大丸心斎橋2

近代建築をめぐる 大阪編 2

大阪巡りは中之島から船場、そして心斎橋へ
オフィス街から歓楽街へと街の表情が変わってきた。

いつも通りなのだろうか、心斎橋は大勢の買い物客や外国人観光客で溢れる混雑したエリアだ。これでは人を入れずに建物の写真を撮るのは至難、歩道で立ち止まるのも一苦労だった。
そんな賑やかな大阪の繁華街にひと際オーラを放つのが、2019年9月にリニューアルした大丸心斎橋店。高層化されて装いを新たに、修復された戦前のネオ・ゴシックスタイルが輝いていた。

大丸心斎橋

大丸心斎橋店 1933年

これはデカい。そして高くなった!
タイトル写真からも分かるように、通りを挟んだ向かい側から写真を撮っても収まりきらなかった。御堂筋という大通りにこの巨大なデパート。近代大阪のダイナミックな消費文化を体現したような、豪勢な姿をしている。

「腰巻きビル」という言葉があって、歴史建築を保存しつつ空間を活かすために上層を高層ビル化した建物のことを言う。あえて腰巻ビルを巡るマニアも中にはいるが、おおよその反応は「なんかダサくない?」という冷めた目線だろう。
この大丸も高層化されたことで腰巻きビルにされたということになるのだろうが、どうだろうこの一体感は!現在と歴史の融合とも呼べそうな絶妙な調和をしているじゃないか。

大丸6

7階のテラスから外を眺めることも、建物の外を近くで見ることもできる!

高層階との調和の秘密として、この八芒星のデザインが使われているのがミソだ。今回、リニューアルされたことで7階テラスから、その外観を間近でうかがい知れる。

大丸心斎橋水晶

かつての屋上部分にあった尖塔も近くで見ることができる

大丸心斎橋3

八芒星の元ネタは正面玄関のデザインから採用

大丸

正面玄関の上部は雪の結晶をモチーフにしているそう。ライトアップも見てみたい

大丸心斎橋内装

大丸心斎橋内装2

アール・デコ様式を採用した豪華な内装

内部にも見どころは尽きない。というかメインと言ってもいいくらいだ。
イスラムのモスクを連想させるような幾何学模様が1階フロアのいたるところに施されている。

多くの部材は改修前と同じものが再利用されている。エレベーターホールのステンドグラスで作られた時計も当時からの物だ。

壁面の大理石は象嵌(ぞうがん)という技法で丁寧にはめ込まれている。

大丸心斎橋クジャク

心斎橋筋に面した入口にはクジャクのレリーフが

正面玄関がある御堂筋からは裏側に当たるのがこちらの入り口。
大丸のシンボル的存在になっているクジャク。元々はこのレリーフをアメリカに発注する際、不死鳥のデザインを依頼していたのが、なぜかクジャクになってやってきたんだとか。先方の東洋的なイメージで勝手に変わってしまったのか?不思議はあれど、今となってはこちらの方が日本には馴染んでいるように思う。

この大丸心斎橋店、戦前の都市文化がとても華やかで世界に開けた、インターナショナルなものだったように感じさせる。キリスト教由来のゴシック、イスラームのアラベスク模様、新時代としてのアール・デコ、東洋のクジャク...。
近代の魅力が凝縮されたような濃密な空間に目まいがしそうなくらいだった。買い物客で溢れていた店内は、写真を撮るにはなかなか難しかったけど、それで良いんだ。ここは80年以上ずっとそうして活気あふれるデパートだったんだから。

#大阪 #建築 #歴史 #心斎橋




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