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子供の頃によく遊んだ象さん公園

小学生の頃、家の近所にあった公園でよく遊んだ。

2年前の春、妻を連れて久しぶりに地元を歩いた時、昔遊んだ公園が駐車場になり、団地のいくつかは取り壊されて分譲住宅が建ち並んでいた。

ただ、家からすぐ近くの公園だけは当時のままだった。団地の裏にある何の変哲もない公園だ。

当時、僕たちは「象さん公園」と呼んでいた。

ブランコ、象さんの滑り台、よじ登って遊ぶ金属製の遊具がある。それだけだ。

必然的に遊び方は限られてくるのだが、鬼ごっこが断然多かった。

缶蹴りやドロケイでもよく遊んだが、あの頃は鬼ごっこだけでも十分楽しかった気がする。

冬に雪が積もると、ソリを持って一瞬で終わる坂をよく滑って遊んだ。

小学校4年生頃のある日、僕は、「ひろふみ君」という名前の友達とこの象さん公園で遊んでいた。

当時から肉付きがよくぽっちゃり型、顔も満月の如くまん丸い。同じ地域の少年野球チームに入っていたので、当時から仲が良かった。

二人だけだから特に何をしていたわけでもない。ブランコに乗ったり、象さんの滑り台で遊んだりしていた。

その時だった。

僕たちは草の茂みから薄汚い一冊の本を見つけ出した。

エロ本だった。正確に言えば、エロ漫画だ。

僕たちはキャッキャと笑いながら、ページを捲り始める。

誤解のないように予め言っておくが、エロ本をこんなにまじまじと読んだのはこの時が初めてだ。

なかでも僕たちが何よりも笑った話が、家庭教師の物語だった。つまり、先生と生徒。

詳しいストーリーと描写はここでは差し控えるが、その生徒として登場していた青年が、「ふみひろ君」という名前だった。

ひろふみ君ではなく、ふみひろ君だ。

ともかく、「ふみひろ君」という名前が物語の中でたくさん叫ばれていた。

僕たちは笑った。エロ本を読んだことに対する興奮よりも、ふみひろ君の登場の方が印象的だった。

あれからもう30年近く経つ。

2年前、この象さん公園の前を通った時にその話を妻にした。

少し冷ややかな目で見られたが、僕にとって忘れられない思い出だ。

象さん公園も、いつか違う何かに変わってしまうのだろう。

駐車場かもしれないし、分譲住宅かもしれない。もしかしたら、また公園として姿を変えるかもしれない。

「ひろふみ君」は、僕と同じ地元に今も暮らしている。車なら15分くらいの場所だろうか。今はもう、4児の父になっている。

お互い近くに住んではいるが、今では年に一度会うか会わないかだ。ただ、いつ会っても気を遣うこともなく、当時のままの自然体でいれる友人の一人だ。

「ねぇー、ふみひろ君!」

あれ以来、僕は彼のことを今でもふざけてそう呼ぶ時がある。

その度に彼は思い出すように声をあげて笑う。

あの時と何も変わらない表情で。

***

(写真は、2年前の4月に撮影した象さん公園)

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