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突然の診断(入院1、2日目)

入院1日目(32週3日)

 土曜日の朝、寝ぼけ眼でお手洗いへ行くと、おりもの程度の出血がある。1度目のお手洗いでは「ん?なんか引っ掻いた?」くらいの気持ちでスルーしたけれど、朝10時ごろに2度目のお手洗いでもやはり出血があるので、念のため医大の産科に電話してみる。すると電話口で、看護師に「できるだけ早く来てください。何時ごろ来られますか?」「来られたら車椅子移動になります。歩かないでください」「自分で車の運転はしないでください」と矢継ぎ早に指示され、(そんなに大げさなものでも…)と内心思うが従うことにする。一応、万が一入院とかになった場合でも対応できるように、旅行バッグに入院のしおりや簡単な宿泊用具、ベビー肌着も入れてまとめておく。でもすぐには要らないはずと思って置いておく。夜な夜な漫画を読みふけって寝不足らしい夫を起こし、運転してもらう。

 病院に着くと、出迎えが待っているわけではなかったので、普通に休日通用口から入って産科病棟まで歩いて移動する。でも産科受付に着くとすぐに車椅子へ乗せられた。内診室に移動し、内診台に上がってエコーを撮ってもらっていると、医師に「あー、これは入院しないとだめだよ」と言われる。マジか。子宮頸管の長さが縮まっているとのことと、出血が治まるまで安静にしている必要があるとのことを伝えられた。「おなかの張りが強くありませんでしたか?」と問われるも、あまり自覚症状がなく、「ちょっと張っているときがあるかな」くらいの認識だった。腹にモニターを付けて40分間寝転がる。モニターを取り終わった後、看護師に「何回くらい張りましたか?」と言われても、張りの回数を数えるという観点がそもそもなかったので分からない。とりあえず中の人は元気に動いている。「何回かは張りましたかね…」としか答えられず。モニターが終わると医師が来て、切迫早産と言われた。子宮の収縮を抑える点滴が4段階あって、まずは1段階目から始めるとの説明。昨日の夜まで普通に仕事していて、自宅も事務所も片付けておらず、当然仕事も何も終わっていない。やることが山積しすぎている。

 夫に入院用具一式を持ってきてもらうことと、病院のコンビニでお昼ご飯を買うことを頼む。「モニター付けてるから起き上がれないので、おにぎりと野菜ジュースでいいよ」と言ったのに、気を利かせたつもりなのか、餃子入り春雨スープを買ってきた。寝ながらの姿勢ではぼちぼちしか食べられない。案の定こぼしそうになり、残りは夫に食べてもらった。病室は、費用の負担が心配だったので4人部屋を選んだつもりだったけど、案内された部屋は個室だった。県内に7カ所しかないMFICU(集中治療室)だという。2週間は保険の適用内としてここで過ごし、それから普通部屋に移るのだそうだ。なんだか得したと思って個室をありがたく使わせてもらおう。食事は妊産婦食でわりとおいしく、米粉カップケーキが付いていた。でも総カロリーが560kcalくらいなので、夜中におなかがすく予感しかしない。

入院2日目(32週4日)

 夜の眠りは浅い。消灯時間前の夜9時、午前0時、午前3時と看護師が定期的に巡回に来られる。点滴の装置に点いている緑の点滅灯が気になり、熟睡できない。そして点滴の影響なのか、動悸が激しく心臓音が聞こえてくるような気がする。動悸の音がベッドに伝わり、ずっと揺れているような感覚がある。熱も上がってきて、37.0℃超えに。看護師によると「ずっと小走りしているようなものだから」とのこと。

 前夜、モニターを取っているときに暇なため、電子書籍で奥泉光の「東京自叙伝」を読み始めた。東京の「地霊」のようなものが年月を越えてさまざまな人の人生を生き、そこで関東大震災をはじめ必ず天災に遭遇するという物語。偶然というか何というか、これはもう私の中が地震という感じになっている。

 朝、巡回に来た看護師に「誰かに似てる。あれ、あの人。誰だっけ」と声をかけられる。ならばたぶん…と思って「冨永愛?」と返したら「そう、そうだ。かっこいい人」と当たりだったらしい。もう一人の若手看護師は「お母さんにあきれられるくらい芸能人のこと知らないんですよ」とのことでピンときてなかった。冨永愛、10年ぶりくらいに言われたな。

 本当は今晩、産休入り壮行会を兼ねて、高級中華のディナー(干しなまこ付き)を夫が予約してくれていた。行けなくなったので、友人を誘っていくらしい。悲しい。こっちの夕食は筑前煮とかおひたしとか。一応米粉クレープはあるが。病院のコンビニで、友人が食べてておいしそうだった榮太楼の黒蜜しみしみどら焼きを買ってきてもらった。どら焼きっていうか、スプーンで食べる和スイーツって感じ。おいしい。おいしいったら。(自分を慰めながら)

 #切迫早産 #高齢出産 #体験記 #入院 #低体重児

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