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人はどうして旅をするのか

 ちょうど1ヶ月ほど前、中学時代に同級生だった女の子に街中でばったり遭遇した。”女の子”といっても、今ではもう3児の母だ。

 彼女は、当時からいわゆる思い立つとすぐ行動に移すタイプだった。学校でもいつも明るく、少し品のない言い方をすればゲラゲラと大声をあげてよく笑っていた。(この時も変わっていなかった)

 一緒にいた旦那さんに、「ほら、あの世界一周したっていう友達だよ!」と紹介されたのは少し恥ずかしく、そして少し嬉しくもあったが、そういう彼女こそ僕よりずっと行動的で旅好きな子である。

 そんな彼女と久しぶりに再会し、青春時代の思い出や旅の話が蘇ってきた。そして、そのうちにそもそも「人はどうして旅をするのか?」という問いに辿り着いてしまった。その答えは、一体どこにあるのだろうかと。

 結局、彼女の青春時代や自分の旅のことを色々振り返りながら辿り着いた答えは、物凄くシンプルなものだった。

 僕の話はまた今度にするとして、ここでは同級生の彼女がどうして旅に出たのかを考えてみることにする。

 そもそも「旅」という言葉には、例えば「人生」だとか「仕事」という言葉と同じように、誰の目にも同じようにそこに存在しているものではないから、いざその答えを導き出そうとするとスケールが大きくなり過ぎて、どこか哲学的な問いになってしまう。だから、誰もがこれだという一つの同じ答えを出すのは難しいように思える。

 仮に「どうして富士山に行くのですか?」と聞かれたら、それは日本で一番高い山だから、世界遺産だから、家族や友人に誘われたから、いやいやそこに富士山があるからだ、などと答えると聞く側も理解しやすい。(もちろん、人によってもっと色々な答えがあるだろうが) それは、きっと富士山が誰にとっても変わらず同じ場所に存在しているからだろう。

 旅や人生となると、誰にとっても同じ場所に存在しているものではない。

 哲学的な話はさておき、久しぶりに会った同級生の彼女の青春話をしたい。それは、「どうして人は旅をするのか?」という問いの答えを導き出すために、僕なりに得たヒントがあったからだ。

 当時、一大旋風を巻き起こしたものに「モーニング娘。」がある。さらに数年遡れば、「SPEED」がデビューしていた。自分たちと同年代の女の子が華麗にダンスをしながら歌う姿は、強烈な印象があったことを覚えている。ともかく、この時期の音楽界は今までと違う大きな変貌を遂げようとしていたように思う。

 文化祭を控えた時期、同級生の彼女はそうした影響を受けるやいなや、さっそく仲の良い友達に声をかけた。そして、5人の友達と一緒に文化祭で「LOVEマシーン」を完璧に歌った。衣装もダンスも完璧だった。

 それもそのはず、彼女たちは放課後に集まって毎日練習を重ねていたのだ。楽しそうに練習する彼女たちの姿は今でもよく覚えている。

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 同級生の彼女は思い立ったらすぐ行動するタイプだと先に書いたが、おそらく中学時代からきっと変わっていないのだと思う。

 彼女が大学時代の時、友達と一緒によく海外へ旅行していた。

 ある時、インドへ一人で旅してみたくなったが親に反対された。さすがに女の子一人では危ないからだという。そこで、大学の同級生で仲の良かった男友達2人に一緒にインドに行かないかと声を掛けた。すると、2人とも快く賛同してくれた。こうして彼女は、心強い”ボディーガード”を得たのだ。そして、親に再度交渉するとようやくインドへの旅の許可が下りたのだ。

 つまり彼女は、どうしても「インドに行ってみたかった」のだ。それを実現するための手段や方法を考えた結果、上のような行動をとった。

 モー娘をやりたい!と思い立ち、すぐ一緒にやってくれるメンバーに声を掛けた中学生の頃と同じように。

 またモンゴルへ行った時の話もしてくれた。ある時僕は、どうしてモンゴルに行きたくなったのかと聞いたら、

 「遊牧民の生活を味わってみたかったの!」

 という答えが返ってきた。そして、その強い気持ちが彼女を結果的にモンゴルへと旅立たせたのだ。

 遊牧民の生活は、予想していた以上に過酷だったと話していたがここでは話が脱線するので割愛したい。

 結局のところ、「どうして人は旅をするのか?」という問いに対する僕なりの答えはこれに尽きるかもしれない。


 「自分の心の中で思い立つこと」


 もちろん、家族や友人から実際にそこに行った話を聞いたり、勧めてくれたことが一つのきっかけになることはあると思う。だけど、最後にそうしよう!と決めているのは紛れもなく自分だ。

 もしかしたら、これは旅だけに関わらず、人生でも仕事でもボランティアでも同じかもしれない。

 人が何かアクションを起こすときは必ずその前に何かを思い立っている。まず思いがなければ、実際の行動には繋がらない。

 興味や関心の対象、きっかけなどは人それぞれ違うわけで、だから旅する場所や方法や目的も手段も人の数だけある。

 人それぞれが心の中で思い立ち、色んな旅を形に残していくのだと考えると、やっぱり旅は面白い。


 

 

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