見出し画像

【連載小説】俺様人生 vol.10「初詣」

明けて元旦。

一昨日打ち合わせた通り、アスカがうちにやって来る。

寒いのが苦手なアスカはもふもふ着こんで雪だるまのようだ。


「明けましておめでとう、レンくん」

もふもふ星人が言う。

「おめでとう、今年もよろしくね」

一旦うちへあがって温かい飲み物を飲んでから行こうと言う話になり、アスカがあがってきた。


あまりのもふり具合に、俺が

「少し脱いだら?」

と声をかけると、ブンブンと頭を横に振った。

「だって寒いもん」

「うちの中は暖かいでしょ。まだ行かないから脱ぎなよ」

しぶしぶ服を脱ぎ出すアスカ。

何枚着てるの?!

1、2、3、4……5枚も着ていたらしい。

そりゃあ、もっふもふになるわけだ。


神社はまだ山の奥の方にあるから、寒いと思って着こんできたらしい。


脱ぎおわると、

「ふぅ、苦しかった」

と言うアスカに、俺は正月早々笑わせていただいた。


温かいココアを二人で飲み、そろそろ行こうかという話になる。

アスカはまた1から着替え直しだ。

3枚目辺りから、もふもふで入らなくなってくる。

それをぎゅうぎゅうと押し込んでいく。

不肖ながら俺もお手伝いさせていただいた。

最後のダウンジャケットを着る頃にはアスカはもふもふの、そう、映画で言うと、ゴーストバス○ーズのマシュマロマンのようだ。

俺が笑いをこらえているのに気づいて怒りだす。

そんなアスカも可愛かった。



車を走らせること30分車を走らせるが、予定していたところよりも手前から渋滞している。

この辺りで一番大きな神社だからしかたないのか。

持ってきた缶コーヒーを飲みながら、ゆっくり車を動かす。

来る前にトイレに行ってて正解だったな……

アスカを見ると、渋滞に大喜びしている。

あまり渋滞にはまったことがないらしく、

「さすがお正月だね!」

と目を輝かせる。

こんなことでも喜んでくれるなら、渋滞もへっちゃら……なはずだった。


突然もじもじし始めるアスカ。

どうしたの?と聞くと

「トイレにいきたくなってきちゃった……」

それならなんでさっきコンビニの手前で言わなかったんだ?!

この先は道の駅までトイレがない。

道の駅まではあと3キロはある。


仕方ない、Uターンだ。

ターンするも、そっち方面も混んでいるんだから、じわじわとしか車は進まない。


アスカが明らかにおかしな汗をかいている。

急がねば。


アスカに声をかけつつ、道を急ぐ。


コンビニの看板が見えた。


アスカは

「車降りて走る」

と言い出した。

車が早いか、走るのが早いか。

微妙な速度だ。

言うが早いか、アスカは車を飛び出して走り始めた。

雪の残った道を、ものすごいスピードで。


間に合ったかな……

俺は心配しながらコンビニへ車を乗り入れた。


アスカは無事だったらしく、缶コーヒーを片手に出てくる。


「大丈夫だった?」

俺の問いに微妙な表情のアスカ。

「大丈夫じゃなかったの?」

すると、

「ナプキンしてたから、被害はなかった」

と、顔を赤らめて呟く。

「間に合ったならよかったじゃん」

「うーん、よかったのかなぁ」

「よかった、よかった。じゃあ出発しようか!」


神社に着く。

かなり人手が多く、警備員が駐車場の整備をしている。

俺たちの番になるまではまだかかりそうだ。

さっき買ってきた缶コーヒーを飲みながら待つ。

「すごいね、レンくん!私こんなに大きいところ初めて!」

「俺も初めてだよ」

彼女と初詣なんて……

すごいすごい、と連発するアスカ。

俺もそんなアスカがすげー、すげー可愛いと思う。


俺たちの番がやっと回ってきた。

車を停めていそいそと神社へ向かう。

手を清めて口をゆすいで。

水は温かく感じた。

お参りの列に並ぶ。

アスカは五円玉を探しているらしく、財布とにらめっこしている。

アスカの分も持ってきた俺が、アスカの目の前に五円玉を持っていく。

アスカは

「ありがとう」

と笑顔で受け取った。


じゃらじゃら鈴を鳴らして手を合わせる。

俺の願いはただ一つ、アスカとうまくいきますよーに!!

アスカは何お願いしたんだろう?

「教えてよ」

「教えたら願いがかなわなくなるから、言わない」

そうなの?

俺って無知なのね。


おみくじを引く。

やった、大吉じゃん!

アスカは……?

中吉。悪くはない。

俺は俺のおみくじを自慢しながら、帰路に着くのだった。

よろしければサポートをお願いします。 生きるための糧とします。 世帯年収が200万以下の生活をしています。 サポートしてもらったらコーラ買います!!コーラ好きなんです!! あと、お肉も買います。 生きていく・・・