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家に住めない人との旅 3

家に住めないパートナーとロードトリップへ出た話の第三回目です。


出発予定の数日前に、準備はばっちりと聞いていたので、信じたのが甘かったです。。。ソーラーを買って車の屋根に搭載したから、テントの中で暖房を入れて寝られるとか、ソーラーで動くシャワーを買ったとか、プライベートなバスルームを用意するとか、殆どがキャンプの旅なので女の私でも快適に過ごせるようにいろいろ考えてくれたと喜んでいましたが、その夢はもろもろと砕けていきました。

「特に持っていくものとかない?」
と聞いても、

「必要だと思うものを持って来て。」
という返答は、キャンプやロードトリップという環境に不慣れな私にとっては、ちっとも役に立ちません。実際持って行ったものの半分は触らずじまいで、買わないといけなかったものや、無くて済ませたものがたんまり。。

きっちりと予定を立てない行き当たりばったりの旅は、リラックスして自由で気ままな感じがありますが、それは幸運続きだった場合であって、不運が続くこともあるわけです。そういう事も考慮して、そうなっても腹を立てず立ち回りが出来る忍耐力、融通性や経験が備わっている場合は、それも旅のうち、と思えるかもしれません。私は彼が旅慣れているので「心の向くまま」の旅だと聞かされた時、過度に信頼してしまいました。

ところがまず出発の当日に、これからショッピングに行くと言います。私はせいぜい食料くらいだろうと思っていると、リストにあるものは、

① キャンピングテーブルといす
② ベッドにする(寝袋の下に敷く)マットレスのようなフォームベッド
③ 私が使う寝袋
④ 私の荷物をまとめて入れるストッカーのケース
⑤ 他にもあったと思いますが、あまりにたくさんで覚えていません。。

準備万端だって言ったじゃない。。なんでせめて2週間前に言ってくれなかったのか。。今から5時間走るのに、こんな多くの大きな買い物を当日になって買うって、、。私の感覚とは大きく違う所でした。
でもこれは彼が主役の旅で私は補佐というかおまけなので、また彼の体調も良くないのを知っているので、ガタガタ言わずに付き合うことに。。

2-3か月の旅の予定で、私の私物はストッカーケース2つに収めるように、と何か学校の規則のようなことを言います。しかも暑い日中から寒いだろう夜間のためにジャケットや毛布、快適なホテル暮らしでなくキャンプなので、できるだけ道中の出費を抑えるために持っていきたいものは山ほどある中、いろいろ断念することに。

それでもネコのフードや砂 (途中で買えるとはいっても、いつお店に行けるかわからず、特定のフードがない可能性も高いので)はできるだけ積んでおきたいところです。また家に置いていったら死んでしまうので持っていきたいプラントなど、ストッカーどころか車を一台レンタカーして後ろから付いていった方が良さそうでした。彼の車は普通のSUVで後部座席は全て取っ払っていてスペースはある方ですが、そこにさらにテントを積み、ネコのケージ4つと大型の介助犬もいます。

しかしこの一年以上いつもこの調子で、「彼は病気だから少々のわがままや常識を逸した行動は仕方ない」と自分に言い聞かせてきました。また元々山男でずっと独り身で、単独行動に慣れているため、他の人のことを考慮する必要がなかったためでしょうか、色々と驚かされることがあります。

これらのショッピングリスト、一つの店では済まずに数軒の店を回り、家へ戻って荷物を積み、ネコのケージを積み、私の家の戸締りや水抜き(湯沸かし器の水抜きを徹底しなかったために去年酷い目に遭ったため)などをしました。2か月も家を空けるつもりだったので、夜間には確実に氷点下まで気温が降りてしまうためです。
そうしてようやく出発出来たのは、午後の一時半過ぎ。。。朝から朝ごはんも昼食も取る間がないままの出発となりました。

✴︎

初日の目的地は北カリフォルニアでは人気のタホー湖(Lake Tahoe)です。

街を出る辺りでガソリンスタンドに寄りましたが、どこも一杯で、前に一台でも車がいるとこの運転手は待つのが嫌で、すぐに去ってしまう傾向があります。私にはよく理解できませんが、運転している人にはなるべく口を出さないように、と自分に言い聞かせます。

「これが最後のスタンドでないといいけどね~。」
などと笑いながら、車に住んで運転には慣れ慣れの彼を私は過信していました。

けれども次のスタンドはなかなかなく、緑深いカントリーロードに入って行きます。

途中、州を超える時に検疫のような所を通過します。特にカリフォルニアに入る時は、植物やフルーツ、果物の種などを持っていないかを機械的に聞かれます。「持っていない」と言えばそれ以上突っ込まれることはまずなく、とてもフレンドリーな場所ではあるのですが、別の友人はアメリカ中で一番ラクな仕事だろうといつも冷笑しています。

そこでついでに、近くにガソリンスタンドはあるかどうかを尋ねてみると、

「ここはカントリーの真っ只中だから、次のスタンドは42マイル(約68キロ)先よ。」
と言われ、二人とも思わず悲鳴を上げました。

もちろん私にも経験があります。たぶん大丈夫だろうと思い、ガソリンのゲージと睨めっこを続けながら走る、あのなんともやきもきとした心境、、。ゲージが底をつきライトが点滅し始める、、、本当に私は嫌なので、長距離の場合はゲージの半分を越えたら、どのスタンドだろうが給油するようにしています。

が、それもドライバーによるのでしょう。私達は無言で果てしなく続く同じ光景の中を走り続けました。この人の場合、もし途中で車が止まったら、私に歩いてガソリンを買いに行かせる可能性があるので、更に不安が募りました。。2時間くらい歩いて、携帯用タンクを買ってガソリンを入れて、更にまた2時間歩いて戻ってくる可能性。。辺りは完全に暗くなり路肩はドライバーからは見えにくい、ネコはおトイレを我慢することになるだろう、もし通りかがりの車からライドをオファーされたらどうすべきか。乗らない方がいいに決まっているが、女性だったら大丈夫だろうか、いやわざわざ止まってくれる車などろくなことはない、そんな映画をどれだけ見ただろう。。と、次々に恐ろしい事態が脳裏をかすめる一方、彼はまた恐らくそんなことも何度か経験があるのでしょう、大したことではないと思っている節があります。あらゆる困難を経験してきて、「同じ経験をさせたくない」ではなく「そうなっても別に死なない」という感覚でいるところが、二人の考え方の相違のひとつです。

幸い、殆ど奇跡的にスレスレでスタンドに辿り着きました。


(つづく)

もしもサポートを戴いた際は、4匹のネコのゴハンやネコ砂などに使わせて頂きます。 心から、ありがとうございます