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202208 青天舎文庫

母 濱口さえこが月替わりでセレクトした絵本を「青天舎文庫」と名付け、店の一角に並べています。
手に取ってくださるお客さまとともに、わたしも店主として、娘として、1人の客のように毎月の絵本を楽しみにしてきました。
営業を始めてからもうすぐ1年となる春の日に、母と娘(言い換えると店主と最強アシスタント)、2人で絵本を広げて振り返ってみました。 


8月のテーマ 新しい目

旅の絵本
安野光雅

おおきな木
作・絵 シェル・シルヴァスタイン
訳 ほんだ きんいちろう

美しいってなんだろう
矢萩多聞・つた

糸の泉
しゅんしゅん

🔹ちな
この月の4冊で最初に選んだのはどれ?

🔸さえこ
「美しいってなんだろう」だったかな。
買ったばっかりだったから。
絵本ではないかもしれないけど。
みた?カバーを取ったところの表紙。

🔹ちな
つたさんの手だよね。

🔸さえこ
うん、たぶん。
装丁家のお父さんとその娘 つたさんの本。
親子で語り合って、章の最後に「娘のつぶやき」が綴られてる。
「美しいってなんだろう」と、娘が不意に訊ねる対話から始まっているんだけど、切り口がいくつもあって、1個だけ読むのでも面白いなと思って。

🔹ちな
うん、面白い。

🔸さえこ
全部読まなくても、興味があるのだけ読んでもいいかなって。

🔹ちな
「墓」とか「火」とか「言葉」とか。

🔸さえこ
この目次だけで面白い。
自分が美しいと思うものが並べられていて、目次にぐっと心を惹かれる感じ。
いろんな人に「あなたが美しいと思うものはなんですか?」と聞いて、並べたら面白いだろうなと思う。
自分だったらどういうふうに語るかなあとか。
永遠の自分のテーマかもしれない。

🔹ちな
前に「人は美しいものと出会うために生まれてきたんだと思う」って言ってたよね。

🔸さえこ
そう。で、その時の「美しい」って、何を美しいと思うかっていうことも含めて。
楽しいとか幸せとかって、相対的なことだったりするけれど、
「美しい」はもっと広いかもしれない。
単に「きれい」とか、見た目だけのことではなく、
美しいものを美しいと思うには、美しいって何かなって常に考えていないと出会えない。

🔹ちな
美しいものに気付けないと、美しいと思えない。
それが、新しい目。

🔸さえこ
そう。
この本、ほんと素敵。
装丁も本当に素敵。

🔹ちな
これを読んでくれたお客さんが、また続きを読みたいですって言ってくれて、次の月も置かせてもらった。

🔸さえこ
もう、ずっと置いておいてもいいくらい。

🔹ちな
次、「大きな木」

🔸さえこ
これ、切ないんだけど。
こんなの、ちっちゃい子に読んでどうするのっていう話だと思うんだけど。

🔹ちな
これはずっとウチにあったやつだから、ほんだきんいちろうさんの訳。
最近、村上春樹訳のものも出たよね。

🔸さえこ
そっちも読んでみたい。

🔹ちな
わたしは他のお店に置いてあるの読ませてもらったの。
木の幹に書かれた名前が、本田さんのは「たろうとはなこ」なんだけど、村上春樹のは「ぼくとあのこ」だった。

🔸さえこ
それは随分違うね。

🔹ちな
ね、文章では名前は出てこないんだけど、絵の中で「たろう」って。
原文がどうなってるかも気になる。

🔸さえこ
次は、「旅の絵本」
これは、いつまででも眺めていられる。

🔹ちな
1ページの中でいろんなことが勃発しすぎていて。
でも、小さい頃見てもあんまり面白さがわからなかった気がする。

🔸さえこ
そうだね、やっぱりちょっと大人向けなのかな。

🔹ちな
赤ずきんちゃんとか、大きなかぶとか、いたよね。

🔸さえこ
優しい色が、小さい子には「ミッケ!」「ウォーリー」とか、はっきりした色のものの方が楽しいのかな。
でもこの声が聞こえてきそうな感じとか、マラソン大会してるとか、お魚屋さんだ、とか、自分で勝手に考えていい感じ、俯瞰して神の目みたいに見れる感じ。
それで、全ページにいるこの人を探すのね。

🔹ちな
うん。馬に乗ってる人。

🔸さえこ
これなんか、ゴッホの絵に出てくるやつじゃないかなあとか、これはスーラの絵に出てきたやつじゃない?
いろいろオマージュがあるんじゃないかな。

🔹ちな
なるほど。

🔸さえこ
騙し絵みたいになってるとこもある。

🔹ちな
遠近法で、おうちの屋根に向かって輪投げしてる。

🔸さえこ
エッシャーの世界だね。
こことかも、現実にはあり得ない。

🔹ちな
あ、ほんとだ。

🔸さえこ
もしかしたらもうちょっといろんなのが入ってるかもしれない。

🔹ちな
うん、相当あるよね。
何度見ても発見がある。

🔸さえこ
建築が好きな人はたぶん、これが何かの建物にそっくり、とかにも気づけるのかもしれない。

🔹ちな
あー、たしかに。
…これ、全ページ見始めちゃったら永遠に終わらない。(笑)
見ても見ても毎回新しいからすごい本だ、これは。

🔸さえこ
そう、全く覚えてないから、毎回あー、って。危険危険。(笑)

🔹ちな
次は、「糸の泉」。
33箇所のお店の素描の画集。

🔸さえこ
この前書きが全てって感じだよね。

〜音読〜

🔸さえこ
もうなくなっちゃったお店だらけだけど。だからこそ、なんか。

🔹ちな
あ、このお店、近所。

🔸さえこ
しゅんしゅんさんがにわのわ(クラフトフェア)に出展してた時に買ったんだけど、わたしは最初これじゃないしゅんしゅんさんの本を買ってたの。
そしたら、そのときご一緒していたご夫婦が、2人してこの本を持って、買っちゃった、え、同じの買っちゃった、って。
それで、その1冊と交換したの。

🔹ちな
えー、そうだったんだ。
さすが、すてき。

9月に続く…

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