東大の二次試験問題は、教養を鍛える問題の宝庫である。

私は変人(狂人かもしれない)なので、いまだに大学入試問題をたまに研究することがある。東大、京大、一橋大、慶應など色々だが、やはり、東大は問題の難易度も、教養の観点から考えた場合の問いの意義も、日本一だと思う。

2024年、東大二次試験の英語においては、広告におけるプロパガンダのトピックがあった。広告は、群衆心理の操作が目的であったという。恐ろしい話だが、群衆心理の操作といえば、ナチスのヒトラーを思い浮かべる。現代でも、陰謀論やフェイクニュースにおどらされる人が多いことを考えると、極めて意義深いトピックであると思う。他にも、スエズ運河の座礁事故という時事的な問題や、パプアニューギニアの言語多様性やトク・ピシンの問題が出た。地理や社会学など、幅広い教養がないと英文読解やリスニングはやや難しいだろう。

2023年の二次試験英語においては、「時間不足」がテーマとして取り上げられた。現代人は、仕事やSNSのやり過ぎで、むしろ仕事やSNSに認知が支配されているのではないか、と思えるほどだ。例えば、LINEの既読を無視したり、ビーリアルを数回スルーすると友達が何をしているのかわからなくなってはぶられる、などだ。大宅壮一はテレビが愚民製造機になると主張したが、今はその主役はインターネットやSNSだろう。

他、英語以外で面白いのは、2024年の地理、乳糖耐性の形成についてだ。地理というよりは、人類史のトピックに近く、難易度は高めであったと思われる。民族によっても乳糖の耐性には差異があり、新しい発見であった。

2020年の日本史においては、京都の祇園祭で有名な山鉾巡行が、室町時代、町の共同体の形成に影響があったとのテーマで出題されている。東大の日本史は、オーソドックスな問題はあまり出題されず、このようなマニアックな問題が出題されるため、対策は非常に難しい。教科書レベルを超えた教養が必要だろう。一橋大の世界史にも同じことがいえるが、一橋大の場合は中世ヨーロッパ(特に神聖ローマ帝国)に偏りすぎており、教授の趣味と考えられる。東大のほうが、偏りなく、面白いトピックを毎年出題するなという印象だ。

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