見出し画像

青天舎文庫のこと

母 濱口さえこが月替わりでセレクトした絵本を「青天舎文庫」と名付け、店の一角に並べています。
手に取ってくださるお客さまとともに、わたしも店主として、娘として、1人の客のように毎月の絵本を楽しみにしてきました。
営業を始めてからもうすぐ1年となる春の日に、母と娘(言い換えると店主と最強アシスタント)、2人で絵本を広げて振り返ってみました。
まずは、青天舎文庫ができるまでについて、おしゃべりした内容をお届けします。

🔹ちな
オープン直前の4月の初め頃、「お願いがありまして。絵本が好きなんです。」って唐突に連絡があって。

🔸さえこ
そうだったっけ?

🔹ちな
うんうん。なんとなく本を置きたいなぁとは思っていたけど、どんな本を、とかまで考えが及んでいなかったところにそんな話をもらったのでとても嬉しく、二つ返事でお願いしました。
どういうきっかけで、本ではなく絵本を、しかも月替わりでセレクトしようと思い至ったのか、からきけたら。

🔸さえこ
これは、遺言だと思っていて。

🔹ちな
えー(笑)

🔸さえこ
そうは思ってなかったでしょう?

🔹ちな
うん、全く思ってなかった。

🔸さえこ
でしょー、遺言かも、っていうところがあって。いつかは絶対死ぬじゃない。で、伝えられることも、もう自分の言葉とか離れてもいいし、自分の言葉だと限りがあるし、言葉以外、自分の行動にも限りがあるし。それを伝えられる方法として、選んでいるっていうのもあって。
これは伝えとかなきゃっていう。

🔹ちな
それは、店に向けてというより、わたしに向けて?

🔸さえこ
そうそう。それ(絵本)を通じて。でも、ちなに向けても店に向けても同義でしょう?誰かに、誰か1人を対象に、すごく大事に伝えたことって、広まると思っていて、っていう意味での、あくまであのお店として。
もういい年だしね、遺言だったのよ。

🔹ちな
まだ死なないでください(笑)

🔸さえこ
でも自分ができることとして考えた時に、言葉はあまり信じてなくて、言葉は誤解のもとでもあって、でも言葉を使わざるを得なくて、っていうのが人間なので、だからそこに絵があることによって、言葉を補ってもくれるし、広げてもくれる。
青天舎は音楽のある空間だから、音に関しては場自体が作ってるよなあと思って、香りとかはたべもので満足できる場所だとすると、さらに言葉や絵があの場所にあったら素敵だよなっていうのと、まあそもそも自分が好きっていうのもあって、絵本なんだけど。
伝える時に、バラバラっとしてるものを一冊の本だけで伝えるよりも、何冊かあることによって一個のテーマなりストーリーなりでみたりよんだりすることによって、あ、そういうことかって。同じことを伝えたいにしても、なんか変わっていくとか深まっていくよなあと思っていて。
そういうことだったのよ。

🔹ちな
まさか遺言だったとは。
置けるスペースが限られていることや、いつ来てもらっても新鮮に楽しんでもらえるように、移り変わる季節もともに楽しんでもらえるように、といろんなことを考えてもらった上で、月替わりで数冊ずつのセレクトという形にしてくれて、この小さな本棚を楽しみにしてくださる方もいてくださってとてもありがたいなあと思っています。
膨大な量の遺言を受け取ってしまった…

🔸さえこ
あれも言っとかなきゃ、これも言っとかなきゃって。

🔹ちな
絵本ってこどもが読むものみたいなイメージがあるかもしれないけど、わたしが小さい頃に読んでもらっていたシミのついたような絵本を久しぶりに開いて、こんな話だったのか、と新しい発見があったり、今だからこそ心が動かされるものがあったりして、おとなが読む絵本もあるんだなあと思った。

🔸さえこ
わたしさ、いまつくづく思ったけど、そもそも絵本がこどものものっておもってないんだ。
成長してないままだってことだね。
ちゃんと楽しい。

🔹ちな
確かにちゃんと楽しい。
今いないいないばあ読んでも楽しいと思うんだよね。

🔸さえこ
うんうん。
ほんと楽しい。

🔹ちな
でもそれって常識ではなくて、わたしもこういう環境じゃなかったら日常のなかで絵本を読もうとは思わないだろうな。
多分そういう人の方が多いけど、絵本しか店に置いていなかったら、まあ開いてみようかとか、こどもはもちろんだけど、おとなもたのしめて心が動かされるような、他にはない力が絵本にはあるなあと思う。

🔸さえこ
スマホ、新聞、雑誌とか、情報に溢れていて、そういうの疲れちゃう、っていうときもあるじゃん。
そもそも世の中はもうちょっとぐちゃぐちゃしていたり広がっていたり、収拾がつかなすぎて
いるもののはずなのに、これはこうです、っていう情報に溢れていて。
そうじゃなくて、「あ、全然違うのか」っていうものに触れる時間があってもいいよなっていうもののひとつ、かなあ。絵本は。

🔹ちな
読んでくれた方がほっこりして、感想を伝えてくれたりして、「ね、ね、いいですよね!!」って。共有できてとても嬉しい。
わたしからは、こういう本は置かないでとか、こうして欲しいという希望は特に伝えず、完全にお任せでやってもらっていたのだけど、それがよかったなあと、大変ありがたいなあと思っております。


明日から月ごとに、青天舎文庫に並べた絵本について振り返っていきます。
どうぞお楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?