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マウント・シャスタで 「オフ・ザ・グリッド」を体験


オフ・ザ・グリッド(Off the Grid) という言葉を聞いたことがあるでしょうか?似たような場面で「ミニマリズム」と並んで使われることがありますが、通常、一般の住宅に備わっている公共の電気、ガス、水道や下水といったものがない所で生活すること、またそれらを必要としない、自給自足に近いライフスタイルの別名ともなっています。

4匹のネコと一緒にタイニーハウスでの旅に出てから二度目に辿り着いたスポットは、同じ価値観を持つカップルと出会った後、彼らにイチオシされ同行してみた、カリフォルニアの北端にあるマウント・シャスタという所でした。ここはスピリチュアルな人々を引き寄せ、バックパッカーを満足させるハイキングトレイルがたくさんある、キャンプ愛好家にとっても大変人気のある壮大な自然の中のスポットです。

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友人達は毎年夏にここを訪れて、1年の他の時期は他のいろいろな所へ旅を続けています。ここにはそういう人がたくさん訪れ、特に自己紹介をしなくても話が合い、ここで知り合いを作るのは比較的容易でした。私が友人達と共にした同じ価値観とは、それまでしゃかりきになって働いて、ストレスや時間のなさから健康に留意できず、心のケアもできず、このまま行ったら生活はできるものの、失う物だらけだ。。。と気づいた時から、それをやめよう、と行動に起こしたことでした。

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↑ 小さな町は比較的フラットなので自転車での移動が可能です。

さてオフ・ザ・グリッドの生活とは、上に述べたように現代社会の便利な標準装備がありません。私は筋金入りの経験者と一緒でいろいろ教えてもらえてラッキーでしたが、基本的にはキャンプをするのと同じです。陽が昇れば目をさまし、陽が落ちたら寝ることで、まず電灯があまり要りません。この頃は夜9時くらいにベッドに入り、朝5時には自然と目が覚めました。(時は初夏で、夜9時位まで辺りはほんのり明るいのです。)これだけでも睡眠が8時間とれて、それまでの生活と雲泥の差でした。簡単に、自然に、ライフスタイルを変えられました。8時間の睡眠を摂ったのなんて、何十年ぶりでしょう。。夜中までネットをいじったり映画を見たりする生活が、いかに不自然不健康だったかがわかりました。9時になんて眠くならない、のは最初の数日だけで、すぐに体がリズムに慣れました。
 もちろんソーラーのライトを使ったり、電池で動くライトやいろいろなものを取り入れて、いくらでも便利快適にすることはできます。私は単に面倒だったので、キャンドルだけをベッドサイドに置き、ほとんど不自由を感じませんでした。

暖房はないので、寒い時はあります。特に山の気候は朝晩の冷え込みは急激ですが、まぁそんな時は山のようなブランケットに埋もれれば寝られますし、意外とティーライトという小さな小さなキャンドルが熱を発するのです!寒い朝方はフリースやダウンを家の中でも着ていますが、せいぜいその程度で、日中はTシャツでも汗ばむほどの、極端な山の気候です。

冷蔵庫はありません。これが必須な人はやはりジェネレーターやガスやソーラーなどで動く冷蔵庫が必要かもしれませんね。私は冷蔵庫はありましたが電気がなかったので、その間それはパントリーとなっていました。お肉や乳製品を摂らないので、どうしても冷やさないといけないものはそれほどありませんでした。冷たい飲み物も絶対ないとやっていけないわけでもなく、野菜なども頻繁に買って、何日も保存しないといけないものは多くありません。人によっては氷がないと絶対ダメという場合があるかもしれませんが、それでもクーラーボックスを利用するなど、完璧ではなくともなんとかそれなりに工夫してやっていけます。工夫は必要ですが、それほどのストレスではありません。とにかくそれほど困ったという記憶がありません。

また時期も春から初夏にかけてで、キャンピングカーやトレイラーを設置する場所をよく考えて木陰などを選べば、冷蔵庫やエアコンやファンすらいりません。どうしても暑い時間帯は山の上の方へドライブしたり、湖に行ったり、日没とともにキャンプサイトへ帰ってくれば、山の気候で一気に温度は下がり、ちょうどよくなります。

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水はありません。飲み水は山からの湧水を汲めるところが数か所にあり、これが一番きれいなスプリングウォーターです。ここに数日おきに水を調達に行き、この自然の贅沢な水で朝のコーヒーを淹れるのは、もう。。。格別です。私は元々殆どコーヒーと水しか飲まない安上がりな人間のため、このきれいなお水が一番のボーナスでした。全米どこのスーパーでも買える、Crystal Geysey というブランドのスプリングウォーターはここマウント・シャスタから湧き出るお水です。

お皿を洗うには、そばにある川へ水を汲みに行きます。これもラッキーに川の流れの真ん前の絶好なスポットに滞在していたため、数歩下っていき、水をペットボトルなどに持てるだけ持ってかえって、普通にお皿を洗います。またはお皿を川へ持っていって洗う人もいます。普通にとはいってもやはりものすごく節約しながらですが。でもこれもそのうち慣れて要領を得て来ます。水が限りなく出てくる時はなんにも考えませんが、ペットボトルに10本分あっても、お皿やお鍋を洗うのはよーく考えないと、何度も汲みに行くのはやっぱり大変なので。。

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不便といえばWiFiの調達です。あまり頼らなくはなりますが、全くないと困ることもありますので、車に乗っている時はとっかえひっかえみんなの電話を充電しまくり、シグナルの良い所でまとめて仕事や必要な電話やメールをしたりします。町にはネットカフェのような所もありますし、図書館も利用できるので、これもうまく立ち回ればOK、ただ自分の家では使えないというだけです。私がキャンプした場所が携帯のシグナルが全くなかっただけで、キャンプ場など場所によっては可能かもしれません。

その他にこのロケーションでの非日常といえば、川の流れがとても急で、その音が大きく、水際では普通の会話が聞き取れないほどです。まるでダムの傍でキャンプしているようで、朝もこの音で目が覚めますし、心地よい音というよりは壮大な波にのまれそうな感じで、なんとも迫力がありました。

シャワーは近くのキャンプ場や町のスパなどを利用できます。ちょっと不便といえば不便ですが、しかたないですね!
洗濯も町にコインランドリーがあります。慣れれば快適なものです。

料理には私は電気のある所では、インダクション・クックトップという電磁調理器とインスタントポット(電気圧力鍋)を使いますが、ないのでこれらは眠っていてもらい、キャンプ用のカセットコンロと友人のポータブルのガスバーナーが主な調理器具でした。あとはRaw Food (生のもの)を食べるので、これにもあまり不便は感じず、むしろいろいろな新しい食べ物や食べ方を発見できる機会となりました。それとマウントシャスタというキャンプ人間にフレンドリーな町は一応なんでも揃っているため、それが可能なわけでもあります。

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↑ 町で唯一のオーガニックを中心とした自然食料品店。高いのにいつもとても賑わっています。

自給自足の生活は、理想的には自分の食べるものは自分で育てるわけですが、旅をしながらではそれはなかなか難しいので、自分で作るものは、窓辺で育てられるハーブや、水と瓶があれば種から育てられるマイクログリーンなどになります。マイクログリーンの代表的なものは、アルファルファやブロッコリー・スプラウトで、その他多種に及び栄養豊富です。ブロッコリー・スプラウトはブロッコリーそのものよりも栄養価が高く、場所を取らず土も使わずに育てられるので旅人にはぴったりです。

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↑ ある日の友人が作ったランチ:アボカドと生チーズのトーストにブロッコリースプラウトをふんだんに載せたもの。サイドはズッキーニとトマトとナッツのサラダ

オフ・ザ・グリッドのライフスタイルを選ぶ人には、自然に溶け込むのが好きで、環境に良いことが好きという他にもう一つ大きな動機があります。それは光熱費が殆どゼロに近いことです。ソーラーやジェネレーター(発動機)などの設備に投資すれば最初はお金がかかりますが、毎月の支払いに苛まれる今までの暮らしから解放されます。水、下水、電気、ガス、ゴミの回収、WiFi、などの出費は著しく減ります。全ての人に当てはまるライフスタイルではないにしても、仕事を持ちながらやっている人もいます。

ここはちゃんとしたキャンプサイトではなく、路上から逸れた少し大きめの停車場のような所で、タダで絶景が臨め水のアクセスがあるため、人気のあるスポットでした。が、ここに長くいすぎるとフォレストレンジャーが来て、2週間以上はいれないよと警告されます。自然の中でキャンプはいいけれど棲みついてはダメだということです。また、キャンプ客に公平に場を提供しようという意味でもあるでしょう。最初に見つけたからといって、ひと夏陣取ってはダメなんですね。

自然に還ることの非日常、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。


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