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探究学習トップランナーインタビュー Vol1 筑波大学附属坂戸高等学校 農業科教諭 渋木陽介先生

2022年度より高等学校で「総合的な学習の時間」に代わり「総合的な探究の時間」(総合探究)が導入されます。多くの学校で、来年度に向けた総合探究カリキュラムの準備が進められているところかと思います。

タイガーモブは、民間企業としていち早くグローバル探究プログラムの提供を開始し、これまで50校以上の教育機関にプログラムやカリキュラムを導入いただいてきました。

本シリーズでは、これまでタイガーモブが探究学習に関わる中で出会ってきた、探究学習のトップランナーの皆様からその取り組みについてお話をお伺いし、「総合的な探究の時間」を成功させる秘訣を探っていきます。


第1回目は、埼玉県坂戸市にある筑波大学附属坂戸高等学校(以下、筑波大坂戸)の渋木先生にお話を伺いました。
筑波大坂戸は、2019年度からWWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業の拠点校として指定されており、2017年には国際バカロレア・ディプロマプログラム認定校となっています。
同校には、2021年10月・11月にタイガーモブの「バーチャルサファリ」プログラムを導入いただきました。

今回のインタビューでは、同校が考えるこれからの時代に必要とされる学びについてお話いただきました。

渋木


自分の人生の主人公として社会と向き合う

-貴校のホームページを拝見すると、国内外でのフィールドワークやT-GAP(つくさか・グローバル・アクション・プログラム)など、独自の取り組みが目立ちます。

渋木陽介先生(以下渋木):はい。本校ではWWLの拠点校として国際フィールドワークを通じて持続可能な国際社会を創る人材育成システムの構築を目指しています。その具体的な取り組みが国内外でのフィールドワークであり、T-GAPです。

予測不可能な時代を生きるためには、生徒が自分の人生の主人公として社会と向き合うことが必要だと考えています。そして、そのためには、実際に自分の目で見て、理解し、学び続けることが大切です。フィールドワークやT-GAPは、その貴重な実践の場なのです。

私たちはよく、筑波大坂戸の学びを川下りに例えます。川下りでは川というフィールドは決まっていますが、予測不能の事態が頻発します。そういう時に臨機応変に対応する力を身につけるのが筑波大坂戸の学びです。
生徒は、フィールドワークで予想もしなかったことに遭遇し、それを仲間との協働を通じて乗り越えていくことで社会との向き合い方を学んでいます。


自ら学ぶ人間になる

-高校3年間でそれを学ぶのはとても大切ですが、一方で教える方は大変そうです。3年間のカリキュラムはどのようになっているのでしょうか。

先ほどもお話したように私たちはフィールドワークとそれを通じた一次情報の取得を非常に重要視しています。

まず、1年生は「グローバルライフ」という授業を通じて、身の回りのものから遡って、自分たちの暮らしはどのようにして成り立っているのか、課題は何かを探ります。
例えば学校で配られるプリント。これはどこからやってきたのか。紙から木、そして東南アジアの森林にまで遡り、そこに課題はないのか探究します。
その後、「国内フィールドワーク」と「アセアンフィールドワーク」を、都市と農村の違いと格差などをテーマに実施します。
農家に民泊したり、海外(ジャカルタやシンガポールなど)の都市と農村で暮らす人々と交流するなど、リアルな交流・繋がりを通して実地で調査を実施します。

フィールドワーク終了後はグループで議論を進め、日本でできることを探ったり、再度夏休みを利用して1ヶ月間の海外フィールドワークを実施したりしています。

そして、2年生の12月からは、卒業研究を開始します。本校では、高等教育の目的を「自ら学ぶ人間になること」においています。個人の経験から生まれた問いを調査・実験することは、探究技術や探究心を育むことにつながっています。

社会とのつながりが学びを加速する

- 今回貴校には弊社の「バーチャルサファリ」を導入いただきました。どのような位置付け、狙いだったのでしょうか。

今回は3年生に参加してもらいました。3年間の学びをふりかえり、コロナ禍、気象変動等社会不安の中で、卒業後の自分の学びや生き方について再度、考える機会とすることが目的でした。

また、南アフリカで日本人唯一のサファリガイドとして活躍される太田ゆかさんの話を聞いて、自分で考えて行動することの大切さを知ってもらい、国境を超えてアクティブに働く生徒を増やしたいという想いがありました。

-「バーチャルサファリ」を実施して、生徒さんの反応はいかがでしたか。
受験を控えた3年生であったことや、オンラインならではの難しさはありましたが、生徒からは積極的に関わろうという姿勢を感じました。
また、サファリガイドの太田さんは26歳ということもあり、年齢的にも私たち教員より生徒たちと近く、そのキャリアも生徒たちの進路に通じるものがあるため、リアリティを感じることができたと思います。
そして何より太田さんのバイタリティ溢れるキラキラした姿は、生徒たちの刺激になりました。

-今回弊社のプログラムを導入していただいたわけですが、その他にも学校外の民間企業と提携した取り組みを実施する機会は多いのですか。
はい。フィールドワークや講演はもちろんですが、それ以外にも大学の教授や大学生などに話をしてもらったり、地域の方々との交流を取り入れています。
また、学校の授業・行事の範囲で取り組みをご一緒するだけでなく、生徒たちが自ら主体的に、校外の方々と関わっています。

-積極的に外部の方々との関わりを持つようにされているのはなぜですか。
学校で教えられることは限られています。また、自分で調べればわかることも多いです。
一方で、校外の知らない人とコミュニケーションをとると新しい気づきが生まれたり、地域への貢献から自信をつけることができます。社会との多様な繋がりが生徒の成長につながっています


先生の関わり方と生徒の評価

-生徒の自主性を大切にされていらっしゃいますが、先生はどのように関わっていらっしゃるのですか。
探究学習において教師の役割はファシリテーターだと思っています。教え導くことも大切ですが、生徒の主体性を引き出すために、なるべく喋らずに提案もしない。目的は明確か、その目的に向かって動けているかだけを、声がけして確認して促す感じです。
また、生徒間で上手く協働できているかはみています。目の前の仲間を大切にし、一緒に進む力は社会に出てからも重要なスキルだからです。

-評価という意味では、テストのような客観的な指標は作りづらいですね。
そうですね。なので成績表に評点を記載するなどは行っておらず、基本的には自己評価を用いています。
例えば、当校では三者面談の際に、生徒に親御さんの前で今後の進路・キャリアについてプレゼンしてもらいます。そこで自分の言葉で語れるかは重要な指標の一つです。
また、当校の生徒の多くは推薦入試で進学します。なので、志望理由書やプレゼンに徹底的に付き合い育成と評価を同時に行っています。
学びも評価も生徒に合わせ、フレキシブルに実施しています。

筑波大坂戸の今後

-本日はありがとうございました。フィールドワークを使った実践的なグローバル教育や社会との多様な繋がりからの学びなど、私たちタイガーモブが目指す次世代リーダーの育成と重なるところが多く、非常に興味深いお話でした。
貴校において、今後取り組んでいく予定の課題があれば教えてください。
-本年度でWWLの拠点校の役割を終えます。WWLでこれまで培ってきた知見をベースに、それをどのように超えていくのかが今の課題です。難しい課題ですが、私自身本校の学びがどのように成長していくのか楽しみです。



筑波大学附属坂戸高等学校

筑波大学附属坂戸高校 写真

埼玉県坂戸市に所在する国際バカロレア・ディプロマプログラム認定校。
初年度(94年)総合学科開設校の中でも総合学科のパイオニアの役割を果たしてきた。14〜18年度にはSGH指定を受け(現在は「ワールド・ワイド・ラーニング〈WWL〉コンソーシアム構築支援事業」拠点校)、17年に国際バカロレア(IB)認定校となり18年度入学生からIBコースを開設するなど、今も発展を続けている。総合学科としては生物資源・環境科学、工学システム・情報科学、生活・人間科学、人文社会・コミュニケーションの4系列を設置。

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詳細はこちらからもご覧ください。

学校の先生や教育関係者の方:
興味を持っていただけたら、ぜひ一度カジュアルにお話させください。中学生から大学生まで対象です。お問合せフォームからご連絡ください。

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探究的な学びを共に探究していく先生たちを募集中!

これからの教育を担う先生や教育関係者とともに探究学習を共に考え、実践していく「タイガーモブ Teacher’s Community」を立ち上げました。

タイガーモブ Teacher’s Communityとは
中学・高校を始め各種教育機関にグローバル探究プログラムを提供するタイガーモブが運営する、自分らしく生きていく社会と教育の実現のために、探究的な学びの実践機会を提供することを目的に立ち上げられたコミュニティです。
教育の未来について語りあうイベントやオンラインでの情報共有、実践を通じて探究学習をアップデートする勉強会などを実施予定です。

参加資格:
・新しい教育や学びの形を模索している先生
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参加方法:

コミュニティ参加をご希望の方はこちらよりお申し込みください。後日メールにて参加のご案内をお送りさせていただきます。(参加無料)


タイガーモブがご提供する教育機関向けサービスについて

タイガーモブでは、中学、高等学校をはじめ各種教育機関向けに、地球規模で実践するグローバル探究カリキュラムをご提供させていただいております。

探究学習への注目の高まりとともに、各種教育機関の皆様と提携させていただく機会も増え、これまで50以上の教育機関、延べ3,000名以上の生徒の皆様に、数日〜1年間のカリキュラム、講義を行ってきました。また、大学の単位認定プログラムとしても採用されています。

タイガーモブは、海外インターンシップや海外研修で培ってきたネットワークや企画力、ファシリテーション力をベースに、世界を舞台にした探究学習をサポートします。

詳しくはこちらをご覧ください。

バーチャルサファリについて

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南アフリカのクルーガー国立公園とリアルタイムで繋ぎ、普段見ることのできない野生のサイやゾウなどの姿を見ながら野生生物や環境保護について学ぶバーチャルツアーです。
動物保護の最前線で活躍するプロのサファリガイドの仕事を体感することで、仕事を通じた環境保護のあり方やキャリアについて考えます。

太田ゆか(クルーガー国立公園サファリガイド)
南アフリカ在住日本人サファリガイド。初アフリカは2014年に訪れたボツワナ。これをきっかけに幼い頃からの夢である野生動物保護を実現するために、アフリカへの移住を決意。サファリガイドになるために南アフリカで訓練学校に入学。これまでクルーガー国立公園エリアで環境保護プロジェクトの専属サファリガイドとして活動。サバンナの魅力と現状を日本に広めるべく、現地情報や写真をSNSから発信。

タイガーモブで個人向けに実施した「WILDLIFE ACTTION」はこちらです。バーチャルサファリをはじめ野生動物保護について学び、実践するためのプログラムです。教育機関向けのアレンジも可能です。


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