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202204 青天舎文庫


母 濱口さえこが月替わりでセレクトした絵本を「青天舎文庫」と名付け、店の一角に並べています。
手に取ってくださるお客さまとともに、わたしも店主として、娘として、1人の客のように毎月の絵本を楽しみにしてきました。
営業を始めてからもうすぐ1年となる春の日に、母と娘(言い換えると店主と最強アシスタント)、2人で絵本を広げて振り返ってみました。

2022年4月
テーマ
空を見上げ、うたを口ずさむ

「太陽と月」
タラ・ブックス

「おかしな家族」
絵・文 ジャンコクトー
訳 高橋洋一

「まってる」
絵 セルジュ・ブロック
文 デヴィット・カリ
訳 小山薫堂

「ブルッキーのひつじ」
作・絵 M.B. ゴフスタイン
訳 谷川俊太郎

「せんはうたう」
詩 谷川俊太郎
絵 望月通陽

🔸さえこ
「月と太陽」はもう、開店と同時に買ったくらいな。

🔹ちな
絵本を置くことが決まって即、って感じだったね。「買っちゃった」って、キラッキラの顔で持ってきた。

🔸さえこ
工芸品として、素晴らしいよね。
まだインクの匂いがする。
この色の数だけ版を押しているわけで。
製本の仕方とかも、ちょっと紙がずれてる、とかもいいし、表紙のくり抜かれた加工も、シリアルナンバーも入ってる。

🔹ちな
インドのタラ・ブックスという出版社から出ていて、この出版社は手作業で本を作っているんだよね。
全て手刷り、製本も手作業。

🔸さえこ
母(ちなの祖母)も絵本を取っておいてくれる人で、まだとってあるもののひとつに「ラーマヤナの冒険」という絵本があって。小学生の頃大好きだったんだけど、それに描かれている目と、この「太陽と月」の目が同じなんだよね。インドらしいこの目。

🔹ちな
各ページの絵について、インドのどこの地域のどんなものがモチーフになっているか、巻末に解説されてる。

🔸さえこ
人が身につけるものとして残っているから、伝統的な装飾や柄とかが受け継がれていて、それをモチーフにして活躍している作家さんがたくさんいる。
わたしは布が好きだからとかもあるかな。ずれないように多色刷りするプリントの技術も、自分で型を作ってやると本当に大変だからさ。すごい。

🔹ちな
すごい技術だよね。

🔸さえこ
伝統的な柄がどれだけ受け継がれてきたかって、日本では着物が廃れていくときに失われてきたものがいっぱいあるわけで、日本で言う着物の柄のようなものが、インドには今もあるってことじゃん。それが、素晴らしいなと思って。

🔹ちな
この月のテーマは、「空を見上げ、うたを口ずさむ」

🔸さえこ
ちょっと広げすぎたよね。最初っから。笑
これはまず、あーいい本、っていうのを並べてから、んーテーマ何かな、って。(笑)

🔹ちな
ですよね、そんな気がした。

🔸さえこ
これもだって、装丁から美しい。

🔹ちな
「せんはうたう」ね。

🔸さえこ
望月さんにサイン描いてもらっちゃったくらい大好きだからさ。

🔹ちな
高校生の頃、学校に谷川さんを招いてイベントをさせてもらったとき、会場の装飾でこの絵をモチーフにした気がする。
その頃は谷川さんの本としてしか認識していなかったから、望月さんの存在を知らなかったんだけど。

🔸さえこ
望月さんがこの絵に至るまでに、毎日おびただしいスケッチをされている。この一見誰でも描けるじゃんと思えるくらいな削ぎ落とした線なんだけど、すごい。

🔹ちな
いや、誰でも描けないよね、これは。

🔸さえこ
クレイっぽいところもあるしね。

🔹ちな
これは谷川さんの詩に、望月さんが絵を描いたんだっけ?

🔸さえこ
いや、後書きの靴下のくだりが面白かった気がする。

🔹ちな
あ、そうだそうだ。

〜2人で読み返し〜

🔸さえこ
絵があって、そこに谷川さんが詩をつけてくれた。
詩の部分を伏せて絵を先に見て、自分だったら、と言葉を想像してから谷川さんの詩を読むのも、面白いよね。何を感じ取れるか。
ああ谷川さんって…って思うよね。

🔹ちな
そうだね。すごい…

🔸さえこ
線つながりで次の絵本は、「まってる」

🔹ちな
この文字、小山薫堂さんの手書き?

🔸さえこ
フランスの絵本を小山さんが訳したものだけど、確かにそうかも。かぶんデヴィット・カリさんは日本語は書いてないもんね。

🔹ちな
たぶんねー。
全部のページに赤い糸がつながってる。

🔸さえこ
パリっぽいよね。
言葉が読めなかったとしても、絵だけで楽しめるなあとおもって。

🔹ちな
糸をたぐるように、確かに言葉がなくてもストーリーがわかる。

🔸さえこ
人生の色々が詰まってる。

🔹ちな
生まれてから死ぬまで全部、だよね。

🔸さえこ
棒人間みたいな絵だから余計に、誰のことっていうんじゃなく、自分のことのように。
日本では2006年初版。もうちなが生まれてるよね。
たしか、絵本が大好きな絵本バカだったころ買ったんだ。

🔹ちな
そんな頃があったんですか。

🔸さえこ
「おかしな家族」はもっと古いよ。
働いてる頃に買った本で、ジャンコクトーの個展をやっていて見に行った気がする。

🔹ちな
青天舎文庫で紹介したら「これ見て買いました!」って報告してくれた人がいたよね。

🔸さえこ
あったねー。
「ブルッキーのひつじ」もかわいいよね。
表紙のお花みたいな絵を小さい頃ずっと描いてた。
この絵本に出会うよりずっと前。

🔹ちな
小さいころ、「これはママが1番好きな作家さん」とゴフスタインの絵本をいくつも見せてくれた記憶があるんだけど、その頃はお話の良さがあんまりわかっていなかった。

🔸さえこ
子供が見て面白い絵本かっていうと、あんまり変化がないし、塗り絵したくなるくらいのシンプルな絵なんだけどね。
この月の絵本は「線」が裏テーマだったね。

来月につづく…

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