合では準1級程度)
本当に素晴らしい結果を二級で残せているなと自分も感慨深い状態にあります…!
という訳で、今回はお相手さんとVRChat内で練習を行い、無事に、合格に導くことができました!
それでは、ここまで、実際に自分がVRChatを教育的活用をした結果を上記の通り示したいと思います。
それでは、導入が長くなってしまいましたが、今回の記事のタイトルとなっている「VRChatは「どのような」教育的利点を産むのか?」を、今回の実践と経験を踏まえ考えていきたいと思います。
4.VRChatを使用する教育的利点を考察
それでは、今回のVRChat上での練習を含め、他のイベント・ワールドの例を出しながら、どのような教育的な利点があるか考えていきます。
1.遠隔から仮想空間を使用して空間的特性を保ちながら教育を受けることができる。
まず、仮想空間を使用し空間的特性を保つことができるのがポイントでしょう。
普通、オンライン英会話をする際は、「画面と画面」と向き合って話すことが大半だと思いますが、仮想空間を使用すれば、空間的特性を保つことで現実で実践する際により現実性が上がり、会話がしやすくできると考えられます。
今回の練習を例にすると、より「英検二次試験面接室の雰囲気」を醸し出せるようにワールドを作成し、面接で求められる能力を向上できるように工夫しました。
面接官側は、
実際の面接官のような雰囲気・空気感を出すことに焦点を置いた。
実際の面接部屋のような雰囲気を出し、受験者に慣らさせる。
などを意識し、逆に受験者側は、
問題カードを英検二次試験の実際の会場で使われる形式での練習で、当日行われる雰囲気を醸し出すようにした。
当日、面接を受けても緊張しないように、仮想空間上の試験で慣れさせ、当日は冷静に面接官の質問を聞けれる環境を作れるように工夫。
などを意識しました。
一番、これによる教育的利点が大きいと考えます。
経験則で話してしまう事にはなりますが、
私が英検2級を受けた際は、このようなトレーニングなどは行っていなかったため、ギリギリでしたが、今回のような実戦形式で行うことにより、大幅なスコアの伸びが今回の実践で着実に出てきました。(客観的な評価ではないため注意)
この前提を元に、実際に相手に聞いてみました。
聞いてみると、「今回の練習によってかなり緊張と不安が解消できた」という結果を聞くことができました。
他に、英検公式が公開しているバーチャル二次試験は、不安になる人が多いんじゃないか、という意見もありました。(これは自分も感じたことがあります)
これは、ディスプレイ上では感じれない、「雰囲気(Atmosphere)」を空間上で感じれないために、不安になってしまうのではないでしょうか。
このバーチャル二次試験は、面接官や受験者の声がそのまま収録(減衰がない)されているため、なかなか感じにくいものとなっています。これが不安要素を作っている原因になっているのでしょう。
今回の実践では、そのような不安要素をなくすためにVRChatを練習に使用したというのもあります。
これは、VRChatには空間による音の減衰があるため、現実世界のような空間を再現できるためです。
もし、これが通常の英会話であれば、スピーカーやヘッドホンを通じて音声を聞くことになりますが、これにより、より二次試験に対するイメージがわきやすくなります。
このことから、やはり、仮想空間の空間的特性・没入感が、「緊張緩和」や、「不安解消」が、スコアの伸びに間接的、相関的にかかわっているのではないかと考えます。
2.大規模施設から、ちっちゃな部屋まで、費用はほぼなし。
初期費用は高いですが、(快適にやるには30万円は余裕で必要)
仮想空間上(VRヘッドセットを使用)で、様々なシチュエーションの「面接室」から大学の「講義室」まで、幅広く、無料で作れることは大きなメリットとなりえます。
これが一番、仮想空間を使うメリットだと思います。
現実ではこのような講義室を作るまで10億や20億必要になりますが、仮想空間では、諸費用(パソコンの購入費用、業者に作成代行するなどなど)を入れなければ、ほぼ無料になります。
ちなみに、最悪VRヘッドセットのみでも十分、VRChatを使用しての練習は可能ですので、ヘッドセット(最低3万円ほど)とインターネットさえあれば、どこでもできるっちゃできます。
それでは、実際にその利点を確認するために、実例を確認していきましょう。
これは、「VR宇宙博物館コスモリア」という、VRChat内にある宇宙博物館ンとなっています。
この博物館では、人類の誕生から、アメリカとソ連による開発競争まで、「幅広い挑戦の軌跡」を展示しています。これは、一番、「大規模な施設を誰でも作れる」という点が実際に使用されている例と言っていいでしょう。
例えば、このように、ロケットの模型や、実寸剝製など、作成に多額の費用が掛かるような物を仮想空間で作られています。
他にも、「トライボロジー」と言う、摩擦に関する学問も、VRChat上で動的に学べたりします。
このワールドの良い点は、動的なギミック(現実では難しい物)を使用し、分かりやすく教養を身につけれるところです。
このワールドも、先ほど紹介した「VR宇宙博物館コスモリア」と同様に、現実では多額の費用がかかってしまうようなギミックも、ほぼコストなしで作れています。
このように、仮想空間(VRChat)を使用することによって大規模な施設を、ほぼ費用が掛からない・誰でも作成できることは利点と言えるでしょう。
5.結論
上の考察などから、「VRChat(仮想空間)を使用した教育は、ビデオ通話より、より主流になっていく」と考えます。
現実と仮想空間を比べてしまうと、やはり現実の方が対面で表情や動作などを遅延なしに、正確に行うことができてしまうため、現実の方が優性となってしまいますが、ビデオ通話と仮想空間を比べると、仮想空間の方が「空間性」に大きな利点が生まれます。
この、空間性の優位性に関しては、今回の実践で「緊張の緩和」として確認することができました。
今回が最初の実践となったため、正確で、尚且つ客観的視点ではないかもしれませんが、これからもこのような実践を基に、仮想空間を教育目的で使用する利点をさらに考えていきたいと思います。
参考文献
JSTAGE - バーチャル学会発表概要集2023
VRにおける世界史教育の実践及び考察 - 飛鳥山 はるか
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vconf/2023/0/2023_213/_article/-char/ja
ソーシャルVRを用いた博物館型の天文宇宙教育の実践と効果
- えんでばー ・ 天文仮想研究所
https://www.jstage.jst.go.jp/article/vconf/2023/0/2023_194/_article/-char/ja
あとがき
という訳で、「今回はVRChatを教育として使ったらこうなったよ!!!」
と言う事を書けました。
ちなみに、今回のお相手さんは無事合格することができ、一生残る資格を取れています。私もこれは本当にうれしかったです。一週間前から、二次試験の合否が気になってずっと緊張していたので、合格という話をお相手さんから聞いたときは本当にほっとしました。
んなわけで、Tinkeでした。また会おうね~
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