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H.M.S. Renown 1941 英国海軍巡洋戦艦レナウン制作記 #1 (Pit-Road 1/700 waterline kit)


1.はじめに

1-1.巡洋戦艦レナウン

Pic.1-1-1 1919年のレナウン

 レナウンは、第一次世界大戦中に建造されたイギリス海軍の巡洋戦艦レナウン級のネームシップです。当初はリベンジ級戦艦の改良型として起工されましたが、戦争勃発により建造は一旦中断されました。第一海軍卿として艦船建造の責任者に復帰したフィッシャー提督は、巡洋戦艦ならすぐに建造して就役できるとして、レナウンの建造を再開する承認を得ました。
 基準排水量27,600t、満載排水量32,740t、垂線間長228.7m、全長242.0m、幅27.5mの艦体に、主砲として15インチ(381 mm)42口径MkI連装砲3基の計6門、副砲として4 インチ (102 mm) MkⅣ三連装5基と単装2基の計17門を装備したレナウンは、1915年1月25日に起工し、1916年3月4日に進水、二番艦のレパルスに遅れること約1か月の1916年9月20日に竣工しました。艦名は、「名声」「有名」を意味し、1615年の初代からの由緒ある名前です。「リナウン」という表記もありますが、なじみ深い「レナウン」で表記していきます。
 すでにユトランド沖海戦で巡洋戦艦の防御力が問題となっていたため、レナウンは実戦には出ず、1917年と1918年に水平装甲の追加などの改修を行いました。

Pic.1-1-2 1921年3回目の周遊時のレナウン(左)、法被姿のプリンス・エドワード(右)

 第一次大戦後は、お召し艦となるための改装を1919年と20年に行い、エドワード・プリンス・オブ・ウェールズ(後のエドワード8世)の「ロイヤル・ヨット」として3回世界各地を訪問しました。1922年4月には日本に寄港し、その際"RENOWN"のロゴが気に入った佐々木商会の佐々木八十八が商標登録したのが後の「レナウン」の社名で、同社の紳士服ブランドだった「ダーバン」も同伴艦であった軽巡Durbanから名付けられました。
 1922年6月から1926年9月にかけて主に装甲を強化する第一次近代化改装、1928年には対空装備の改修、1936年9月から1939年8月までは、塔型艦橋、エンジンとボイラー、航空艤装といった大幅な第二次近代化改装を行うなど頻繁にドック入りしていたので、レナウンは「リフィット(Refit)」と、同様にレパルスは「リペア(repair)」と渾名されました。

Pic.1-1-3 1942年11月トーチ作戦時のレナウン

 1939年9月に第二次世界大戦が始まると、ドイツ海軍の通商破壊作戦に対抗してK部隊 (Force K) としてアドミラル・グラーフ・シュペーを追った12月のラプラタ沖海戦や1940年4月のノルウェーでの第一次、第二次ナルヴィク海戦に参加し、1940年後半から1941年にかけてはジブラルタルを拠点とするH部隊 (Force H) として船団護衛の任務に就き、5月のビスマルク追撃戦にも参加しました。
 改修の多さを揶揄されたレナウンですが1939年3月9日から1941年8月の修理改装までの間185,000マイル航行し、1940年1月、10月、11月と12月、1941年2月と5月に修理のための短いドック入りをしたのみで、381日間を洋上で過ごしました。
 その後は本国艦隊や東洋艦隊に所属し、第一次世界大戦中に建造された巡洋戦艦として唯一第二次世界大戦の終戦を迎えることができました。

1-2.使用キット

 Pit-RoadのW119E H.M.S. Renown 1942です(TOP画像)。キットは、1941年8月に対空艤装やレーダー装備などの改装を行った後の姿をモデル化していて、ディールアップ用のエッチングパーツ(EP)が含まれています。このため、ビスマルク追撃戦時の5月の姿にするには、1941年8月の改装時に取り付けられた装備を外すことになりますが、第二次近代化改装直後の姿にまで戻して良いのか検討する必要があります。

Pic.1-2 第二次近代化改装後のレナウン

 第二次近代化改装では、次のような外見が大きく変わる改修が行われました。
・塔型艦橋(A):クイーンエリザベス級で行われた近代化改装同様、その後建造されたキングジョージ5世級のような大型の塔状の艦橋構造物となりました。
・航空機用格納庫(B):後部煙突を挟んだ大型の構造物として設置されました。
・クレーン(C):艦載機と艦載艇用に格納庫両舷に設置されました。
・カタパルト(D):後部煙突と後部構造物の間に両側の舷側方向に航空機を発射できるよう設置されました。
・主砲(E):15インチ砲塔はマークI(N)標準に改修され、仰角が30°に引上げられました。
・副砲(F):三連装5基と単装2基の4インチ砲はすべて撤去され、 BDマークII連装砲塔に取り付けられた20門の両用式 QF 4.5インチマークIII砲に置き換えられました。
・対空装備:3インチ(76mm)単装の対空砲2基は撤去され、8連装マークVI2ポンド砲(ポンポン砲)が前部煙突両脇(G)とY砲塔前(H)の3基(いずれもシートがかぶされている)、ヴィッカース50口径マークIII四連装砲架が、前部マスト両脇(I)と後部構造物(J)にそれぞれ2基ずつの4基追加され、各射撃装置が設置されました。
・A砲塔の前方の両舷に1基ずつ計2基あった水中魚雷発射管は取り外され、水上魚雷発射管8基が追加されました。

 前項で述べたようにその後細かい修理を何回か行っているので、その間にどこか改修された点があるのか、ネットの記事を追ってみましたが、「1940年1月15日デボンポート滞在中に短期間の修理を受け消磁ケーブルが取り付けられた。」との記述がありました。レパルスでは線状のケーブルがモールドされていましたが、このキットではありません。形状が確認できる写真も得られなかったのでやむなく省略することにしました。
 その他の追加装備等の記述は見当たりませんでした。

 付属のEPはクレーンやレーダー類が主で、手すりなどは含まれていません。このためディティールアップのためFLYHAWKエッチングパーツを追加で使用し、ポンポン砲はFineMolds、通風筒などはレジン製のHEAVY HOBBYの各製品を使用しました。
 また、艦船模型スペシャルNo.80 2021 SUMMER 女王陛下の戦艦、世界の艦船 2020年9月号増刊 第932集(増刊第175集)傑作軍艦アーカイブ10 英巡洋戦艦「フッド」「リパルス」「リナウン」2020を主な参考資料としています。

2024年7月制作開始
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