22歳お盆の話し

この時期に思い出して人に話したくなる話し。

俺はバアちゃんが好きだ。
優しく話しが上手く、そしてとにかく霊感が強い。これを生業にしてやっていけるレベルで強い。
まずはバアちゃんの霊感の強さを証明するお話から。

実家から離れ他県で大学生だった22歳の夏
俺は盆の帰省で実家に帰っていた。
近くに住んでいるバアちゃんに挨拶に行った。

母方の実家前の坂を登り、顔を上げたときにバアちゃんが玄関前で掃除をしているのが見えた。
バアちゃんも俺に気付いた。
ただいま!!と俺が声を掛ける前に
何とも渋い顔をしながら
「あんたどこか行ったでしょ」
どこか、が何を指すかは前に怒られ心底怖い目にあってるので察しが付く
心霊スポットには行ってないと説明。
これは本当。怒られて以降本当に行ってない。

「磯の香りがするけん、たぶん海」
と言われて、香りまで分かるのかと驚いた。

海、海、海
海は好きだからよく行く。
そして、その当時よく行っていた海岸があった。
今思えば何が気に入ってたのかも分からない。
友達だったり、女の子だったり、1人で行ってタバコを吸うこともあった。

「なんでそこによく行くとね?」
聞かれて考えるが、出てこない。
本当になんとなく行っていたと伝えると
「呼ばれとるけん行きよるとたい」
真顔で言われた。
バアちゃん顔怖いよ、久しぶりに帰ってきた孫よ俺。

「憑かれとるわけじゃなかけん、心配せんで大丈夫。でも、もう行きなさんな」
と言われた。
その時はまだ自分が取り憑かれにくい性質だとは、聞かされていなかった。
なぜバアちゃんは隠していたか、それを話すと調子乗ってアチコチ行くからっていうのが理由らしい。
俺の性格をよくわかっていらっしゃる。

そんなお盆を過ごした後、一人暮らしの家に戻り、普通なら2度と行かないだろう
この辺が俺の頭が悪いところだと、十二分に理解はしている。
理解はしているが確かめたくて仕方ない。
昼なら大丈夫やろ、行ったろ
思いたったが吉日、すぐに例の海岸へ向かった。

車を停めて、少し歩き、鬱蒼とした雑木林を抜けていくと海にでる。
足元は岩場で歩きづらい。
夜にしか来たことがないので気付かなかったが
けっこう広い。
海に沿って岩場を歩くと、
あった、あった、地蔵がありました。
海に向かって建てられている潮風でボロボロだけど、確かにお地蔵様です。

釣り好きの親父から聞いたことがある。
海に地蔵がある場所は、潮の流れで遺体が流されて辿り着く場所だと。

怖い思いよりも、さすがバアちゃんと思ってニヤついた。